旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@コミカライズ発売中

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第78話 前祝い

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 19時―

 テーブルの上には所狭しと料理が並べられていた。メインディッシュは七面鳥の丸焼き。トマトが乗ったブルスケッタ、エビとアボガドのサラダにローストビーフ。そしデザートにはプディングを用意した。そして皆の前にはグラスに注がれたワインが置かれている。

「みんな、グラスは行き渡っているかしら?」

テーブルについている全員を見渡す。

「ありまーす」

代表してウィンターが返事をする。

「では、グラスを持って頂戴」

私の言葉に全員がグラスを持つ。

「それではかんぱーい」

「「「「「かんぱーい!!」」」」」


****


「凄い…豪華な料理ですね。一体、何のお祝いなんですか?」

俊也…もとい、ルイスが感心した様子で言う。

「フフフ…新しいシェアハウスの住人が決まったので、その前祝いなんですよ」

アネットが嬉しそうに言う。

「ゲルダ様の好みのタイプの男性なんですよね?」

ブランカがワインを飲みながら答えた。

「しかも相手は40過ぎのロマンスグレーの男性らしいですぜ?」

「えっ?!」

ウィンターの言葉に目を見開いて私を見る俊也。その目はこう語っている。

『母さん、嘘だよね?!まさか結婚するつもりっ?!』

と。

そこで私もアイコンタクトで語る。

『大丈夫、安心して頂戴。ちょっと、かっこいいかな~って思っただけだから』

『本当だろうね?』

『ええ、本当よ』

嘘みたいな本当の話し。私と俊也は以心伝心の仲だったのだ。


その後も皆で飲んだり、食べたり、喋ったり…前祝いは大いに盛り上がり、幕を閉じた―。



****


 前祝いから2日後―。

今日はジョシュアさんがここ、シェアハウスに入居して来る日で、私達は朝から大忙しだった。


「ゲルダ様、ベッドを運んできました」

ジャンとジェフが2人がかりでベッドを運んできた。

「ああ、ご苦労さま。それじゃ窓際の方に置いてくれる?」

窓拭きをしながら返事をする。

「はい」
「分かりました」

「ゲルダさん、シャワールームの掃除、終わりましたよ」

アネットがシャワールームから出て来た。

「ご苦労さま。これでジョシュアさんが気持ちよくシャワーを浴びることが出来るわね」

ジョシュアさんの部屋は日当たりの良い2階中央の部屋に決めてある。窓から外を眺めると、そこにはウィンターが畑仕事をしている。ここ数日、私の指導の賜物か、大分真面目に働くようになってきていた。

その時―。


「ゲルダ様。お客様達がいらっしゃいました。リビングにお通ししてあります」

ブランカが部屋にやってきた。

「タクシー会社に勤務している人達ね?」

「ええ。その通りです」

「ありがとう、すぐに行くわ!」

私はエプロンを外すと、全員に声を掛けた。

「皆、私はこれから面談があるから席を外すけど、後の事は宜しくね」

「はい。行ってらっしゃい」

アネットが返事をする。

「「行ってらっしゃいませ」」

ジャンとジェフが同時に声を掛ける。さすがは双子、息ぴったりである。

そして私は次の計画を進行させるべく、リビングルームへと急いだ―。
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