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第76話 恋バナ?
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新しいシェアハウスの住人も決まり、私は意気揚々とモンド伯爵邸へ戻ってきた。すると庭の畑でブランカの監視の下、ウィンターが鍬を振るっている姿が目に入った。
「あ、お帰りなさいませ。ゲルダ様」
ブランカが声を掛けてきた。
「ゲルダ様!お帰りを待っていましたよ!まさか俺1人で畑仕事をさせるつもりじゃないでしょうね?」
ウィンターが情けない声をあげる。
「ただいま、2人とも。ええ、畑仕事と厨房はウィンター。貴方の仕事よ」
「何故ですかっ?!厨房だけで精一杯ですよ!」
「お黙りなさい!」
叱責したのは私ではなく、ブランカだ。その迫力に私もウィンターも言葉を無くす。
「いいですか?貴方の役目は厨房の仕事だったはず。なのについさっきまで惰眠を貪り、朝食の準備をシェアハウスの住人のルイスさんとゲルダ様にやらせるなんて言語道断。ルイスさんは外でお仕事をされているし、ゲルダ様は色々忙しい方なのですよ?大体これぐらいの事で音を上げるということは…今迄のウィンターは楽な仕事ばかりしてきた証拠ですっ!」
まるで親の仇のような目でウィンターを睨みつける。
「は、はい…す、すみませんでした…」
震えがっているウィンターは小さい声で返事をすると、再び鍬を振るって畑仕事を始めた。その様子をじっと見ながらブランカが声をかけてきた。
「ところでゲルダ様。今までどちらへ行かれていたのですか?」
「ええ、聞いて頂戴。ここのシェアハウスに入居希望者が現れたかどうか、仲介してもらっている不動産会社を尋ねたのよ。そうしたら12名の入居希望者がいたのだけど、どれもこれも、ちゃんと家賃を払えるか不安だったのだけど、でも1人いたのよ。とってもいい人が」
するとその話にブランカが食いついてきた。
「え?もしかするとその人物は男性ですか?」
「ええ、男性よ。とても素敵な人だったわ。お店のオーナーだったし、仕事はバリバリ出来そうなタイプだったし…」
「ゲルダ様にそこまで言わせるとは…顔も相当良いのでしょうね?」
いつの間にやら恋バナの様になっていた。
「顔がいい男ならここにもいますぜ?」
鍬を振るいながらウィンターが口を挟んできたが、その部分は聞こえないふりをした。
「そうよ、とても顔もハンサムだったわ」
「それで?いくつぐらいの男性でしたか?」
ますます話に食いついてくるブランカ。
「よく聞いてくれたわ、ブランカ。そうね年齢は40代後半だと思うわ」
「「え…?」」
途端に顔が曇るブランカ。鍬を振るっていたウィンターの動きも止まる。
「本気で仰っているのですか…?」
ブランカが目を見開いて私を見る。
「ええ、そうよ?男の魅力が上がるのはやっぱり中年になってからじゃないかしら?」
「ゲルダ様、男は若いに越したことは無いじゃありませんか!俺の様に!」
ウィンターはここぞとばかりに鍬を振るってアピールする。
「フフフ…あなた達、若いわね…」
腕組みしながら実年齢21歳の私は言う。
「「は…?」」
「やっぱりそれなりの人生経験を積まなければ、真の魅力というのは生まれないのよ?あなた達はまだまだ若いから気付かないのね。それじゃ他の皆にも新しい住人が増えると言う事を伝えてくるからね。ウィンター、仕事サボったりしたら駄目よ?」
呆気に取られている2人をその場に残し、私はジャンとジェフの元へ向かった―。
「あ、お帰りなさいませ。ゲルダ様」
ブランカが声を掛けてきた。
「ゲルダ様!お帰りを待っていましたよ!まさか俺1人で畑仕事をさせるつもりじゃないでしょうね?」
ウィンターが情けない声をあげる。
「ただいま、2人とも。ええ、畑仕事と厨房はウィンター。貴方の仕事よ」
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「お黙りなさい!」
叱責したのは私ではなく、ブランカだ。その迫力に私もウィンターも言葉を無くす。
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まるで親の仇のような目でウィンターを睨みつける。
「は、はい…す、すみませんでした…」
震えがっているウィンターは小さい声で返事をすると、再び鍬を振るって畑仕事を始めた。その様子をじっと見ながらブランカが声をかけてきた。
「ところでゲルダ様。今までどちらへ行かれていたのですか?」
「ええ、聞いて頂戴。ここのシェアハウスに入居希望者が現れたかどうか、仲介してもらっている不動産会社を尋ねたのよ。そうしたら12名の入居希望者がいたのだけど、どれもこれも、ちゃんと家賃を払えるか不安だったのだけど、でも1人いたのよ。とってもいい人が」
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「え?もしかするとその人物は男性ですか?」
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いつの間にやら恋バナの様になっていた。
「顔がいい男ならここにもいますぜ?」
鍬を振るいながらウィンターが口を挟んできたが、その部分は聞こえないふりをした。
「そうよ、とても顔もハンサムだったわ」
「それで?いくつぐらいの男性でしたか?」
ますます話に食いついてくるブランカ。
「よく聞いてくれたわ、ブランカ。そうね年齢は40代後半だと思うわ」
「「え…?」」
途端に顔が曇るブランカ。鍬を振るっていたウィンターの動きも止まる。
「本気で仰っているのですか…?」
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「ええ、そうよ?男の魅力が上がるのはやっぱり中年になってからじゃないかしら?」
「ゲルダ様、男は若いに越したことは無いじゃありませんか!俺の様に!」
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