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第65話 ウェルナー侯爵
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午後4時10分―
私は嫌々ベロニカの話し相手になっていた。話の内容はもっぱらお気に入りのホセの話ばかりである。
「それでね、ホセって可愛らしいところがあるのよ。私のイメージにぴったりの香水を見つけたけれどもお金が足りなくて買うことが出来ませんでしたって言うので、私からお小遣いをあげて買ってきてもらうように頼んだのよ。けれど、もう買いに行った時には売り切れだったらしくて、私に申し訳ないからと言ってお詫びにワインを買ってきてくれたのよ。それで2人で一緒に飲んで…その日の夜はいつも以上に燃え上がったわ…」
うっとりした口調で言うベロニカ。
「はぁ…それは何よりでしたね」
ベロニカの向かい側の席に座らせられた私は適当に相槌を打つ。どうやらベロニカは完全にそのホセとやらに貢がされているようだ。高級娼婦として数え切れない位男を相手にしてきたはずなのに、自分が金づるにされていることには気付いていないのだろうか?それよりいつまでこんな話に付き合っていなければならないのだろう?早いところウェルナー侯爵が帰って来てくれればいいのに…。
その時―。
ガチャッ!!
突然何の前触れも無く扉が開かれた。
「ベロニカッ!我が愛しの妻よっ!」
大きな声とともに色白で肥え太ったバーコードハゲの中年男性が部屋の中に飛び込んできた。
え?!何?何っ?!
「まぁ!お帰りなさいませ、旦那様っ!」
ベロニカが笑みを浮かべて立ち上がった。え?旦那様って…ひょっとして…この人が侯爵っ?!
「おお、本当に可愛らしい妻だ」
ウェルナー侯爵は私が目の前にいるにも関わらず、ベロニカに駆け寄ると強く抱きしめ、熱烈なキスをする。
オゥェェ…。
何とも吐き気を催すような光景だ。しかし流石はベロニカ。元高級娼婦である。プロの意地なのか?必死で熱いキスに耐えている。見るに見かねた私はそ~っとその場を抜け出そうとした時…。
「おい?お前は誰だ?」
背後から突然声を掛けられた。驚いて振り向くといつの間に熱いキスを終えたのか、ウェルナー侯爵が私を見ている。
「あのね、彼女は私の新しい専属メイドなの。とっても気が利くのよ?」
ベロニカが鳥肌が立つような甘い声で侯爵に言う。
「メイド…?珍しいな。お前が専属メイドを決めるなんて…今迄どのメイドも気に入らずに、専属メイドを持たなかったのに」
侯爵はベロニカの肩を抱き寄せ、口元にだらしない笑みを浮かべながら語りかける。
「ええ、そうなのよ。今までのメイドは私には合わなかったけど、彼女は最高に気が利くのよ?」
「ふぅむ…成程…しかし、主が帰ってくる時間に未だ、ベロニカの部屋にいたというのは頂けないな?これから私とベロニカの2人だけの時間が始まるというのに」
ウェルナー侯爵はまるで早く出て行けと言わんばかりに私を見る。
え?!まさかまだ太陽が出ているこの時間に事をおっぱじめるつもりなのだろうか?
するとベロニカが笑いながら言う。
「嫌ですわ~旦那様、まずは美味しい食事とワインが先ではありませんか?それに今帰宅されたばかりでお疲れでしょう?」
「いや?私は少しも疲れていないが…ふむ。先に食事とワインを楽しむのも良いかもしれんな。というわけだから…おい、そこのメイド!」
突如、ウェルナー侯爵が私の方を振り向いた。
「はい、旦那様」
背筋を正して返事をする。
「すぐに料理人の元へ向かい、2人分の食事とワインを用意するように伝えてくるのだ。分かったな?」
「はい、すぐに伝えてまいります。」
良かった…ついに開放される。私は頭を下げると、一目散に厨房へと向かった―。
私は嫌々ベロニカの話し相手になっていた。話の内容はもっぱらお気に入りのホセの話ばかりである。
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うっとりした口調で言うベロニカ。
「はぁ…それは何よりでしたね」
ベロニカの向かい側の席に座らせられた私は適当に相槌を打つ。どうやらベロニカは完全にそのホセとやらに貢がされているようだ。高級娼婦として数え切れない位男を相手にしてきたはずなのに、自分が金づるにされていることには気付いていないのだろうか?それよりいつまでこんな話に付き合っていなければならないのだろう?早いところウェルナー侯爵が帰って来てくれればいいのに…。
その時―。
ガチャッ!!
突然何の前触れも無く扉が開かれた。
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え?!何?何っ?!
「まぁ!お帰りなさいませ、旦那様っ!」
ベロニカが笑みを浮かべて立ち上がった。え?旦那様って…ひょっとして…この人が侯爵っ?!
「おお、本当に可愛らしい妻だ」
ウェルナー侯爵は私が目の前にいるにも関わらず、ベロニカに駆け寄ると強く抱きしめ、熱烈なキスをする。
オゥェェ…。
何とも吐き気を催すような光景だ。しかし流石はベロニカ。元高級娼婦である。プロの意地なのか?必死で熱いキスに耐えている。見るに見かねた私はそ~っとその場を抜け出そうとした時…。
「おい?お前は誰だ?」
背後から突然声を掛けられた。驚いて振り向くといつの間に熱いキスを終えたのか、ウェルナー侯爵が私を見ている。
「あのね、彼女は私の新しい専属メイドなの。とっても気が利くのよ?」
ベロニカが鳥肌が立つような甘い声で侯爵に言う。
「メイド…?珍しいな。お前が専属メイドを決めるなんて…今迄どのメイドも気に入らずに、専属メイドを持たなかったのに」
侯爵はベロニカの肩を抱き寄せ、口元にだらしない笑みを浮かべながら語りかける。
「ええ、そうなのよ。今までのメイドは私には合わなかったけど、彼女は最高に気が利くのよ?」
「ふぅむ…成程…しかし、主が帰ってくる時間に未だ、ベロニカの部屋にいたというのは頂けないな?これから私とベロニカの2人だけの時間が始まるというのに」
ウェルナー侯爵はまるで早く出て行けと言わんばかりに私を見る。
え?!まさかまだ太陽が出ているこの時間に事をおっぱじめるつもりなのだろうか?
するとベロニカが笑いながら言う。
「嫌ですわ~旦那様、まずは美味しい食事とワインが先ではありませんか?それに今帰宅されたばかりでお疲れでしょう?」
「いや?私は少しも疲れていないが…ふむ。先に食事とワインを楽しむのも良いかもしれんな。というわけだから…おい、そこのメイド!」
突如、ウェルナー侯爵が私の方を振り向いた。
「はい、旦那様」
背筋を正して返事をする。
「すぐに料理人の元へ向かい、2人分の食事とワインを用意するように伝えてくるのだ。分かったな?」
「はい、すぐに伝えてまいります。」
良かった…ついに開放される。私は頭を下げると、一目散に厨房へと向かった―。
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