旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売

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第62話 いけない計画

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 ガラガラガラガラ…

 今、私とウィンターは向かい合わせで馬車に座り、ベロニカの元へ向かっていた。

「それで、ベロニカ様のお屋敷に着いたら何をするつもりなんです?」

ウィンターが尋ねて来た。

「決まっているじゃない。仕込みと張り込みよ」

「仕込みと張り込み…?」

ウィンターは首を傾げる。そこで私は今回の計画をウィンターに説明する事にした。

「いい?良く聞いて頂戴。まず、ベロニカの正体だけど…元々は高級娼婦だったらしいわ」

「な…何ですってっ?!イッテ!」

背の高いウィンターはショックのあまり、馬車の上で立ち上がり…頭を天井にガツンとぶつけてしまった。

「ちょっと、大丈夫?でもその驚きようからするとウィンターはその事実を知らなかったようね?」

「何言ってるんですか。当り前ですよ。ラファエル様だって知りませんよ。だってあの方の事の事を俺にはどこかの伯爵令嬢だって説明したのですよ?」

「伯爵令嬢っ!」

何て大嘘をつくのだろう。ベロニカのように品の無い女が伯爵令嬢なら、世の女性全て貴族令嬢になってしまうだろう。

「とーんでも無いわ。あの女はね、ほんとに口が悪くて男に目が無くて最低な女よ?知ってた?ベロニカにはね、まだ17歳の若い愛人がいるのよ?」

「え…ええええっ?!お、俺より8歳も若い愛人がいるんですかっ?!」

なるほど、ウィンターの年齢はまだ25歳だったのか。老け顔に見えたから30過ぎだと思っていたのに…。

「そうよ、下手したら淫行罪で逮捕よ、逮捕」

「え?何ですか?それ?」

ウィンターが尋ねて来たけれども、説明する気にもなれなかったのでそこは聞かなかったことにして私は言った。

「とにかく、今ベロニカはその美少年に夢中になっているってわけよ。ラファエルとは繋ぎか…それともそろそろ飽きて捨てるつもりかしれないわね?」

ベロニカの愛人が実際美少年かどうかは知らないが、恐らくあの面食い女が夢中になるのだから美しい顔立ちをしているのだろう。

「それで?ゲルダ様はどうするつもりなんですか?」

私は身を乗り出すと言った。

「ええ、聞いて頂戴。実はね。今夜からウェルナー侯爵が屋敷に戻って来るのよ。恐らく今夜2人はお楽しみってところかもしれないけれど…その最中に2人の愛人を部屋の中に入れようと思っているのよ」

「な、何ですってっ!何てえげつない…い、いや、ゴホン!素晴らしい考えなんでしょうね?」

ウィンターは私がジロリと睨み付けた事に恐れをなしたのか、咳払いした。

「だけど、どうやってその美少年とラファエル様を部屋に入れるんですか?」

「ええ。実はベロニカに聞いたんだけど毎日自分の部屋のあるバルコニーにスカーフを括り付けて愛人に連絡をいれているんですって。赤いスカーフの時は都合が悪く、黄色いスカーフの時は22時に部屋に来ても大丈夫って。だから常にバルコニーの窓の鍵は開けておくそうよ?その話をラファエルにも伝えたの」

「そ、それではまさか…」

ウィンターがゴクリと息を飲む。

「ええ。そのまさかよ。ウィンター。今夜バルコニーに黄色いスカーフを括り付け、ベロニカと夫の事の真っ最中に2人の愛人を部屋に誘導するのよ。そして揉めている所を‥2人で突入よっ!」

「えええええっ?!お、俺もですかっ?!」

ウィンターが悲鳴混じりの声を上げたのは言うまでも無かった―。
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