旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売

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第45話 新事業の閃き

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 時計が22時半を示したころ―

「あれ?ゲルダ様。まだ起きてらしたのですか?」

ノイマン家のウィンターに会いに行っていたジェフがフラリと厨房に現れた。

「お帰りなさい、遅くまでご苦労様。ウィンターには会えたかしら?」

ジェフはさっきまで俊也が座っていた椅子に座ると言った。

「ええ、まぁ…会えた事は会えましたが…」

「それで?ウィンターは何か言っていた?ラファエルの愛人はどうなっているのかしら?」

「ええ、それなんですけどね。今夜はまだ来ていないそうです。でもまだラファエルと愛人は別れてはいないそうです。そこは確認したとウィンターが言っていました」

「え?そうなの?まだ時間的に早いのかしらね…」
そう、ここであっさり別れられては困る。ベロニカが夫の留守中にラファエルと浮気をしている証拠を押さえることが出来ないからだ。

「大体何時頃来ているのかしら…?でもまだ別れていないなら何よりだわ」

「さぁ。何時頃にラファエルの元に来ているかはウィンターに確認するべきでしたかね?」

「う~ん。そうねぇ…でもジェフ。貴方大分疲れているみたいだから、今夜はもう休んで頂戴。明日私がノイマン家に行ってくるから」

「ええっ?!ほ、本気で言ってるのですか?!ばれたらどうするんですかっ?!」

「大丈夫だってば。変装していくから。ジェフは何も気にしないで頂戴。ほらほら、疲れてるんでしょう?お休みなさい」

「は、はい…では失礼して休ませて頂きます」

ジェフは頭を下げると厨房を出て行った。

「さて。後一仕事したら私も休みましょう」

私は残りの厨房の仕事に取り掛かった―。



****


 翌朝―

5時半に起きた私は厨房に立って料理を作っていた。大鍋に昨日のうちに切っておいた野菜を入れてグツグツ煮込んでいると俊也がフラリと厨房に現れた。

「おはよう、母さん」

「あら、おはよう俊也」

「どうしたの?こんなに早く起きて来て。まだ6時になっていないわよ?それともこんな早い時間から仕事に行くのかしら?そう言えばまだ何の仕事をしているのか聞いていなかったわね。俊也は今どんな仕事をしているのかしら?」

大きなお玉で鍋をかき混ぜながら話を続ける。

「俺は今郵便局で働いているよ。郵便配達員なのさ」

「あら、そうなのね。自転車に乗って配達しているの?」

「郵便馬車に乗って配達してるよ。8時半から17時半までが勤務時間さ。でも雨の日の配達は辛いね。御者台の屋根だけじゃ雨風が強い日はびしょ濡れになってしまうよ」

「そうよね…あ、この世界にだって車があるんだから、車を使えばいいのよ」

「確かにそうかも知れないけど…まだまだ車は普及していないからね。中々難しいんじゃないかな?それに俺だってまだこの世界では免許を持っていないしね」

「そうなのね…。うん?車…そうだわっ!」

たった今素晴らしいアイデアが閃いた。

「どうしたんだい?母さん」

「たった今、私にいい考えが浮かんだわ」

「いい考え…?」

俊也が首を傾げる。

「ええ。まさに一石二鳥のアイデアよ。朝食を終えたら早速町へ出掛けるわ」

フフフ…今日は忙しい1日になりそうだ―。
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