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第11話 愚かな使用人達
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「奥様、お出掛けですか?」
自室を出て廊下を歩いているとフットマンのジェフに遭遇した。
「ええ。ちょっと町までね」
「お一人で出かけられるのですか?」
心配そうにジェフが言う。そう言えば前世を思い出すまでの私は必ずこの屋敷の使用人の誰かに無理を言ってついてきてもらっていたっけ。一応大金持ちの箱入り娘だったから…。
しかし!
今の私はもう違う。誰かの付き添い等、もう結構。いや、それどころかこれから如何わしい?店にも行くつもりだったから却って1人で行かなければならないのだ。
「勿論、一人で出掛けるのよ。今日から私は生まれ変わったのだから人の手を借りずに何でも色々出来るようになろうって決めたからね」
「ブランカも言っていましたが、本当に奥様は人が変わったようになりましたね。何だかとても頼もしく感じます」
ジェフがニコニコしながら言う。
「ええ。そうでしょう?何しろこの東塔は使用人の数が少ないから私の為に人手を割いて迷惑はかけられないじゃない?それじゃ行ってくるわね」
そしてジェフに手を振ると正面玄関を目指して再び歩き始めた―。
****
「う~ん…やっぱり外の空気は美味しいわね~」
巨大な玄関?を出て外に出ると私は大きく伸びをした。見上げる空は真っ青でこの世界は東京のように高いビルも建ち並んでいないから空がとても広く見える。
屋敷の正門を目指して広いアプローチをブラブラ歩いていると、何度か南塔で見かけたことがある使用人たちにすれ違った。彼等は私に挨拶するどころか、わざとらしくコソコソ話をしながらこちらを見ているけど…今に彼等は気づくだろう。私が自分たちにとってどのような存在であるかという事に…。その事実を知った後の彼等の反応を想像するだけで顔がニヤけそうになってくる。
すると―。
「おい、見たか?あの顔…」
「ああ、やはりあの噂は本当だったんだな」
「ラファエル様がゲルダ様の頭がおかしくなったって言ってたわ」
「あまりにも相手にされずに嫉妬に狂って頭がイカれちまったんじゃないか?」
「絶対にそうに決まってるわ…」
彼等がわざとらしく私に聞こえよがしに話しているのは一目瞭然だった。あの5人は確かアネット専属の使用人達だった気がする。彼女と仲よさげに話をしている姿を何度か見かけたことがあるからだ。
「御機嫌よう!皆!」
笑みを浮かべて手を振るも、あろう事か彼等は全員私を無視し背中を向けるとこちらをあざ笑うように歩き去って行った。
「…何なの?あいつらは…。もはや情状酌量の余地は無いわね…」
あの5人は後で必ず呼び出そう。雇用主は従業員を選ぶ権利があるのだから。一体誰が主なのか教育的指導をしてやらなければ。
こうして新たな決意を胸に、門を通り抜けて町へと繰り出した―。
****
「さぁ?この宝石…いくらで買い取ってくれるかしら?」
今、私はこの町一番の宝飾店に来ていた。この店は貴族のみならず、お金持ちのマダムたちが良く利用する有名な店である。
「ほう…これは中々見事な宝石ですね?」
カウンターに並べられたアクセサリーを1つ1つ丁寧に見る口髭を蓄えた紳士が言った。
「では全部セットで300万シリルでお買い上げさせて頂きましょう」
「は?」
その言葉に耳を疑った。冗談じゃない。この宝石…指輪1つでも100万シリルはくだらないのに、10点も持ち込んでたったの300万シリル…。
私は目の前の店主をチラリと見た。この店主、最早私の顔を見る事も無くカウンターに並べられたアクセサリーに釘付けになっている。恐らく男の頭の中は、すでにこのアクセサリーが売れた場合の利益の事で頭が一杯になっているのだろう。
「…やめるわ」
「え?」
店主はびっくりした顔で私を見た。
「お、お客様…今、何と…?」
「この店で売るのはやめるって言ったのよ。そんなはした金で売れるはずないでしょう?どうせ売るときはその10倍の値段で店に出すくせに」
「そ、そんな事はございませんよ?!」
図星なのだろう。目がキョロキョロ泳いでいる。
「宝飾店は数多くあるのに、この店だけが売り上げが伸びてお店を拡大できたのも、安く買い取り、高値で売りつけている証拠じゃないの?」
「お客様っ?!な、何を言うのですかっ!」
…駄目だ。このアクセサリーを売ったお金は私の今後の大事な資金源になるのだからいい加減な値段で買い取らせるわけにはいかない。
「…お宅との取引は無しにさせて頂きます」
カウンターに置かれたアクセサリーを持ち帰ろうとした時…。
「わ、分りました!500万シリルで買い取ります」
「駄目、まだ安いわ。1500万シリルで」
「そんな!店が潰れてしまいます!」
「私だって生活がかかってるのよ!」
「な、なら…700万シリルで!」
「話しにならないわね」
首を振ってきんちゃく袋にしまおうとしたとき…。
「で、では丁度1000万シリルではどうですか?!これ以上はもう無理です!」
半泣きで言う店主。よし、かかったわね!
「いいわ?なら1000万シリルで取引しましょう?」
「あ、ありがとうございます…」
「いいえ、こちらこそ。」
そして店主から1000万シリルの現金を受け取る私は意気揚々と店を出た。
こうして私の初めての交渉は成功した。
よし、この調子で残りのアクセサリーも全て売り払ってしまおう。
良い取引が出来て心の中で私はほくそ笑んだ―。
自室を出て廊下を歩いているとフットマンのジェフに遭遇した。
「ええ。ちょっと町までね」
「お一人で出かけられるのですか?」
心配そうにジェフが言う。そう言えば前世を思い出すまでの私は必ずこの屋敷の使用人の誰かに無理を言ってついてきてもらっていたっけ。一応大金持ちの箱入り娘だったから…。
しかし!
今の私はもう違う。誰かの付き添い等、もう結構。いや、それどころかこれから如何わしい?店にも行くつもりだったから却って1人で行かなければならないのだ。
「勿論、一人で出掛けるのよ。今日から私は生まれ変わったのだから人の手を借りずに何でも色々出来るようになろうって決めたからね」
「ブランカも言っていましたが、本当に奥様は人が変わったようになりましたね。何だかとても頼もしく感じます」
ジェフがニコニコしながら言う。
「ええ。そうでしょう?何しろこの東塔は使用人の数が少ないから私の為に人手を割いて迷惑はかけられないじゃない?それじゃ行ってくるわね」
そしてジェフに手を振ると正面玄関を目指して再び歩き始めた―。
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「う~ん…やっぱり外の空気は美味しいわね~」
巨大な玄関?を出て外に出ると私は大きく伸びをした。見上げる空は真っ青でこの世界は東京のように高いビルも建ち並んでいないから空がとても広く見える。
屋敷の正門を目指して広いアプローチをブラブラ歩いていると、何度か南塔で見かけたことがある使用人たちにすれ違った。彼等は私に挨拶するどころか、わざとらしくコソコソ話をしながらこちらを見ているけど…今に彼等は気づくだろう。私が自分たちにとってどのような存在であるかという事に…。その事実を知った後の彼等の反応を想像するだけで顔がニヤけそうになってくる。
すると―。
「おい、見たか?あの顔…」
「ああ、やはりあの噂は本当だったんだな」
「ラファエル様がゲルダ様の頭がおかしくなったって言ってたわ」
「あまりにも相手にされずに嫉妬に狂って頭がイカれちまったんじゃないか?」
「絶対にそうに決まってるわ…」
彼等がわざとらしく私に聞こえよがしに話しているのは一目瞭然だった。あの5人は確かアネット専属の使用人達だった気がする。彼女と仲よさげに話をしている姿を何度か見かけたことがあるからだ。
「御機嫌よう!皆!」
笑みを浮かべて手を振るも、あろう事か彼等は全員私を無視し背中を向けるとこちらをあざ笑うように歩き去って行った。
「…何なの?あいつらは…。もはや情状酌量の余地は無いわね…」
あの5人は後で必ず呼び出そう。雇用主は従業員を選ぶ権利があるのだから。一体誰が主なのか教育的指導をしてやらなければ。
こうして新たな決意を胸に、門を通り抜けて町へと繰り出した―。
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「さぁ?この宝石…いくらで買い取ってくれるかしら?」
今、私はこの町一番の宝飾店に来ていた。この店は貴族のみならず、お金持ちのマダムたちが良く利用する有名な店である。
「ほう…これは中々見事な宝石ですね?」
カウンターに並べられたアクセサリーを1つ1つ丁寧に見る口髭を蓄えた紳士が言った。
「では全部セットで300万シリルでお買い上げさせて頂きましょう」
「は?」
その言葉に耳を疑った。冗談じゃない。この宝石…指輪1つでも100万シリルはくだらないのに、10点も持ち込んでたったの300万シリル…。
私は目の前の店主をチラリと見た。この店主、最早私の顔を見る事も無くカウンターに並べられたアクセサリーに釘付けになっている。恐らく男の頭の中は、すでにこのアクセサリーが売れた場合の利益の事で頭が一杯になっているのだろう。
「…やめるわ」
「え?」
店主はびっくりした顔で私を見た。
「お、お客様…今、何と…?」
「この店で売るのはやめるって言ったのよ。そんなはした金で売れるはずないでしょう?どうせ売るときはその10倍の値段で店に出すくせに」
「そ、そんな事はございませんよ?!」
図星なのだろう。目がキョロキョロ泳いでいる。
「宝飾店は数多くあるのに、この店だけが売り上げが伸びてお店を拡大できたのも、安く買い取り、高値で売りつけている証拠じゃないの?」
「お客様っ?!な、何を言うのですかっ!」
…駄目だ。このアクセサリーを売ったお金は私の今後の大事な資金源になるのだからいい加減な値段で買い取らせるわけにはいかない。
「…お宅との取引は無しにさせて頂きます」
カウンターに置かれたアクセサリーを持ち帰ろうとした時…。
「わ、分りました!500万シリルで買い取ります」
「駄目、まだ安いわ。1500万シリルで」
「そんな!店が潰れてしまいます!」
「私だって生活がかかってるのよ!」
「な、なら…700万シリルで!」
「話しにならないわね」
首を振ってきんちゃく袋にしまおうとしたとき…。
「で、では丁度1000万シリルではどうですか?!これ以上はもう無理です!」
半泣きで言う店主。よし、かかったわね!
「いいわ?なら1000万シリルで取引しましょう?」
「あ、ありがとうございます…」
「いいえ、こちらこそ。」
そして店主から1000万シリルの現金を受け取る私は意気揚々と店を出た。
こうして私の初めての交渉は成功した。
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