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第9章 17 女神リオスの過去 ⑦
しおりを挟む「・・・。」
だけど、私はオスカーの言葉に返事をする事が出来なかった。
「それじゃ・・・本当にリオス・・お前は女神だったのか・・?」
「ご・・・ごめんなさい・・オスカー・・・。」
「そ、そんな・・・っ!」
オスカーの顔が青ざめる。するとそれを見たロキがあざ笑うように言った。
「ああ、そうだ。分ったか?人間風情が・・分かったらさっさとリオスを離せ。神は神同士で結ばれるのが世の摂理なのだ。」
「オスカー!」
お願い・・・!私を離さないで!ロキに・・引き渡さないで・・っ!
ギュッとオスカーにしがみつくと・・・オスカーは力強く私を抱きしめてくれた。
「おい?人間。お前・・・聞こえなかったのか?どういうつもりだ。早くリオスをこちらへよこせっ!」
「断るっ!」
オスカーは力強く言うと、ますます私を強く抱きしめた。
「何が神だ・・・人の身体に乗り移り、大勢の人々を残虐に殺害してきたお前に・・神を名乗る資格は無いっ!それにリオスが例え神だろうと人だろうと関係ないっ!俺は・・俺の愛する女性は今この腕の中にいる女性だっ!」
「オスカー・・その話・・本当?」
「ああ・・そうだ。お前が神だろうと人だろうと・・そんな事は大した問題では無い。愛している、リオス。」
「オスカー・・。」
すると背後でロキの怒り狂った声が響き渡った。
「認めんっ!絶対に・・絶対に俺は認めんぞっ!」
そしてロキは血まみれなったタバサに手をかざした。するとあっという間にタバサの傷が塞がり・・彼女はゆっくり目を開けた。しかし、その眼は怪しく金色に光っている。
「さあ・・俺の命を分け与えてやった。お前は俺のしもべになった。あいつを・・・オスカーをお前の手で・・・殺せっ!」
「はい。ロキ様。」
タバサは剣を抜くとこちらに向かってゆっくりと近づいて来る。
「リオスッ!危ないから下がっているんだ!」
オスカーは私の身体を離すと、剣を降ろしてタバサと対峙した。
「タバサ・・やめろ。俺はお前とは戦いたくない。」
するとタバサは物も言わず、剣をオスカーに向かって振り下ろす。
「キャアッ!オスカーッ!」
私は思わず叫んでしまったが、オスカーはその剣をなんな無く避ける。
「・・・!」
その後もタバサは狂ったように剣をふるい続けるが、オスカーはいともたやすく避けながら必死でタバサに正気に戻るように説得を続ける。
そんな2人の様子に痺れを切らしたのか、ロキがついに刀を抜いてしまった。
「くそ・・!できそこないめ・・!」
そしてオスカー目がけて剣を投げつけた。
「危ないっ!オスカーッ!」
私は一瞬でオスカーの前に力を使って移動し・・・。
ドスッ!
熱い鉄の塊のようなものが身体を貫通した。
「ウ・・・。ゴホッ!」
あまりの苦しさにむせた時、口から大量の血を吐きだしてしまった。ま・・まさか・・この剣は・・・。
「リオスッ!」
オスカーの悲痛な叫び声が聞こえた。
「そ、そんな・・・リオスッ!」
ロキが顔面蒼白になってこちらを見つめていた。ロキ・・・貴方・・『神殺しの剣』を使った・・のね・・。
『神殺しの剣』
この剣は私達神が全員所有する剣。そしてその名の通り、この剣で刺されると神の力を奪われるだけでなく、本当に死んでしまう・・まさに禁忌の剣。重大な罪を犯した神を裁くための最終手段の剣・・・それを使ってしまうなんて・・・。
「リオス・・・リオス・・しっかりしてくれ・・死ぬな・・死なないでくれ・・!」
オスカーが私を抱きしめてボロボロと泣いている。そしてロキは恐ろしい咆哮を上げながら・・・徐々に神の神々しい姿から禍々しい悪魔への姿に変わっていく。輝いていた金色の身体は黒くなり、翼も金から真っ黒に染まっていく。
そう・・・『神殺しの剣』を使い、神を殺せば・・・その姿は闇に堕ち、悪魔になってしまうのだ。
何て愚かな・・・私程度の神を殺して・・・悪魔に身を落としてしまうなんて・・・。
「オ・・オスカー・・。」
目がかすんで殆ど見えなくなっている。私は必死でオスカーの姿を探した。
「安心しろ!俺は・・・俺はここにいる!」
右手を強く握りしめられた。ああ・・・良かった。私の傍にいてくれている・・。
「オ・・オスカー・・。ぜ、絶対・・・生まれ変わって来るから・・来世で・・また会いましょ・・う・・・。」
「駄目だっ!死ぬな・・・俺を置いて・・死なないでくれっ!!」
だけどもう私は何も答える事が出来ない。
可愛そうなタバサ・・・貴女も闇に堕ちてしまうのね・・・。でもどうか彼女に救いの手を・・。
ロキ・・・どうかこれ以上罪を重ねないで・・・。
そしてオスカー・・・。
いつか私の人を愛した罪が許される時がやって来たなら・・・再び貴方と巡り合って今度こそ2人で幸せに・・・。
そして、私の意識は消えた―。
だけど、私はオスカーの言葉に返事をする事が出来なかった。
「それじゃ・・・本当にリオス・・お前は女神だったのか・・?」
「ご・・・ごめんなさい・・オスカー・・・。」
「そ、そんな・・・っ!」
オスカーの顔が青ざめる。するとそれを見たロキがあざ笑うように言った。
「ああ、そうだ。分ったか?人間風情が・・分かったらさっさとリオスを離せ。神は神同士で結ばれるのが世の摂理なのだ。」
「オスカー!」
お願い・・・!私を離さないで!ロキに・・引き渡さないで・・っ!
ギュッとオスカーにしがみつくと・・・オスカーは力強く私を抱きしめてくれた。
「おい?人間。お前・・・聞こえなかったのか?どういうつもりだ。早くリオスをこちらへよこせっ!」
「断るっ!」
オスカーは力強く言うと、ますます私を強く抱きしめた。
「何が神だ・・・人の身体に乗り移り、大勢の人々を残虐に殺害してきたお前に・・神を名乗る資格は無いっ!それにリオスが例え神だろうと人だろうと関係ないっ!俺は・・俺の愛する女性は今この腕の中にいる女性だっ!」
「オスカー・・その話・・本当?」
「ああ・・そうだ。お前が神だろうと人だろうと・・そんな事は大した問題では無い。愛している、リオス。」
「オスカー・・。」
すると背後でロキの怒り狂った声が響き渡った。
「認めんっ!絶対に・・絶対に俺は認めんぞっ!」
そしてロキは血まみれなったタバサに手をかざした。するとあっという間にタバサの傷が塞がり・・彼女はゆっくり目を開けた。しかし、その眼は怪しく金色に光っている。
「さあ・・俺の命を分け与えてやった。お前は俺のしもべになった。あいつを・・・オスカーをお前の手で・・・殺せっ!」
「はい。ロキ様。」
タバサは剣を抜くとこちらに向かってゆっくりと近づいて来る。
「リオスッ!危ないから下がっているんだ!」
オスカーは私の身体を離すと、剣を降ろしてタバサと対峙した。
「タバサ・・やめろ。俺はお前とは戦いたくない。」
するとタバサは物も言わず、剣をオスカーに向かって振り下ろす。
「キャアッ!オスカーッ!」
私は思わず叫んでしまったが、オスカーはその剣をなんな無く避ける。
「・・・!」
その後もタバサは狂ったように剣をふるい続けるが、オスカーはいともたやすく避けながら必死でタバサに正気に戻るように説得を続ける。
そんな2人の様子に痺れを切らしたのか、ロキがついに刀を抜いてしまった。
「くそ・・!できそこないめ・・!」
そしてオスカー目がけて剣を投げつけた。
「危ないっ!オスカーッ!」
私は一瞬でオスカーの前に力を使って移動し・・・。
ドスッ!
熱い鉄の塊のようなものが身体を貫通した。
「ウ・・・。ゴホッ!」
あまりの苦しさにむせた時、口から大量の血を吐きだしてしまった。ま・・まさか・・この剣は・・・。
「リオスッ!」
オスカーの悲痛な叫び声が聞こえた。
「そ、そんな・・・リオスッ!」
ロキが顔面蒼白になってこちらを見つめていた。ロキ・・・貴方・・『神殺しの剣』を使った・・のね・・。
『神殺しの剣』
この剣は私達神が全員所有する剣。そしてその名の通り、この剣で刺されると神の力を奪われるだけでなく、本当に死んでしまう・・まさに禁忌の剣。重大な罪を犯した神を裁くための最終手段の剣・・・それを使ってしまうなんて・・・。
「リオス・・・リオス・・しっかりしてくれ・・死ぬな・・死なないでくれ・・!」
オスカーが私を抱きしめてボロボロと泣いている。そしてロキは恐ろしい咆哮を上げながら・・・徐々に神の神々しい姿から禍々しい悪魔への姿に変わっていく。輝いていた金色の身体は黒くなり、翼も金から真っ黒に染まっていく。
そう・・・『神殺しの剣』を使い、神を殺せば・・・その姿は闇に堕ち、悪魔になってしまうのだ。
何て愚かな・・・私程度の神を殺して・・・悪魔に身を落としてしまうなんて・・・。
「オ・・オスカー・・。」
目がかすんで殆ど見えなくなっている。私は必死でオスカーの姿を探した。
「安心しろ!俺は・・・俺はここにいる!」
右手を強く握りしめられた。ああ・・・良かった。私の傍にいてくれている・・。
「オ・・オスカー・・。ぜ、絶対・・・生まれ変わって来るから・・来世で・・また会いましょ・・う・・・。」
「駄目だっ!死ぬな・・・俺を置いて・・死なないでくれっ!!」
だけどもう私は何も答える事が出来ない。
可愛そうなタバサ・・・貴女も闇に堕ちてしまうのね・・・。でもどうか彼女に救いの手を・・。
ロキ・・・どうかこれ以上罪を重ねないで・・・。
そしてオスカー・・・。
いつか私の人を愛した罪が許される時がやって来たなら・・・再び貴方と巡り合って今度こそ2人で幸せに・・・。
そして、私の意識は消えた―。
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