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第9章 15 女神リオスの過去 ⑤
しおりを挟む「女神様・・・本当に有難うございました。」
人々を代表して兵士のポールが礼を述べてきた。
「い、いえ・・・私は女神などでは・・・。」
慌てて手を振るも、ポールはすぐに否定した。
「何を仰いますか。人々の怪我を一瞬で治癒するなど・・一流の神官ですら出来ません。しかもこれほど多くの人々を・・・貴女は紛れも無い我らの女神様です。その証拠に・・貴女の背中には金の翼が生えております。」
「え?!」
慌てて自分の背中を振り返り・・そこに2枚の巨大な翼が生えていたことに気が付いた。しまった・・・!力を使う際に女神の本来の姿が露見してしまったのだ。
「やはり・・神は我らを見捨ててはいなかったのですな・・・。」
怪我が重かった老人は私を拝みながらボロボロと涙を流した。私は慌てて女神の姿を隠し、人間の姿へと形を変えると言った。
「皆さん・・お願いがあります。どうか・・私の事は伏せて置いてください。神は本来は人々の様子を天界で監視するだけ。このように直接人間界に係わってはいけない掟があるのです。なので私は天の掟を破ってしまいました。これ以上私の話が世間に広まるわけにはいかないのです。どうぞお願いします。」
「分りました。決して私達は女神リオス様の事を口外致しません。ですが・・どうかこれからも我らの守り神として導いて下さい。」
そこにいる全員が私に頭を下げてきた。しかし・・・。
「ええ・・・・そうなってあげたいのはやまやまですが・・でも私はどうしてもある人の元へ行かなければならないのです。」
そして俯くと、1人の女性が前に進み出て来ると言った。
「リオス様・・もしやその方と言うのは・・男性ですか?リオス様の大切な・・。」
「は、はい・・そうです。」
顔を赤らめながらも私は答えた。
「彼は私が女神である事を知りません。だから・・お願いです。私の事はここだけの話にとどめておいて下さい。」
「はい、この事は・・・口外致しません。では・・どうぞお気をつけて行って下さいませ。」
ポールが頭を下げた。
「ええ・・・それでは・・皆さん。行ってきます。」
そして私は黄金の翼を広げて・・・エルトリア城へ飛んだ―。
城へ飛んだ時、まず一番初めに私の目に映ったのは、あちこちで火の手が上がった城だった。
「城が・・・燃えているっ!」
オスカーは・・オスカーは無事なのだろうか?!私はオスカーの気配を探り・・・。
「見つけた!あれは・・オスカーの気配だわっ!」
そして私はオスカーのいる場所を目指して走った。
「オスカーッ!」
目に下の壁と言い、天井といい・・あちこち崩れ落ちた城の内部で無数の兵士たちが血まみれで床に転がっている姿だった。
「・・・!」
それは目を背けたくなるような光景だった。彼らは敵味方入り混じった状態で折り重なるように倒れている。全員が息をしていないのは一目瞭然だった。
そんな・・オスカーもまさか既に・・・・。しかし、その時―。
キンッ!
キンッ!
激しい金属音が響き渡る音が聞こえてきた。そして微かに感じるオスカーの姿を感じ取った。
「間違いないわっ!あの場所にきっとオスカーがいるに違いないわっ!」
私は音の聞こえて来る方向に向かって走り続けた―。
人々を代表して兵士のポールが礼を述べてきた。
「い、いえ・・・私は女神などでは・・・。」
慌てて手を振るも、ポールはすぐに否定した。
「何を仰いますか。人々の怪我を一瞬で治癒するなど・・一流の神官ですら出来ません。しかもこれほど多くの人々を・・・貴女は紛れも無い我らの女神様です。その証拠に・・貴女の背中には金の翼が生えております。」
「え?!」
慌てて自分の背中を振り返り・・そこに2枚の巨大な翼が生えていたことに気が付いた。しまった・・・!力を使う際に女神の本来の姿が露見してしまったのだ。
「やはり・・神は我らを見捨ててはいなかったのですな・・・。」
怪我が重かった老人は私を拝みながらボロボロと涙を流した。私は慌てて女神の姿を隠し、人間の姿へと形を変えると言った。
「皆さん・・お願いがあります。どうか・・私の事は伏せて置いてください。神は本来は人々の様子を天界で監視するだけ。このように直接人間界に係わってはいけない掟があるのです。なので私は天の掟を破ってしまいました。これ以上私の話が世間に広まるわけにはいかないのです。どうぞお願いします。」
「分りました。決して私達は女神リオス様の事を口外致しません。ですが・・どうかこれからも我らの守り神として導いて下さい。」
そこにいる全員が私に頭を下げてきた。しかし・・・。
「ええ・・・・そうなってあげたいのはやまやまですが・・でも私はどうしてもある人の元へ行かなければならないのです。」
そして俯くと、1人の女性が前に進み出て来ると言った。
「リオス様・・もしやその方と言うのは・・男性ですか?リオス様の大切な・・。」
「は、はい・・そうです。」
顔を赤らめながらも私は答えた。
「彼は私が女神である事を知りません。だから・・お願いです。私の事はここだけの話にとどめておいて下さい。」
「はい、この事は・・・口外致しません。では・・どうぞお気をつけて行って下さいませ。」
ポールが頭を下げた。
「ええ・・・それでは・・皆さん。行ってきます。」
そして私は黄金の翼を広げて・・・エルトリア城へ飛んだ―。
城へ飛んだ時、まず一番初めに私の目に映ったのは、あちこちで火の手が上がった城だった。
「城が・・・燃えているっ!」
オスカーは・・オスカーは無事なのだろうか?!私はオスカーの気配を探り・・・。
「見つけた!あれは・・オスカーの気配だわっ!」
そして私はオスカーのいる場所を目指して走った。
「オスカーッ!」
目に下の壁と言い、天井といい・・あちこち崩れ落ちた城の内部で無数の兵士たちが血まみれで床に転がっている姿だった。
「・・・!」
それは目を背けたくなるような光景だった。彼らは敵味方入り混じった状態で折り重なるように倒れている。全員が息をしていないのは一目瞭然だった。
そんな・・オスカーもまさか既に・・・・。しかし、その時―。
キンッ!
キンッ!
激しい金属音が響き渡る音が聞こえてきた。そして微かに感じるオスカーの姿を感じ取った。
「間違いないわっ!あの場所にきっとオスカーがいるに違いないわっ!」
私は音の聞こえて来る方向に向かって走り続けた―。
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