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第9章 13 女神リオスの過去 ③
しおりを挟む 『リーベルタース』の町へ着いた時、私は目を見張った。そこはもう辺り一帯ゴウゴウと燃え盛る炎の海と化していたのだ。オスカーの話ではこの町はエルトリアの王家の支配下にあると言う。そして町に住む成人男性は半数以上が王家に忠誠を誓う兵士達が暮らす町・・。
「だからなんだわ・・。この町に火を放ったのは・・。エルトリア王家の力を弱めるために・・!」
それにしても・・この光景は余りにもひど過ぎる。恐らくウィンザード家とそれに追従する他国の周辺貴族達の兵士が同時に至る所で『リーベルタース』の町に火を放ったのだろう。その為に火災旋風が巻き起こり、あちこちで炎を伴う旋風が発生している。地面には崩れ落ちた石造りの家の瓦礫で埋め尽くされ、少しでも触れれば火傷をしそうである。ただの人間であれば・・きっとこの状況下では生きていられることはまず不可能だろう。。
「何て残酷な・・・!こんなに酷い状況になっていたなんて・・・!」
私の考えが甘かった。火災が発生していても・・ほんのわずかな火の手だろうと高を括っていた。それが・・こんな悲惨な状況だったなんて・・!
オスカーがいるのではないかと思ったが、この様子では恐らく『リーベルタース』にはいないだろう。恐らくはエルトリアの城を目指しているのだ。本当はオスカーの事が気がかりですぐにでも後を追いたいが、目の前の光景を前にして見過ごすこと等出来るはずは無かった
「とにかく・・この炎を何とか消さなければ!」
一瞬神王の言葉が頭に浮かぶ。
< 神は人間の争いに介入してはならぬ >
今、私はその禁忌を破ろうとしている。だけど・・私は女神。ひょっとすると瓦礫の下には炎に巻かれていない生き残りの人がいるかもしれない。ならば助けないと!
私は天に祈った―。
すると・・・。
ゴゴゴゴゴ・・・空から大きな音と共に、真っ黒い雲が立ちこみ始め、やがて黒雲は稲光を伴い始めるとともに天上でゴロゴロと雷の音を奏で始めた。
そして―。
ポツ
ポツ・・・
大粒の雨が空から降り始めてきた。私は雨が当たらないように周囲を探し、触れても熱くない瓦礫の下に身を隠した次の瞬間、
ザーッ!!
まるで滝のように激しい雨がザアザアと降り始めてきた。雨は降るごとにその勢いを増し、強い風と共に横殴りの雨が降りつけてくる。
そして徐々にあれほど酷かった炎は鎮火をはじめた。ジュウジュウと音を立てて炎が消えてゆき、黒い煙から灰色の煙へと変化していく。あれほど胸を焦がしそうな熱い空気はすっかり冷え、今では肌寒い程になっている。
そしてどれくらい激しい雨は降り続いただろうか・・やがて炎の勢いが弱まっていくと共に、徐々に雨脚は弱まって行き・・全ての火が消える頃には、空には青空が見え、美しい虹が浮かんでいた。
すっかり雨も上がった頃・・私は瓦礫の下から這い出て来ると地面を見下ろした。そこはまるで湖のような巨大な水たまりが出来ていた。その水たまりは空から照り付ける太陽でキラキラと美しく反射し、先程の炎に包まれた地獄絵図がまるで嘘のように思えた。
「これは・・・きっとテレサのお陰ね・・・。」
テレサ・・天界に住む私の親友・・水を司る、数少ない女神・・。
私は天を仰いでテレサに言った。
「ありがとう、テレサ・・・。」
そしてオスカーの元へ行こうと金色の羽を広げた時・・・。
「う・・・。」
「だ・・誰か・・。」
「助けてくれ・・。」
町のあちこちでうめき声が聞こえてきた。
「ま・・まさか・・生きている人たちがいるの?!」
私は急いで呻き声の聞こえる方向へ向かって駆けだした―。
「だからなんだわ・・。この町に火を放ったのは・・。エルトリア王家の力を弱めるために・・!」
それにしても・・この光景は余りにもひど過ぎる。恐らくウィンザード家とそれに追従する他国の周辺貴族達の兵士が同時に至る所で『リーベルタース』の町に火を放ったのだろう。その為に火災旋風が巻き起こり、あちこちで炎を伴う旋風が発生している。地面には崩れ落ちた石造りの家の瓦礫で埋め尽くされ、少しでも触れれば火傷をしそうである。ただの人間であれば・・きっとこの状況下では生きていられることはまず不可能だろう。。
「何て残酷な・・・!こんなに酷い状況になっていたなんて・・・!」
私の考えが甘かった。火災が発生していても・・ほんのわずかな火の手だろうと高を括っていた。それが・・こんな悲惨な状況だったなんて・・!
オスカーがいるのではないかと思ったが、この様子では恐らく『リーベルタース』にはいないだろう。恐らくはエルトリアの城を目指しているのだ。本当はオスカーの事が気がかりですぐにでも後を追いたいが、目の前の光景を前にして見過ごすこと等出来るはずは無かった
「とにかく・・この炎を何とか消さなければ!」
一瞬神王の言葉が頭に浮かぶ。
< 神は人間の争いに介入してはならぬ >
今、私はその禁忌を破ろうとしている。だけど・・私は女神。ひょっとすると瓦礫の下には炎に巻かれていない生き残りの人がいるかもしれない。ならば助けないと!
私は天に祈った―。
すると・・・。
ゴゴゴゴゴ・・・空から大きな音と共に、真っ黒い雲が立ちこみ始め、やがて黒雲は稲光を伴い始めるとともに天上でゴロゴロと雷の音を奏で始めた。
そして―。
ポツ
ポツ・・・
大粒の雨が空から降り始めてきた。私は雨が当たらないように周囲を探し、触れても熱くない瓦礫の下に身を隠した次の瞬間、
ザーッ!!
まるで滝のように激しい雨がザアザアと降り始めてきた。雨は降るごとにその勢いを増し、強い風と共に横殴りの雨が降りつけてくる。
そして徐々にあれほど酷かった炎は鎮火をはじめた。ジュウジュウと音を立てて炎が消えてゆき、黒い煙から灰色の煙へと変化していく。あれほど胸を焦がしそうな熱い空気はすっかり冷え、今では肌寒い程になっている。
そしてどれくらい激しい雨は降り続いただろうか・・やがて炎の勢いが弱まっていくと共に、徐々に雨脚は弱まって行き・・全ての火が消える頃には、空には青空が見え、美しい虹が浮かんでいた。
すっかり雨も上がった頃・・私は瓦礫の下から這い出て来ると地面を見下ろした。そこはまるで湖のような巨大な水たまりが出来ていた。その水たまりは空から照り付ける太陽でキラキラと美しく反射し、先程の炎に包まれた地獄絵図がまるで嘘のように思えた。
「これは・・・きっとテレサのお陰ね・・・。」
テレサ・・天界に住む私の親友・・水を司る、数少ない女神・・。
私は天を仰いでテレサに言った。
「ありがとう、テレサ・・・。」
そしてオスカーの元へ行こうと金色の羽を広げた時・・・。
「う・・・。」
「だ・・誰か・・。」
「助けてくれ・・。」
町のあちこちでうめき声が聞こえてきた。
「ま・・まさか・・生きている人たちがいるの?!」
私は急いで呻き声の聞こえる方向へ向かって駆けだした―。
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