タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
128 / 152

第8章 16 レイフとの別れ

しおりを挟む
 あれからどれくらい時が経過しただろうか。
レイフは土砂降りの雨の中マントを羽織ると外に出て、暫くすると籠を手にぶら下げて戻ってきた。そしてびしょ濡れのマントをを脱いで壁のフックに掛けると毛布を被り、わらの上に座っている私の傍へとやってきた。

「アイリス、お腹もすいて・・喉も乾いているんじゃないのか?これを食べるといい。全部手で皮をむいて食べられる果実ばかりだから。」

レイフは私の目の前にしゃがむとバスケットを見せて蓋を開けた。その中には色とりどりの果実がどっさり入っていた。

「レイフ・・・こんなにたくさんの果実・・一体どうしたの?」

私はレイフを見た。

「ああ・・実はここは果樹園の中なんだ。そしてこの小屋はすでに使われなくなった・・かつてここの果樹園の管理人の家だったらしい。この王宮にやってきた時・・偶然この場所を発見したんだ。まさかこんなところで役立つとは思わなかったがな。」

「ありがとう、レイフ・・・。」

私は果実を1個手に取ると皮をむいて口に入れた。甘酸っぱい味と水分が口の中を潤してくれる。

「どうだ?美味いか?」

レイフが尋ねてきた。

「うん、ありがとう。とても美味しいわ・・・。」

「そうか、それは良かった・・・。」

「レイフは食べないの?」

「ん?ああ・・そうだな。俺も食べるか。」

レイフは私の隣に座るとバスケットから緑色の果実を取り出すと皮をむいて口に放り込んだ。

「うん。うまい・・・。」

そしてフッと笑う。私たちは無言で果実を食べ続け・・気づけば雨の音がやんでいた。

「うん?雨が・・・やんだのか?」

レイフは立ち上がると小屋の窓から外を覗き込みながら言った。

「アイリス、やったぞ。どうやら雨が上がったらしい。すぐに行動した方がいい、行けるか?」

レイフが右手を差し出してきた。

「え、ええ・・大丈夫。出れるわ。」

私は左手でレイフの右手に捕まると立ち上がった。

「よし、すぐに行こう。」




 レイフに手を引かれ、複雑に入り組んだ果樹園の中を私とレイフは歩き続けていた。道は雨水でぬかるんで歩きにくかったが、いつ追手が来るか分からないので足を止めるわけにはいかない。

「アイリス、もう少しの辛抱だ。頑張れ。」

レイフが振り向いて声を掛けてくる。

「え、ええ。」

やがて、果樹園を通りに受けた先に城壁が見えた。

「よし、果樹園を抜けたぞ。」

レイフの嬉しそうな声が聞こえてくるが・・・一体どうやってこの壁を超えると言うのだろう。壁は見上げるほどに高かった。

「ねえ・・レイフ。一体ここからどうやって塀を超えると言うの?」

するとレイフは初めて私を振り返った。

「大丈夫だ、安心しろ。」

レイフは言うと、壁に手をついて壁伝いにあるき始めた。そして・・・。

「あった!ここだ!」

レイフの嬉しそうな声が聞こえた。

「何があったの?」

しかしレイフはそれに答えず、突然しゃがむと足元の植え込みをガサガサと探り始めた。

「レイフ・・・?」

すると植え込みの中から人が1人抜けられそうな穴が塀に開いているのが見つかった。

「アイリス、ここから外へ出るんだ。」

「ええ・・。レイフも来るんでしょう?」

「・・・ああ。」

少しの間の後、レイフは返事をした。

「ほら、俺が植え込みを押さえているから・・今なら通り抜け出来る。」

レイフは両足で茂みを地面に押さえつけている。

「え、ええ・・。」

私はしゃがむと四つん這いになって壁の穴を抜けて、城壁の外へと出ると振り返った。

「レイフ、貴方も早く来て。」

「・・・駄目だ、いけない。」

壁の向こうで声が聞こえる。

「え?レイフ・・今、何て・・・?」

「いいか、アイリス。今お前の目には道が続いているだろう?その道をまっすぐ進めばすぐに『リーベルタース』の町へ着く。その道は行商人が多く行きかう安全な道だ。1人で行けるな?」

「レイフ・・・!駄目よ、ここに1人で残ったら・・!」

しかし、レイフは言った。

「・・次にオスカー王子が目の前に現れた時は・・俺たちは敵だ。」

「!」

「じゃあな、アイリス。」

そこでレイフの気配は消えてしまった―。






しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

奪われる人生とはお別れします 婚約破棄の後は幸せな日々が待っていました

水空 葵
恋愛
婚約者だった王太子殿下は、最近聖女様にかかりっきりで私には見向きもしない。 それなのに妃教育と称して仕事を押し付けてくる。 しまいには建国パーティーの時に婚約解消を突き付けられてしまった。 王太子殿下、それから私の両親。今まで尽くしてきたのに、裏切るなんて許せません。 でも、これ以上奪われるのは嫌なので、さっさとお別れしましょう。 ◇2024/2/5 HOTランキング1位に掲載されました。 ◇第17回 恋愛小説大賞で6位&奨励賞を頂きました。 ◇レジーナブックスより書籍発売中です! 本当にありがとうございます!

理想の女性を見つけた時には、運命の人を愛人にして白い結婚を宣言していました

ぺきぺき
恋愛
王家の次男として生まれたヨーゼフには幼い頃から決められていた婚約者がいた。兄の補佐として育てられ、兄の息子が立太子した後には臣籍降下し大公になるよていだった。 このヨーゼフ、優秀な頭脳を持ち、立派な大公となることが期待されていたが、幼い頃に見た絵本のお姫様を理想の女性として探し続けているという残念なところがあった。 そしてついに貴族学園で絵本のお姫様とそっくりな令嬢に出会う。 ーーーー 若気の至りでやらかしたことに苦しめられる主人公が最後になんとか幸せになる話。 作者別作品『二人のエリーと遅れてあらわれるヒーローたち』のスピンオフになっていますが、単体でも読めます。 完結まで執筆済み。毎日四話更新で4/24に完結予定。 第一章 無計画な婚約破棄 第二章 無計画な白い結婚 第三章 無計画な告白 第四章 無計画なプロポーズ 第五章 無計画な真実の愛 エピローグ

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

【完結】領主の妻になりました

青波鳩子
恋愛
「私が君を愛することは無い」 司祭しかいない小さな教会で、夫になったばかりのクライブにフォスティーヌはそう告げられた。 =============================================== オルティス王の側室を母に持つ第三王子クライブと、バーネット侯爵家フォスティーヌは婚約していた。 挙式を半年後に控えたある日、王宮にて事件が勃発した。 クライブの異母兄である王太子ジェイラスが、国王陛下とクライブの実母である側室を暗殺。 新たに王の座に就いたジェイラスは、異母弟である第二王子マーヴィンを公金横領の疑いで捕縛、第三王子クライブにオールブライト辺境領を治める沙汰を下した。 マーヴィンの婚約者だったブリジットは共犯の疑いがあったが確たる証拠が見つからない。 ブリジットが王都にいてはマーヴィンの子飼いと接触、画策の恐れから、ジェイラスはクライブにオールブライト領でブリジットの隔離監視を命じる。 捜査中に大怪我を負い、生涯歩けなくなったブリジットをクライブは密かに想っていた。 長兄からの「ブリジットの隔離監視」を都合よく解釈したクライブは、オールブライト辺境伯の館のうち豪華な別邸でブリジットを囲った。 新王である長兄の命令に逆らえずフォスティーヌと結婚したクライブは、本邸にフォスティーヌを置き、自分はブリジットと別邸で暮らした。 フォスティーヌに「別邸には近づくことを許可しない」と告げて。 フォスティーヌは「お飾りの領主の妻」としてオールブライトで生きていく。 ブリジットの大きな嘘をクライブが知り、そこからクライブとフォスティーヌの関係性が変わり始める。 ======================================== *荒唐無稽の世界観の中、ふんわりと書いていますのでふんわりとお読みください *約10万字で最終話を含めて全29話です *他のサイトでも公開します *10月16日より、1日2話ずつ、7時と19時にアップします *誤字、脱字、衍字、誤用、素早く脳内変換してお読みいただけるとありがたいです

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

ご安心を、2度とその手を求める事はありません

ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・ それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします

恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。 王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい? つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!? そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。 報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。 王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。 2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……) ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

処理中です...