タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
123 / 152

第8章 11 フリードリッヒ3世との対峙

しおりを挟む
「いいえ、まだです・・・。オスカー様と・・・ユリアナを安全な場所に逃がしてもらえないのであれば、私は・・。」

さらに自分の喉を短剣で傷つける。鋭い痛みに歯を食いしばり、私はフリードリッヒ3世と対峙した。
首から流れ出る出血は思った以上に量が多いのか、首元から流れ出くる生温か血が私の着ているメイド服のエプロンを少しずつ赤く染めていく。

「わ・・分かった!この2人を逃がす!手出しはしないと約束するから・・・頼むからやめてくれっ!」

フリードリッヒ3世は顔を歪めながら私に必死で懇願してくる。

「ほら、これでよいだろう?」

フリードリッヒ3世は指をパチンと鳴らすと、途端にオスカーとユリアナの姿が消えてしまった。

「!」

目の前で突然2人が消えた事で私は焦ってしまった。

「陛下っ!一体・・・2人をどこへやったのですかっ?!」

「慌てるな・・・アイリス。あの2人ならこの王宮の外に移動させた。どうやらそこに仲間がいるらしいからな・・。」

言いながらフリードリッヒ3世は再び指を鳴らすと突然何もない空間に城の外の景色が浮かびあがった。

「!」

驚きのあまり身構えると、そこにアイリスとユリアナが倒れており、シモン達が駆け寄って行く姿が現れ・・そこで突然消えてしまった。


「・・・・。」

今のは・・一体何だったのだろう・・?あれは城の外で起きている出来事なのだろうか・・・?

未だに剣先を喉元につけながら私はフリードリッヒ3世を見つめた。

「・・・どうした?アイリス。今の映像は本物だぞ?あれは実際に城の外で起きている・・事実だ。」

「本当に・・・嘘ではありませんね・・・?」

「ああ・・・もちろんだ。この私が・・・大切なお前に嘘をつくはずがないだろう?さあ・・もう何も私たちを邪魔するものは無くなったよ・・。」

言いながらフリードリッヒ3世は一歩ずつ近づいて来る。

「・・・・。」

私はじりじり後ろに下がりながら恐怖と戦っていた。何故・・?何故フリードリッヒ3世はここまで私に執着するのだろう?しかも口ぶりに違和感を感じる。何故私を大切に思うのだろうか・・・・?

「あ!」

気付けば私は壁際に追い詰められていた。

「い、いや・・・やめて・・・来ないで・・・。」

青ざめ、震えながらフリードリッヒ3世を見ると彼は怪訝そうに立ち止まった。

「どうした・・?アイリス・・何故そこまで私を見て怯えるのだ?ああ・・・ひょっとするこの外見が嫌なのか?そうなのだろう?まあ・・私にとっては外見などどうでもよい話だが・・・そこまでアイリスが嫌がるのであれば姿を変える事にしよう・・。」

すると、途端にフリードリッヒ3世の体が靄に包まれ・・徐々に姿を変えていく。やがて靄が徐々に晴れていき・・・姿を現したのは・・・。

「!オ・・・オスカー様・・・?」

私は目を見張った。まただ・・・またしてもフリードリッヒ3世はオスカーの姿に身体を変えた。

「アイリス・・・お前の好みの外見は・・・この男なのだろう?」

そしてオスカーの姿で再び私に近付いて来る。それでも・・・。

「いや!やめてっ!貴方は・・貴方はオスカー様では無いわっ!来ないでっ!」

しかし・・・。

オスカーの姿になったフリードリッヒ3世は一瞬で私の目の前に立ち、短剣を奪い去ると、私の両手首を強く握りしめたまま壁に押し付けてきた。

「!」

途端にフリードリッヒ3世の思考が洪水のように流れ込んでくる。それは今まで感じた事のない膨大な量の思考だった。何世紀に渡る膨大な記憶と思考・・。

「キャアアアッ!!」

私はその重みに耐えきれず・・・悲鳴を上げて気を失ってしまった―。





しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

悪役令嬢、猛省中!!

***あかしえ
恋愛
「君との婚約は破棄させてもらう!」 ――この国の王妃となるべく、幼少の頃から悪事に悪事を重ねてきた公爵令嬢ミーシャは、狂おしいまでに愛していた己の婚約者である第二王子に、全ての罪を暴かれ断頭台へと送られてしまう。 処刑される寸前――己の前世とこの世界が少女漫画の世界であることを思い出すが、全ては遅すぎた。 今度生まれ変わるなら、ミーシャ以外のなにかがいい……と思っていたのに、気付いたら幼少期へと時間が巻き戻っていた!? 己の罪を悔い、今度こそ善行を積み、彼らとは関わらず静かにひっそりと生きていこうと決意を新たにしていた彼女の下に現れたのは……?! 襲い来るかもしれないシナリオの強制力、叶わない恋、 誰からも愛されるあの子に対する狂い出しそうな程の憎しみへの恐怖、  誰にもきっと分からない……でも、これの全ては自業自得。 今度こそ、私は私が傷つけてきた全ての人々を…………救うために頑張ります!

元カレの今カノは聖女様

abang
恋愛
「イブリア……私と別れて欲しい」 公爵令嬢 イブリア・バロウズは聖女と王太子の愛を妨げる悪女で社交界の嫌われ者。 婚約者である王太子 ルシアン・ランベールの関心は、品行方正、心優しく美人で慈悲深い聖女、セリエ・ジェスランに奪われ王太子ルシアンはついにイブリアに別れを切り出す。 極め付けには、王妃から嫉妬に狂うただの公爵令嬢よりも、聖女が婚約者に適任だと「ルシアンと別れて頂戴」と多額の手切れ金。 社交会では嫉妬に狂った憐れな令嬢に"仕立てあげられ"周りの人間はどんどんと距離を取っていくばかり。 けれども当の本人は… 「悲しいけれど、過ぎればもう過去のことよ」 と、噂とは違いあっさりとした様子のイブリア。 それどころか自由を謳歌する彼女はとても楽しげな様子。 そんなイブリアの態度がルシアンは何故か気に入らない様子で… 更には婚約破棄されたイブリアの婚約者の座を狙う王太子の側近達。 「私をあんなにも嫌っていた、聖女様の取り巻き達が一体私に何の用事があって絡むの!?嫌がらせかしら……!」

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

こな
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

気付けば名も知らぬ悪役令嬢に憑依して、見知らぬヒロインに手をあげていました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
私が憑依した身体の持ちは不幸のどん底に置かれた悪役令嬢でした ある日、妹の部屋で見つけた不思議な指輪。その指輪をはめた途端、私は見知らぬ少女の前に立っていた。目の前には赤く腫れた頬で涙ぐみ、こちらをじっと見つめる可憐な美少女。そして何故か右手の平が痛む私。もしかして・・今私、この少女を引っ叩いたの?!そして何故か頭の中で響き渡る謎の声の人物と心と体を共存することになってしまう。憑依した身体の持ち主はいじめられっ娘の上に悪役令嬢のポジションに置かれている。見るに見かねた私は彼女を幸せにする為、そして自分の快適な生活を手に入れる為に自ら身体を張って奮闘する事にした―。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。 瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。 そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。 その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。 そして……。 本編全79話 番外編全34話 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな
恋愛
 公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。  当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。  どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・

処理中です...