114 / 152
第8章 2 新たな王宮潜入計画
しおりを挟む
翌朝―
パンに野菜スープ、ミルクという質素な食事を部屋で取った私たちは11時に王宮へ向かう事にした。
隠れ家の前で町民の姿に扮したシモンが荷台の布カバーをはがしたので、私は顔を上げた。
「アイリス様・・・窮屈でしょうか少しだけこの荷車で隠れていてください。」
荷台には様々な品々と共に並べられた樽があり、その中の一つに隠れている私に囁くように言う。
「ええ・・私なら大丈夫。それより貴方達の方が心配だわ・・・。」
私はシモン、アルマンゾ、ヴィンサント、ヘルマンそしてユリアナとアドニスを見渡すと言った。
彼らは全員フードを目深に被り町民やあるいは農夫の恰好をしている。これから私たちはこの姿で王宮へ向かう手はずになっている。
実は翌朝緊急会議が行われ、やはり私とオスカーを交換すると言う案は私の身を案じ、全員一致で取り下げられたのだ。その代りに城へ届け物をする町民と農夫の姿になりきり、城へ潜入する方法を取ることに決定した。
他の仲間たちは一足先に王城へ向けて別のルートで向かっている。そのルートは地下道を通り抜けて進む為、道が細く険しいので大勢で向かうのは難しいそうだ。
心配そうにしている私を安心させる為か、農夫に扮したアルマンゾが言った。
「大丈夫です。幸い我らの顔は殆ど王宮兵士達には知られていないのです。絶対にばれる事はありません。ただ心配なのはアドニスです。」
アルマンゾは髪を黒く染め、付け髭をしたアドニスを見ると言った。アドニスは農夫の姿をしており、麦わら帽子をかぶっている。
「大丈夫です。いざとなればどんな役にもなり切れる自信があります。」
アドニスは大まじめに答える
「中々似合っていますわ、アドニス様。」
ユリアナがクスクス笑いながら言う。ちなみにユリアナは町民の姿をしており、頭には頭巾をかぶり、髪は頭巾の中に入れている。
「それでは・・・行きましょう。」
シモンに促され、私は頷くと樽の中にしゃがみ、上から布カバーを掛けられた。
ガタン
荷台が大きく傾き、やがてガラガラと振動が下から響いて来た。私は樽の中に身を潜め、祈った。どうか・・・無事に王宮に忍び込むことが出来ますように・・オスカーを助け出す事が出来ますようにと―。
ガラガラガラガラ・・・・
あれからどれくらい時間が経過しただろうか・・昨晩は緊張のあまり良く眠れなかった事もあり、寝不足気味だった私はいつのまにかウトウトしていたようだった。
突如ガタンと音がして荷台が激しく揺れた。
「!」
私は慌てて目を覚ますと辺りの気配を伺った。外で話声が聞こえて来る。
「止まれ!お前たち・・・何所へ行くつもりだ?!ここから先は王城へと続く道だ。何の用があってこちらへやってきたのだ?!」
「はい。私たちは自由都市『リーベルタース』に住む町民と農夫です。今日は王宮で注文された品をお届けに参りました。」
声色を変えているが・・・あの声はシモンだ。
「何?荷台の中身は何だ?」
「麦と大麦に野菜・・そして織物と香辛料を積んでおります。」
「ふん、そうか・・・中を改めさせて貰うぞ。」
え・・?私の身体から血の気が引く。そしてバサッと布が取り払われた音がする。
「ふむ・・・確かに野菜やら麻袋が乗せられているが・・・・この樽は何だ?」
ドキッ!
思わず心臓が跳ね上がりそうになる。
「それは私達が作ったワインでございます。とても良い出来に仕上がりましたので是非とも王宮に献上させて頂こうと思い、お持ちしました。」
その声はユリアナだ。
「そうか・・・では念の為に中を改めさせてもらうぞ?」
な・・中を改める・・?まさか樽の蓋を開けるつもりでは・・・。私の身体に緊張が走る。
そしておもむろに樽に手がかかり・・・乱暴に蓋をこじ開けられた―!
パンに野菜スープ、ミルクという質素な食事を部屋で取った私たちは11時に王宮へ向かう事にした。
隠れ家の前で町民の姿に扮したシモンが荷台の布カバーをはがしたので、私は顔を上げた。
「アイリス様・・・窮屈でしょうか少しだけこの荷車で隠れていてください。」
荷台には様々な品々と共に並べられた樽があり、その中の一つに隠れている私に囁くように言う。
「ええ・・私なら大丈夫。それより貴方達の方が心配だわ・・・。」
私はシモン、アルマンゾ、ヴィンサント、ヘルマンそしてユリアナとアドニスを見渡すと言った。
彼らは全員フードを目深に被り町民やあるいは農夫の恰好をしている。これから私たちはこの姿で王宮へ向かう手はずになっている。
実は翌朝緊急会議が行われ、やはり私とオスカーを交換すると言う案は私の身を案じ、全員一致で取り下げられたのだ。その代りに城へ届け物をする町民と農夫の姿になりきり、城へ潜入する方法を取ることに決定した。
他の仲間たちは一足先に王城へ向けて別のルートで向かっている。そのルートは地下道を通り抜けて進む為、道が細く険しいので大勢で向かうのは難しいそうだ。
心配そうにしている私を安心させる為か、農夫に扮したアルマンゾが言った。
「大丈夫です。幸い我らの顔は殆ど王宮兵士達には知られていないのです。絶対にばれる事はありません。ただ心配なのはアドニスです。」
アルマンゾは髪を黒く染め、付け髭をしたアドニスを見ると言った。アドニスは農夫の姿をしており、麦わら帽子をかぶっている。
「大丈夫です。いざとなればどんな役にもなり切れる自信があります。」
アドニスは大まじめに答える
「中々似合っていますわ、アドニス様。」
ユリアナがクスクス笑いながら言う。ちなみにユリアナは町民の姿をしており、頭には頭巾をかぶり、髪は頭巾の中に入れている。
「それでは・・・行きましょう。」
シモンに促され、私は頷くと樽の中にしゃがみ、上から布カバーを掛けられた。
ガタン
荷台が大きく傾き、やがてガラガラと振動が下から響いて来た。私は樽の中に身を潜め、祈った。どうか・・・無事に王宮に忍び込むことが出来ますように・・オスカーを助け出す事が出来ますようにと―。
ガラガラガラガラ・・・・
あれからどれくらい時間が経過しただろうか・・昨晩は緊張のあまり良く眠れなかった事もあり、寝不足気味だった私はいつのまにかウトウトしていたようだった。
突如ガタンと音がして荷台が激しく揺れた。
「!」
私は慌てて目を覚ますと辺りの気配を伺った。外で話声が聞こえて来る。
「止まれ!お前たち・・・何所へ行くつもりだ?!ここから先は王城へと続く道だ。何の用があってこちらへやってきたのだ?!」
「はい。私たちは自由都市『リーベルタース』に住む町民と農夫です。今日は王宮で注文された品をお届けに参りました。」
声色を変えているが・・・あの声はシモンだ。
「何?荷台の中身は何だ?」
「麦と大麦に野菜・・そして織物と香辛料を積んでおります。」
「ふん、そうか・・・中を改めさせて貰うぞ。」
え・・?私の身体から血の気が引く。そしてバサッと布が取り払われた音がする。
「ふむ・・・確かに野菜やら麻袋が乗せられているが・・・・この樽は何だ?」
ドキッ!
思わず心臓が跳ね上がりそうになる。
「それは私達が作ったワインでございます。とても良い出来に仕上がりましたので是非とも王宮に献上させて頂こうと思い、お持ちしました。」
その声はユリアナだ。
「そうか・・・では念の為に中を改めさせてもらうぞ?」
な・・中を改める・・?まさか樽の蓋を開けるつもりでは・・・。私の身体に緊張が走る。
そしておもむろに樽に手がかかり・・・乱暴に蓋をこじ開けられた―!
20
お気に入りに追加
588
あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、猛省中!!
***あかしえ
恋愛
「君との婚約は破棄させてもらう!」
――この国の王妃となるべく、幼少の頃から悪事に悪事を重ねてきた公爵令嬢ミーシャは、狂おしいまでに愛していた己の婚約者である第二王子に、全ての罪を暴かれ断頭台へと送られてしまう。
処刑される寸前――己の前世とこの世界が少女漫画の世界であることを思い出すが、全ては遅すぎた。
今度生まれ変わるなら、ミーシャ以外のなにかがいい……と思っていたのに、気付いたら幼少期へと時間が巻き戻っていた!?
己の罪を悔い、今度こそ善行を積み、彼らとは関わらず静かにひっそりと生きていこうと決意を新たにしていた彼女の下に現れたのは……?!
襲い来るかもしれないシナリオの強制力、叶わない恋、
誰からも愛されるあの子に対する狂い出しそうな程の憎しみへの恐怖、
誰にもきっと分からない……でも、これの全ては自業自得。
今度こそ、私は私が傷つけてきた全ての人々を…………救うために頑張ります!

元カレの今カノは聖女様
abang
恋愛
「イブリア……私と別れて欲しい」
公爵令嬢 イブリア・バロウズは聖女と王太子の愛を妨げる悪女で社交界の嫌われ者。
婚約者である王太子 ルシアン・ランベールの関心は、品行方正、心優しく美人で慈悲深い聖女、セリエ・ジェスランに奪われ王太子ルシアンはついにイブリアに別れを切り出す。
極め付けには、王妃から嫉妬に狂うただの公爵令嬢よりも、聖女が婚約者に適任だと「ルシアンと別れて頂戴」と多額の手切れ金。
社交会では嫉妬に狂った憐れな令嬢に"仕立てあげられ"周りの人間はどんどんと距離を取っていくばかり。
けれども当の本人は…
「悲しいけれど、過ぎればもう過去のことよ」
と、噂とは違いあっさりとした様子のイブリア。
それどころか自由を謳歌する彼女はとても楽しげな様子。
そんなイブリアの態度がルシアンは何故か気に入らない様子で…
更には婚約破棄されたイブリアの婚約者の座を狙う王太子の側近達。
「私をあんなにも嫌っていた、聖女様の取り巻き達が一体私に何の用事があって絡むの!?嫌がらせかしら……!」

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ
こな
恋愛
公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。
待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。
ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜
みおな
恋愛
公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。
当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。
どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・
気付けば名も知らぬ悪役令嬢に憑依して、見知らぬヒロインに手をあげていました
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
私が憑依した身体の持ちは不幸のどん底に置かれた悪役令嬢でした
ある日、妹の部屋で見つけた不思議な指輪。その指輪をはめた途端、私は見知らぬ少女の前に立っていた。目の前には赤く腫れた頬で涙ぐみ、こちらをじっと見つめる可憐な美少女。そして何故か右手の平が痛む私。もしかして・・今私、この少女を引っ叩いたの?!そして何故か頭の中で響き渡る謎の声の人物と心と体を共存することになってしまう。憑依した身体の持ち主はいじめられっ娘の上に悪役令嬢のポジションに置かれている。見るに見かねた私は彼女を幸せにする為、そして自分の快適な生活を手に入れる為に自ら身体を張って奮闘する事にした―。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

殺された伯爵夫人の六年と七時間のやりなおし
さき
恋愛
愛のない結婚と冷遇生活の末、六年目の結婚記念日に夫に殺されたプリシラ。
だが目を覚ました彼女は結婚した日の夜に戻っていた。
魔女が行った『六年間の時戻し』、それに巻き込まれたプリシラは、同じ人生は歩まないと決めて再び六年間に挑む。
変わらず横暴な夫、今度の人生では慕ってくれる継子。前回の人生では得られなかった味方。
二度目の人生を少しずつ変えていく中、プリシラは前回の人生では現れなかった青年オリバーと出会い……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる