タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
108 / 152

第7章 13 追放された王宮騎士

しおりを挟む
 倉庫を通り抜けると奥に扉があった。

「この奥に私たちの仲間がいます。」

ユリアナはドアをノックすると、中から声が聞こえた。

「誰だ?」

「私です、ユリアナです。アイリス様をお連れしました。」

「何っ?!アイリス様だって?!」

直後。

ガチャリ

ドアが開けられ、そこには金色に輝く髪に真っ白い鎧を身に着けた背の高い若者が立っていた。その顔はとても美しく、まるで彫刻で掘られたような美貌の持ち主であった。

「アイリス様、お初にお目にかかります。私は元王宮騎士団に所属する騎士でアドニスと申します。どうぞよろしくお願い致します。」

「ええ・・こちらこそよろしくお願い致します。」

頭を下げると、アドニスの背後にはさらに3人の騎士が立っていた。驚いたことに彼らはアドニスの部下だと言う。フリードリッヒ3世に歯向かったと言う罪で王宮騎士を追放され、オスカーの配下に加わったらしい。

「アイリス様、立ち話もなんですからどうぞ中へお入りください。」

アドニスに促され、私は部屋の中へと足を踏み入れた。この隠れ家は最初に案内された隠れ家よりは随分と立派なつくりだった。部屋の中は広く、天井に窓がある為、外の明かりを取り入れる事が出来る。木で作られた大きなテーブルの下には赤いカーペットが敷かれ、青いビロード生地の豪華な足つき長ソファが4台、それぞれテーブルを挟んで向かい合うように並べられている。

「アイリス様、喉が渇いたのではありませんか?今ハーブティーをお持ちしますのでお待ちください。」

ソファに座るとユリアナが言った。

「ありがとう、ユリアナ。」

「いいえ、それでは少々お待ち下さい。」

そしてユリアナは扉を開けて出て行った。

「この隠れ家にいる仲間の方は・・・ここにいる方で全員ですか?」

ユリアナが部屋を出て行った後、私はアドニスに尋ねた。

「いえ。まだ10数名の仲間がいますが・・・全員偵察隊として王宮に忍び込んでいます。実は陛下の傍に妙な女が仕え始めたのです。どうやらその人物が現れてから・・ますます国王陛下の様子がおかしくなったと噂されています。今まで・・・陛下はオスカー様を地下牢に閉じ込めたり・・拷問等一切したことが無かったのに・・それが突然あのような真似を・・。」

アドニスは左手で額を抑えると言った。

「拷問・・・。」

その言葉を口にした私はぞっとした。
オスカーが私の元へ会いに来て救護室へ運ばれたとき・・意識を取り戻したオスカーが私に言った。
地下牢へ閉じ込められて、精神的拷問を受けたと・・。オスカーが私に酷い暴力を何度も振るっていた幻覚を見させられたと。
ひょっとすると・・・拷問をするように命じたのはタバサなのではないだろうか?彼女は入学当時からオスカーに異様に執着心を持っていた。そして前世ではオスカーは全く興味を示す事は無かったのに、何故か今世ではオスカーはタバサには見向きもせず、私の事を・・・愛していた・・・。

「今、王宮に忍び込んだ仲間たちが必死になってオスカー様が囚われている場所を探しているはずです。幸いな事に・・彼らはまだ王宮からは面が割れていません。きっと朗報をもたらしてくれるはずです。だからどうかアイリス様。彼らを信じて待っていましょう。」

アドニスはそう言うが・・・彼らはフリードリッヒ3世の本当の恐ろしさをまだ知らないだろう。闇があれば・・影さえあればどこからでも私の元へ現れると言っていた話を。彼らにフリードリッヒ3世の力の秘密を伝えなければ・・!

私は顔を上げてアドニスを見た―。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、猛省中!!

***あかしえ
恋愛
「君との婚約は破棄させてもらう!」 ――この国の王妃となるべく、幼少の頃から悪事に悪事を重ねてきた公爵令嬢ミーシャは、狂おしいまでに愛していた己の婚約者である第二王子に、全ての罪を暴かれ断頭台へと送られてしまう。 処刑される寸前――己の前世とこの世界が少女漫画の世界であることを思い出すが、全ては遅すぎた。 今度生まれ変わるなら、ミーシャ以外のなにかがいい……と思っていたのに、気付いたら幼少期へと時間が巻き戻っていた!? 己の罪を悔い、今度こそ善行を積み、彼らとは関わらず静かにひっそりと生きていこうと決意を新たにしていた彼女の下に現れたのは……?! 襲い来るかもしれないシナリオの強制力、叶わない恋、 誰からも愛されるあの子に対する狂い出しそうな程の憎しみへの恐怖、  誰にもきっと分からない……でも、これの全ては自業自得。 今度こそ、私は私が傷つけてきた全ての人々を…………救うために頑張ります!

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

元カレの今カノは聖女様

abang
恋愛
「イブリア……私と別れて欲しい」 公爵令嬢 イブリア・バロウズは聖女と王太子の愛を妨げる悪女で社交界の嫌われ者。 婚約者である王太子 ルシアン・ランベールの関心は、品行方正、心優しく美人で慈悲深い聖女、セリエ・ジェスランに奪われ王太子ルシアンはついにイブリアに別れを切り出す。 極め付けには、王妃から嫉妬に狂うただの公爵令嬢よりも、聖女が婚約者に適任だと「ルシアンと別れて頂戴」と多額の手切れ金。 社交会では嫉妬に狂った憐れな令嬢に"仕立てあげられ"周りの人間はどんどんと距離を取っていくばかり。 けれども当の本人は… 「悲しいけれど、過ぎればもう過去のことよ」 と、噂とは違いあっさりとした様子のイブリア。 それどころか自由を謳歌する彼女はとても楽しげな様子。 そんなイブリアの態度がルシアンは何故か気に入らない様子で… 更には婚約破棄されたイブリアの婚約者の座を狙う王太子の側近達。 「私をあんなにも嫌っていた、聖女様の取り巻き達が一体私に何の用事があって絡むの!?嫌がらせかしら……!」

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

こな
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

気付けば名も知らぬ悪役令嬢に憑依して、見知らぬヒロインに手をあげていました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
私が憑依した身体の持ちは不幸のどん底に置かれた悪役令嬢でした ある日、妹の部屋で見つけた不思議な指輪。その指輪をはめた途端、私は見知らぬ少女の前に立っていた。目の前には赤く腫れた頬で涙ぐみ、こちらをじっと見つめる可憐な美少女。そして何故か右手の平が痛む私。もしかして・・今私、この少女を引っ叩いたの?!そして何故か頭の中で響き渡る謎の声の人物と心と体を共存することになってしまう。憑依した身体の持ち主はいじめられっ娘の上に悪役令嬢のポジションに置かれている。見るに見かねた私は彼女を幸せにする為、そして自分の快適な生活を手に入れる為に自ら身体を張って奮闘する事にした―。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

死に戻りの悪役令嬢は、今世は復讐を完遂する。

乞食
恋愛
メディチ家の公爵令嬢プリシラは、かつて誰からも愛される少女だった。しかし、数年前のある事件をきっかけに周囲の人間に虐げられるようになってしまった。 唯一の心の支えは、プリシラを慕う義妹であるロザリーだけ。 だがある日、プリシラは異母妹を苛めていた罪で断罪されてしまう。 プリシラは処刑の日の前日、牢屋を訪れたロザリーに無実の証言を願い出るが、彼女は高らかに笑いながらこう言った。 「ぜーんぶ私が仕組んだことよ!!」 唯一信頼していた義妹に裏切られていたことを知り、プリシラは深い悲しみのまま処刑された。 ──はずだった。 目が覚めるとプリシラは、三年前のロザリーがメディチ家に引き取られる前日に、なぜか時間が巻き戻っていて──。 逆行した世界で、プリシラは義妹と、自分を虐げていた人々に復讐することを誓う。

悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな
恋愛
 公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。  当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。  どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・

処理中です...