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第7章 6 夢の世界の侵入者
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「アイリス、君は今自分が危険な立場に置かれてるって分かっている?」
アスターは私の部屋の1人掛けソファに座ると尋ねてきた。
「え、ええ・・もちろん分かってるつもりよ。」
私もアスターの向かい側に座った。
「オスカーは今・・王宮の地下牢に閉じ込められているよ。邪眼の持主の監視下に置かれている。」
アスターの言葉に私は驚いた。
「アスター・・貴女、邪眼の事を知ってるの?」
「当り前だよ。僕を誰だと思っているんだい?精霊なんだよ?そして僕は君の守護精霊でもある・・。だから君を助けに来たんだ。」
「助けるって・・・どうやって・・?」
「そうだな。一番手っ取り早いのは・・君をここから逃がして2人で誰も知らない場所へ移動する。何、空間移動位僕にはお手の物さ。アイリスの行きたいところ・・それこそ世界の果てにだって飛んでいけるよ?」
それを聞いて私は慌てた。
「駄目よ、そんな事出来るはず無いでしょう?イリヤ家の屋敷には王宮の兵士たちによって取り囲まれているのよ?私だけが逃げたら・・皆はどうなってしまうの?」
「それ位なら僕は何とかできるよ?人間を一瞬のうちに眠らせてしまう位どうって事は無いからね。君の屋敷を見張っている兵士達を何処か遠い場所へ捨ててくればいい。」
サラリと恐ろしいことを言うアスター。
「それでも駄目よ・・・。だって・・・。」
オスカーを・・助け出さなければ・・。思わずうつむくとアスターが声を掛けてきた。
「アイリス。まさか・・・君・・。」
アスターは私の頬を両手で挟むと言った。
「オスカーを助け出そうと思ってる?でも・・君は忘れたの?70年前・・オスカーは婚約者だった君を捨てて邪眼の持ち主のあの女を選んだんだよ?しかも言われなき罪で酷い暴力を受けた上、裁かれて・・・挙句の果てにあの流刑島へ流されたんだよね?しかも死ぬまであの島から出る事も無く・・。あの時、僕の力は未熟でね・・・今みたいに力があればあんな島、君を連れて逃げることだって出来たのに・・。それだけが今も悔やまれるけど・・・。」
「アスター・・・。」
「だから、今世ではアイリス。絶対君を助けようと決めたんだ。オスカーなんて放っておこうよ。だって彼はもう君の婚約者でもないし、王族の身分を剥奪されたただの犯罪者なんだよ?それより、一番心配なのは君なんだよ。アイリス・・君は悪魔に狙われているんだよ?」
「悪魔・・・。アスター・・・やはり私を狙っているのは悪魔だったの?今の国王に取りついている・・。」
「そうだよ。彼はね、オスカーを囮にしてアイリス。君を我が物にしようと狙っているんだ。だから・・・彼を助けに行けば君は間違いなく悪魔に捕まってしまうかもしれないよ?」
アスターはいつになく真剣な瞳で私を見つめている。だけど、どうしてもわからないことがある。何故?何故悪魔は私を狙っているのだろう?その理由がさっぱり分らなかった。でも・・・何となくアスターはその理由を知っている気がしたので、彼に尋ねてみる事にした。
「ねえ・・教えて。アスター。どうして私が・・・悪魔に狙われているのか分かる・・?」
「それはね・・・。」
そこまで言いかけた時・・・。
突然バチッと火花のはじけるような音が聞こえた。そして次の瞬間、アスターの苦し気なうめき声が聞こえて来る。
「ウッ・・・!」
見ると、アスターの首に黒い靄のようなものが巻き付き、首をしめ挙げていたのだ。
「ク・・ッ!し、しまった・・・!」
すると、黒い靄がさらに大きくなり・・徐々に人の姿を象ってゆく。やがてどす黒い靄に覆い尽くされ、アスターの首を片手で掴み、宙にぶら下げている人物が現れたのだ。それは・・・フリードリッヒ3世だった。
黒い靄に覆われた国王は私を振り向くと言った。
「アイリス・・・ついに見つけたぞ?まさか・・こんなところにいたとはな・・・。」
国王はギリギリとアスターの首を締め上げたまま私を見る。アスターはその手から逃れようと必死で足をばたばたさせてもがいているが、一向にその手を振りほどけずにいた。そして私を見ると言った。
「やめろ・・・アイリスに・・・手を出すな・・・。」
するとフリードリッヒ3世は言った。
「黙れっ!まだ目覚めたばかりのお前にこの私を止める力など無いっ!」
そしてさらに首を締め上げる。
「ク・・・ッ!ア・・・アイリス・・・目を覚ませ・・・っ!」
突如アスターが叫ぶと、眩しい光が彼の身体から放たれた。
「ギャアアアアッ!!」
激しい悲鳴と共に、突如私の部屋がまるで紙を破くようにベリベリと引き裂かれ・・私はそのまま意識を失ってしまった―。
アスターは私の部屋の1人掛けソファに座ると尋ねてきた。
「え、ええ・・もちろん分かってるつもりよ。」
私もアスターの向かい側に座った。
「オスカーは今・・王宮の地下牢に閉じ込められているよ。邪眼の持主の監視下に置かれている。」
アスターの言葉に私は驚いた。
「アスター・・貴女、邪眼の事を知ってるの?」
「当り前だよ。僕を誰だと思っているんだい?精霊なんだよ?そして僕は君の守護精霊でもある・・。だから君を助けに来たんだ。」
「助けるって・・・どうやって・・?」
「そうだな。一番手っ取り早いのは・・君をここから逃がして2人で誰も知らない場所へ移動する。何、空間移動位僕にはお手の物さ。アイリスの行きたいところ・・それこそ世界の果てにだって飛んでいけるよ?」
それを聞いて私は慌てた。
「駄目よ、そんな事出来るはず無いでしょう?イリヤ家の屋敷には王宮の兵士たちによって取り囲まれているのよ?私だけが逃げたら・・皆はどうなってしまうの?」
「それ位なら僕は何とかできるよ?人間を一瞬のうちに眠らせてしまう位どうって事は無いからね。君の屋敷を見張っている兵士達を何処か遠い場所へ捨ててくればいい。」
サラリと恐ろしいことを言うアスター。
「それでも駄目よ・・・。だって・・・。」
オスカーを・・助け出さなければ・・。思わずうつむくとアスターが声を掛けてきた。
「アイリス。まさか・・・君・・。」
アスターは私の頬を両手で挟むと言った。
「オスカーを助け出そうと思ってる?でも・・君は忘れたの?70年前・・オスカーは婚約者だった君を捨てて邪眼の持ち主のあの女を選んだんだよ?しかも言われなき罪で酷い暴力を受けた上、裁かれて・・・挙句の果てにあの流刑島へ流されたんだよね?しかも死ぬまであの島から出る事も無く・・。あの時、僕の力は未熟でね・・・今みたいに力があればあんな島、君を連れて逃げることだって出来たのに・・。それだけが今も悔やまれるけど・・・。」
「アスター・・・。」
「だから、今世ではアイリス。絶対君を助けようと決めたんだ。オスカーなんて放っておこうよ。だって彼はもう君の婚約者でもないし、王族の身分を剥奪されたただの犯罪者なんだよ?それより、一番心配なのは君なんだよ。アイリス・・君は悪魔に狙われているんだよ?」
「悪魔・・・。アスター・・・やはり私を狙っているのは悪魔だったの?今の国王に取りついている・・。」
「そうだよ。彼はね、オスカーを囮にしてアイリス。君を我が物にしようと狙っているんだ。だから・・・彼を助けに行けば君は間違いなく悪魔に捕まってしまうかもしれないよ?」
アスターはいつになく真剣な瞳で私を見つめている。だけど、どうしてもわからないことがある。何故?何故悪魔は私を狙っているのだろう?その理由がさっぱり分らなかった。でも・・・何となくアスターはその理由を知っている気がしたので、彼に尋ねてみる事にした。
「ねえ・・教えて。アスター。どうして私が・・・悪魔に狙われているのか分かる・・?」
「それはね・・・。」
そこまで言いかけた時・・・。
突然バチッと火花のはじけるような音が聞こえた。そして次の瞬間、アスターの苦し気なうめき声が聞こえて来る。
「ウッ・・・!」
見ると、アスターの首に黒い靄のようなものが巻き付き、首をしめ挙げていたのだ。
「ク・・ッ!し、しまった・・・!」
すると、黒い靄がさらに大きくなり・・徐々に人の姿を象ってゆく。やがてどす黒い靄に覆い尽くされ、アスターの首を片手で掴み、宙にぶら下げている人物が現れたのだ。それは・・・フリードリッヒ3世だった。
黒い靄に覆われた国王は私を振り向くと言った。
「アイリス・・・ついに見つけたぞ?まさか・・こんなところにいたとはな・・・。」
国王はギリギリとアスターの首を締め上げたまま私を見る。アスターはその手から逃れようと必死で足をばたばたさせてもがいているが、一向にその手を振りほどけずにいた。そして私を見ると言った。
「やめろ・・・アイリスに・・・手を出すな・・・。」
するとフリードリッヒ3世は言った。
「黙れっ!まだ目覚めたばかりのお前にこの私を止める力など無いっ!」
そしてさらに首を締め上げる。
「ク・・・ッ!ア・・・アイリス・・・目を覚ませ・・・っ!」
突如アスターが叫ぶと、眩しい光が彼の身体から放たれた。
「ギャアアアアッ!!」
激しい悲鳴と共に、突如私の部屋がまるで紙を破くようにベリベリと引き裂かれ・・私はそのまま意識を失ってしまった―。
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