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第6章 19 宿屋の襲撃
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「オ、オスカー様・・・?!」
オスカーは私を抱きしめる腕の力を弱めない。そして徐々にオスカーの身体からまがまがしい気配が黒い靄となって表れ始め、徐々に身体を侵食し始めた。
「ぐっ・・・・!」
オスカーはグッと目をつぶり、額に脂汗を滲ませている。まるでそれは必死であがなっているようにも見える。
私は悟った。これは・・・『エルトリアの呪い』に違いないと。
「オスカー様っ!しっかりして下さいっ!呪いに負けてはいけませんっ!」
その時・・バタバタバタと何人もの足音が廊下を駆けてくる音が聞こえてきた。
まさか・・・?嫌な予感がしたその瞬間、部屋のドアがけ破られ、10人前後の王級の兵士が部屋の中になだれ込んできた。
「ついに見つけたぞ・・・オスカー・ウィンザードッ!!陛下の命により貴様を反逆罪で捕らえに来たっ!おとなしくつかまれっ!」
1人、鎧姿にマントをつけた兵士が剣を構えた。恐らく兵士たちのリーダーなのかもしれない。
「ふ・・お前たちだけでこの俺をどうにか出来ると思ったのか?」
しかし、何故かオスカーは不敵な笑みを浮かべる。私には謎だった。何故このような状況でオスカーは笑っていられるのだろうか?大怪我を負っているだけでなく、武器だって持ってはいないのに・・何か勝算があるのだろうか?そして私は目の前の兵士たちの後ろに隠れるようにこちらを見ている人物に気が付いた。それはオスカーの怪我の治療をした男性だったのだ。まさか・・彼がオスカーを告発したのだろうか・・?
「フン・・・余裕だな・・・。そんな怪我を負っている身体で・・・しかも丸腰状態で俺たちにかなうと思っているのか?」
兵士は言う。
「お前たちも・・俺の事を甘く見すぎだ。俺もだいぶ見くびられたものだな・・。」
話をしている傍から、どんどんオスカーの身体は靄が濃くなっていく。
「オ・・・オスカー様っ!!」
私はたまらずオスカーにしがみついて叫ぶと、オスカーが言った。
「アイリス、しっかり俺に捕まっていろ。」
「え?」
その瞬間、オスカーは私を抱き上げると突然窓をあけて、飛び降りたのだ。
そんなっ!ここは・・・3階なのにっ!
恐怖で思わずギュッと目をつぶるも、オスカーは見事に着地した。そしてそれを見守る兵士たちは窓からこちらを見下ろしている。その誰もが驚愕の顔を浮かべている。
「逃げるぞっ!アイリスッ!」
一体オスカーのどこにそんな力が残されていたのだろうか?オスカーは私を抱きかかえたまま、ものすごい速さで駆けてゆく。そして背後に迫る追手をあっという間に引き離してしまった。
「うっ!」
狭い路地裏までオスカーは駆けてきたが、突如苦し気にうめくと、ガクリと膝を落とし、私をようやく石畳の地面におろすと、壁に寄り掛かり、そのままズルズルと地面に崩れ落ちた。
「オスカー様っ!」
私は両手でオスカーの身体に触れた。するとオスカーの思考が頭の中に流れ込んで来た―。
《 やった・・・何とかアイリスを連れて・・・・逃げる事が出来た・・・。これも皮肉な事に偶然にも呪いの力が強くなったおかげだ・・・。 》
え・・?呪いの力・・?
見ると、オスカーの身体は半分以上が黒い靄に覆われていた。
「オスカー様・・・先ほどのオスカー様は・・・尋常ではない力を発揮しておりました。一体どういう事なのですか?」
するとオスカーは荒い息をしながら私を見ると言った。
「俺たち、ウィンザード家の人間は・・・呪いの力が強くなれば・・自分の能力も強まるんだ・・。皮肉なことに・・。」
そして苦し気に笑みを浮かべた。確かにその力で私たちがあの宿屋から逃げられたが・・・。
「そんな・・でもオスカー様の身体が・・・。」
オスカーの身体は半分以上呪いに侵されている。しかし、オスカーは言った。
「そんな泣きそうな顔をするな・・アイリス・・。ここは女神像に守られた土地だ。だから俺が・・完全に呪いに侵される心配はない・・・。」
オスカーは青ざめた顔で笑みを浮かべた、その時―。
オスカーは私を抱きしめる腕の力を弱めない。そして徐々にオスカーの身体からまがまがしい気配が黒い靄となって表れ始め、徐々に身体を侵食し始めた。
「ぐっ・・・・!」
オスカーはグッと目をつぶり、額に脂汗を滲ませている。まるでそれは必死であがなっているようにも見える。
私は悟った。これは・・・『エルトリアの呪い』に違いないと。
「オスカー様っ!しっかりして下さいっ!呪いに負けてはいけませんっ!」
その時・・バタバタバタと何人もの足音が廊下を駆けてくる音が聞こえてきた。
まさか・・・?嫌な予感がしたその瞬間、部屋のドアがけ破られ、10人前後の王級の兵士が部屋の中になだれ込んできた。
「ついに見つけたぞ・・・オスカー・ウィンザードッ!!陛下の命により貴様を反逆罪で捕らえに来たっ!おとなしくつかまれっ!」
1人、鎧姿にマントをつけた兵士が剣を構えた。恐らく兵士たちのリーダーなのかもしれない。
「ふ・・お前たちだけでこの俺をどうにか出来ると思ったのか?」
しかし、何故かオスカーは不敵な笑みを浮かべる。私には謎だった。何故このような状況でオスカーは笑っていられるのだろうか?大怪我を負っているだけでなく、武器だって持ってはいないのに・・何か勝算があるのだろうか?そして私は目の前の兵士たちの後ろに隠れるようにこちらを見ている人物に気が付いた。それはオスカーの怪我の治療をした男性だったのだ。まさか・・彼がオスカーを告発したのだろうか・・?
「フン・・・余裕だな・・・。そんな怪我を負っている身体で・・・しかも丸腰状態で俺たちにかなうと思っているのか?」
兵士は言う。
「お前たちも・・俺の事を甘く見すぎだ。俺もだいぶ見くびられたものだな・・。」
話をしている傍から、どんどんオスカーの身体は靄が濃くなっていく。
「オ・・・オスカー様っ!!」
私はたまらずオスカーにしがみついて叫ぶと、オスカーが言った。
「アイリス、しっかり俺に捕まっていろ。」
「え?」
その瞬間、オスカーは私を抱き上げると突然窓をあけて、飛び降りたのだ。
そんなっ!ここは・・・3階なのにっ!
恐怖で思わずギュッと目をつぶるも、オスカーは見事に着地した。そしてそれを見守る兵士たちは窓からこちらを見下ろしている。その誰もが驚愕の顔を浮かべている。
「逃げるぞっ!アイリスッ!」
一体オスカーのどこにそんな力が残されていたのだろうか?オスカーは私を抱きかかえたまま、ものすごい速さで駆けてゆく。そして背後に迫る追手をあっという間に引き離してしまった。
「うっ!」
狭い路地裏までオスカーは駆けてきたが、突如苦し気にうめくと、ガクリと膝を落とし、私をようやく石畳の地面におろすと、壁に寄り掛かり、そのままズルズルと地面に崩れ落ちた。
「オスカー様っ!」
私は両手でオスカーの身体に触れた。するとオスカーの思考が頭の中に流れ込んで来た―。
《 やった・・・何とかアイリスを連れて・・・・逃げる事が出来た・・・。これも皮肉な事に偶然にも呪いの力が強くなったおかげだ・・・。 》
え・・?呪いの力・・?
見ると、オスカーの身体は半分以上が黒い靄に覆われていた。
「オスカー様・・・先ほどのオスカー様は・・・尋常ではない力を発揮しておりました。一体どういう事なのですか?」
するとオスカーは荒い息をしながら私を見ると言った。
「俺たち、ウィンザード家の人間は・・・呪いの力が強くなれば・・自分の能力も強まるんだ・・。皮肉なことに・・。」
そして苦し気に笑みを浮かべた。確かにその力で私たちがあの宿屋から逃げられたが・・・。
「そんな・・でもオスカー様の身体が・・・。」
オスカーの身体は半分以上呪いに侵されている。しかし、オスカーは言った。
「そんな泣きそうな顔をするな・・アイリス・・。ここは女神像に守られた土地だ。だから俺が・・完全に呪いに侵される心配はない・・・。」
オスカーは青ざめた顔で笑みを浮かべた、その時―。
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