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第6章 15 馬車の中で
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馬車から降りてきたのは黒いフロックコートを着た若い男性だった。
「どうされのですか?」
男性は私を見ると尋ねてきた。
「はい、実は具合が悪い男性がいるのです。すぐにどこか開いている宿屋に連れて行って休ませてあげたいのですが・・・。」
私はベンチでうずくまっているオスカーをチラリと見ると言った。
「あちらの方ですか?具合が悪いと言うのは・・・。」
「は、はい・・そうです。」
私が頷くと男性は言った。
「良いでしょう。ならこの馬車に相乗りしましょう。実は私も宿に泊まっているのです。私と一緒に行って、そこの宿屋に空き部屋があるかどうか、確認してみましょう。」
男性は笑みを浮かべながら提案してきた。
「本当ですかっ?!ありがとうございますっ!」
ああ、なんてついているのだろう。馬車に乗せてもらえるだけでなく、うまくいけばそのままオスカーを宿屋に止めてあげることが出来るかもしれないのだから。
「本当にありがとうございます。あの、お名前は・・・。」
すると男性は言った。
「いえ。お互いに名乗るのはやめにしておきましょう。見たところ・・・あなた方は訳ありのように見えますし、私もある理由で身分を明かせないので。」
「そうですか・・・分かりました。」
男性の言葉はある意味助かった。今ここで私が名乗れば正体がばれてしまうことになるかもしれないのだから。
そしてそんな様子の私たちを御者はじっと見つめていたが、不意に声を掛けてきた。
「お客様。それでどうされるのですか?」
「この女性と、ベンチにいる男性を私が宿泊している宿まで乗せていくことにするよ。君も手を貸してくれ。」
「はい、分かりました。」
そして御者と男性が2人係でオスカーを支えて馬車まで運んで乗せてくれて・・・馬車は走り出した。
ガラガラと走り続ける馬車の中―
「どうもありがとうございました。」
私は隣に座る男性に声を掛けた。オスカーは向かい側の席で横たわっている。意識はまだ戻っていないようだった。
「いえ・・・あまりにもお困りのように見えたので・・・貴族のお嬢様が身体を張って馬車を止めるほどですから、よほどのことがあったと思ったからです。」
男性の言葉に私は反応した。
「何故・・・私が貴族の娘と分かったのですか・・?」
すると男性は答えた。
「そんな事は・・・貴方の服装を見ればわかります。それに言葉遣いからも・・。」
「・・・。」
何と答えればよいか分からず、思わず黙っていると男性が再び声を掛けてきた。
「あの方・・・随分酷い傷を負っていますね。治療の跡が見られましたが・・・あんな傷で動き回るのは無茶ですよ。」
「はい・・・おっしゃる通りだと思っています。」
「何があったのかは聞きませんが・・・本人に、あまり無理をしないで動き回らないように伝えた方がよいですよ?傷がひらいてしまいますから。」
「ええ・・・そうですね。伝えておきます。」
私はギュッとスカートを握り締めた。すると再び男性が口を開いた。
「宿屋に着いたら、傷の様子を診てあげます。」
「え?」
「実は・・私は軍医だったのですよ。戦争が終わり、これから故郷へ向かう旅の途中だったのです。」
「そ・・そうだったのですか?大変でしたね・・・戦争に行かれていたなんて・・ご苦労されたのですね・・。」
「ええ、確かに大変でした。でも私は内科医だったのですが、おかげで怪我の治療も上手になりましたし。」
笑みを浮かべる男性に私も微笑み返したその時、馬車が止まった。
「ああ・・・どうやら宿泊先に到着したようすね。ではあなたはここで待っていて下さい。部屋の空きが空いてるか宿で聞いてきますから。」
「すみません。何から何までありがとうございます。」
礼を述べると男性は口元に笑みを浮かべ、馬車を降りて御者台の男性に何か話しかけ・・ホテルの中へと入って行った―。
「どうされのですか?」
男性は私を見ると尋ねてきた。
「はい、実は具合が悪い男性がいるのです。すぐにどこか開いている宿屋に連れて行って休ませてあげたいのですが・・・。」
私はベンチでうずくまっているオスカーをチラリと見ると言った。
「あちらの方ですか?具合が悪いと言うのは・・・。」
「は、はい・・そうです。」
私が頷くと男性は言った。
「良いでしょう。ならこの馬車に相乗りしましょう。実は私も宿に泊まっているのです。私と一緒に行って、そこの宿屋に空き部屋があるかどうか、確認してみましょう。」
男性は笑みを浮かべながら提案してきた。
「本当ですかっ?!ありがとうございますっ!」
ああ、なんてついているのだろう。馬車に乗せてもらえるだけでなく、うまくいけばそのままオスカーを宿屋に止めてあげることが出来るかもしれないのだから。
「本当にありがとうございます。あの、お名前は・・・。」
すると男性は言った。
「いえ。お互いに名乗るのはやめにしておきましょう。見たところ・・・あなた方は訳ありのように見えますし、私もある理由で身分を明かせないので。」
「そうですか・・・分かりました。」
男性の言葉はある意味助かった。今ここで私が名乗れば正体がばれてしまうことになるかもしれないのだから。
そしてそんな様子の私たちを御者はじっと見つめていたが、不意に声を掛けてきた。
「お客様。それでどうされるのですか?」
「この女性と、ベンチにいる男性を私が宿泊している宿まで乗せていくことにするよ。君も手を貸してくれ。」
「はい、分かりました。」
そして御者と男性が2人係でオスカーを支えて馬車まで運んで乗せてくれて・・・馬車は走り出した。
ガラガラと走り続ける馬車の中―
「どうもありがとうございました。」
私は隣に座る男性に声を掛けた。オスカーは向かい側の席で横たわっている。意識はまだ戻っていないようだった。
「いえ・・・あまりにもお困りのように見えたので・・・貴族のお嬢様が身体を張って馬車を止めるほどですから、よほどのことがあったと思ったからです。」
男性の言葉に私は反応した。
「何故・・・私が貴族の娘と分かったのですか・・?」
すると男性は答えた。
「そんな事は・・・貴方の服装を見ればわかります。それに言葉遣いからも・・。」
「・・・。」
何と答えればよいか分からず、思わず黙っていると男性が再び声を掛けてきた。
「あの方・・・随分酷い傷を負っていますね。治療の跡が見られましたが・・・あんな傷で動き回るのは無茶ですよ。」
「はい・・・おっしゃる通りだと思っています。」
「何があったのかは聞きませんが・・・本人に、あまり無理をしないで動き回らないように伝えた方がよいですよ?傷がひらいてしまいますから。」
「ええ・・・そうですね。伝えておきます。」
私はギュッとスカートを握り締めた。すると再び男性が口を開いた。
「宿屋に着いたら、傷の様子を診てあげます。」
「え?」
「実は・・私は軍医だったのですよ。戦争が終わり、これから故郷へ向かう旅の途中だったのです。」
「そ・・そうだったのですか?大変でしたね・・・戦争に行かれていたなんて・・ご苦労されたのですね・・。」
「ええ、確かに大変でした。でも私は内科医だったのですが、おかげで怪我の治療も上手になりましたし。」
笑みを浮かべる男性に私も微笑み返したその時、馬車が止まった。
「ああ・・・どうやら宿泊先に到着したようすね。ではあなたはここで待っていて下さい。部屋の空きが空いてるか宿で聞いてきますから。」
「すみません。何から何までありがとうございます。」
礼を述べると男性は口元に笑みを浮かべ、馬車を降りて御者台の男性に何か話しかけ・・ホテルの中へと入って行った―。
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