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第6章 3 怪しく、光る目
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結局、この日オスカーはアカデミーには来なかった。私は昼休みはミレディーと一緒に過ごし、二度目の人生で初めてゆったりした気持ちでランチを楽しむことが出来た。
そして放課後―
馬車の待合所でイリヤ家の馬車を待っていた時の事だった。レイフとタバサが待合所に現れたのを見た私は何となく彼らと顔を合わすのが嫌で、一度校舎の中へ戻ることにした。
「ふう・・・。」
昇降口の傍でたたずんでいると、背後から声を掛けられた。
「あれ?アイリス・・?こんなところで何をしているんだ?」
振り向くとそこに立っていたのはエルンストだった。
「エルンスト・・1人なんて珍しいわね。いつもならエドワードと一緒なのに。」
「おいおい、アイリス。勘弁してくれよ・・。その言い方は・・・誤解を受ける。」
「誤解?」
「ああ、それだと俺とエドワードは交際しているように思われるじゃないか?」
大真面目に言うエルンストを見て私は噴出した。きっとエルンストは私が落ち込んでいると思って妙な事を言っているのだろう。
「アイリス・・・やっと笑ったな?お前・・・ハイスクール時代は明るい女子だったのに・・アカデミーに入学してからはずっと・・暗い顔ばかりしていたからな・・。心配していたんだぞ?」
エルンストは優しい顔で私を見つめ、髪に触れると言った。
「そう?・・・ありがとう。心配してくれて。それでエドワードは一体どこへ行ったのかしら?」
「ああ、あいつは・・・。」
そこまで言いかけた時、前方から鋭い声が上がった。
「おい!エルンストッ!」
「え?」
顔を上げると、いつの間に現れたのか、そこにはレイフが立っていた。背後にはタバサもいる。
「・・・・。」
レイフは怒りに満ちた目で私とエルンストを見ている。・・・何故だろう?どうしてそんな目で私とエルンストを睨みつけているのだろうか?
しかし・・レイフのあの視線は・・・怖い。70年前も私はあの目で睨みつけられていたのだ。
「おいおい・・・・レイフ。何故そんな目で俺達を見るんだよ。そもそもお前とアイリスは幼馴染同士だろう?アイリス・・お前を怖がって震えているぞ?」
そしてさりげなくエルンストは私の前に立ち、オスカーの視線から隠すように私の前に立った。
「エルンスト・・・。」
その時、一瞬レイフの顔が辛そうに歪むのを私は見た。
「エルンスト様。」
それまで黙って立っていたタバサが口を開いた。
「何だい?君は確か・・タバサ・オルフェンだっけ?まだ新入生なのに聖歌隊に選ばれたんだよね?」
「まあ、嬉しい。そこ迄私の事をご存じだったのですね?光栄ですわ。」
そしてさらに一歩前にタバサは進み出ると言った。
「エルンスト様。私達と一緒に帰りませんか?実はエドワード様はすでに馬車の中で待っておられるのですよ?私たちは貴方を迎えに来たのですよ。」
「・・・。」
しかし、エルンストは何を考えているのか私を振り返るとすぐに前を見た。
「いや・・俺は遠慮させてもらうよ。実は今日はアイリスと約束があるんだ。そうだろう?アイリス。」
エルンストは素早く私に目配せした。ひょっとするとエルンストは私に用事があるのかもしれない。
「え、ええ・・。そうね。エルンスト。」
「いいから、来い。エルンスト。その女は・・・放っておけ。」
レイフは冷たい瞳で私を見た。それはまるで背筋が凍りつきそうになるほどであった。
「レイフ。お前・・・。」
その時―。
突如、タバサの目が赤く変化し、一瞬光り輝くのを見た。
え・・・?!
すると・・。
何故かエルンストはフラフラと前に進み出て・・・タバサの前に跪いた―。
そして放課後―
馬車の待合所でイリヤ家の馬車を待っていた時の事だった。レイフとタバサが待合所に現れたのを見た私は何となく彼らと顔を合わすのが嫌で、一度校舎の中へ戻ることにした。
「ふう・・・。」
昇降口の傍でたたずんでいると、背後から声を掛けられた。
「あれ?アイリス・・?こんなところで何をしているんだ?」
振り向くとそこに立っていたのはエルンストだった。
「エルンスト・・1人なんて珍しいわね。いつもならエドワードと一緒なのに。」
「おいおい、アイリス。勘弁してくれよ・・。その言い方は・・・誤解を受ける。」
「誤解?」
「ああ、それだと俺とエドワードは交際しているように思われるじゃないか?」
大真面目に言うエルンストを見て私は噴出した。きっとエルンストは私が落ち込んでいると思って妙な事を言っているのだろう。
「アイリス・・・やっと笑ったな?お前・・・ハイスクール時代は明るい女子だったのに・・アカデミーに入学してからはずっと・・暗い顔ばかりしていたからな・・。心配していたんだぞ?」
エルンストは優しい顔で私を見つめ、髪に触れると言った。
「そう?・・・ありがとう。心配してくれて。それでエドワードは一体どこへ行ったのかしら?」
「ああ、あいつは・・・。」
そこまで言いかけた時、前方から鋭い声が上がった。
「おい!エルンストッ!」
「え?」
顔を上げると、いつの間に現れたのか、そこにはレイフが立っていた。背後にはタバサもいる。
「・・・・。」
レイフは怒りに満ちた目で私とエルンストを見ている。・・・何故だろう?どうしてそんな目で私とエルンストを睨みつけているのだろうか?
しかし・・レイフのあの視線は・・・怖い。70年前も私はあの目で睨みつけられていたのだ。
「おいおい・・・・レイフ。何故そんな目で俺達を見るんだよ。そもそもお前とアイリスは幼馴染同士だろう?アイリス・・お前を怖がって震えているぞ?」
そしてさりげなくエルンストは私の前に立ち、オスカーの視線から隠すように私の前に立った。
「エルンスト・・・。」
その時、一瞬レイフの顔が辛そうに歪むのを私は見た。
「エルンスト様。」
それまで黙って立っていたタバサが口を開いた。
「何だい?君は確か・・タバサ・オルフェンだっけ?まだ新入生なのに聖歌隊に選ばれたんだよね?」
「まあ、嬉しい。そこ迄私の事をご存じだったのですね?光栄ですわ。」
そしてさらに一歩前にタバサは進み出ると言った。
「エルンスト様。私達と一緒に帰りませんか?実はエドワード様はすでに馬車の中で待っておられるのですよ?私たちは貴方を迎えに来たのですよ。」
「・・・。」
しかし、エルンストは何を考えているのか私を振り返るとすぐに前を見た。
「いや・・俺は遠慮させてもらうよ。実は今日はアイリスと約束があるんだ。そうだろう?アイリス。」
エルンストは素早く私に目配せした。ひょっとするとエルンストは私に用事があるのかもしれない。
「え、ええ・・。そうね。エルンスト。」
「いいから、来い。エルンスト。その女は・・・放っておけ。」
レイフは冷たい瞳で私を見た。それはまるで背筋が凍りつきそうになるほどであった。
「レイフ。お前・・・。」
その時―。
突如、タバサの目が赤く変化し、一瞬光り輝くのを見た。
え・・・?!
すると・・。
何故かエルンストはフラフラと前に進み出て・・・タバサの前に跪いた―。
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