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第5章 6 不機嫌な2人
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オスカーは私の左腕を強くねじり上げるように掴み、足早に校舎へと歩いて行く。これではまるで傍から見ると連行されているように周囲から見られてしまう。
「あ、あの。オスカー様、腕が痛いので・・離して頂けますか?」
顔をしかめてオスカーを見上げると、彼は一度足を止めて私をじっと見つめてきた。
「痛かったか?」
オスカーの私の腕を握りしめる力が和らいだ。
「え、ええ・・・今はもう平気ですけど。」
「そうか・・・強く握りしめて悪かった。だが・・・お前の腕を離すわけには行かない。このまま教室まで行くぞ。」
「な、何故ですか・・・?方向は同じですし、わざわざ腕を掴まなくても・・・。」
「駄目だ!お前は見張っていなければレイフという男と一緒に行動する気だろう?全くあの男・・・いくらお前も幼馴染だからと言って、俺と言う婚約者がいる前でお前に・・。」
オスカーはそこまで言うと言葉を切り、私に言った。
「いいか?お前は・・俺の婚約者なんだ。他の男と親しくするな。特にあのレイフとかいう男とは・・・口も利くな。」
オスカーは滅茶苦茶な事を言ってくる。
「オスカー様。それはいくらなんでも・・・。」
私は言葉を最後まで言い終わる前に、再びオスカーは腕をつかむと歩きだした。腕の力は先程と違って強くはない。その気になれば振り払えそうな強さである。だが私はそれをしなかった。そんなことをすればどんな目に合うか分からないし、なによりオスカーの横顔がとても切羽詰まって見えたからだ。
「・・・。」
私は黙って手を引かれながら教室へと連れてこられた。
私がオスカーに腕を掴まれたまま教室へ入ると、学生たちからざわめきが起きた。
「あ、あの・・・オスカー様。もう教室についたので・・手を離して頂けますか?」
遠慮がちにオスカーに訴えると、少しの間黙ってオスカーは私を見て・・その手を離した。そして言った。
「昼休み、一緒に食事に行くからな。・・・他の奴らとは行くな。」
それは有無を言わさない強い口調だった。
「はい・・・分かりました・・。」
小さく頷くと、オスカーは自分の席へと向かう。ようやく緊張の糸が切れた私は溜息をつくと、自分の席へと向かった。
「おはようございます。アイリス様。」
カバンを持って席に座ると隣の席のミレディが声を掛けてきた。
「おはようございます、ミレディ様。」
笑顔で挨拶を返すとミレディが心配そうな表情を顔に浮かべると言った。
「大丈夫でしたか?アイリス様。おとといの昼休みからオスカー様と姿が見えなくなり、昨日はお2人ともアカデミーをお休みされましたよね?そして今はオスカー様と一緒に教室へいらっしゃいましたが・・・。」
そしてチラリと窓際の席に座るオスカーを見た。彼は今頬杖を突き、窓の外を眺めている。
「何だか・・・今朝もオスカー様・・かなりイラついているようにみえたので・・・。」
ミレディーが小声でささやいてくる。
「え、ええ・・・そうなんです。今朝は私を家まで迎えに来てくださったのですが、何故かオスカー様の機嫌があまりよくないようで・・。おとといはオスカー様とお昼をご一緒させていただいた時に私が気分が悪くなってしまって、倒れてしまったんです。そこをオスカー様が私の家へ連れ帰って来てくださったのです。昨日は具合が悪くてアカデミーを欠席してしまいました。でもオスカー様も欠席されていたのですね?」
ミレディーにいらぬ心配を掛けさせたくなかった私は肝心な部分は端折って説明した。
「まあ、そうだったのですね。」
私とミレディーがそこまで話した時、背後から声がかかった。
「アイリス。」
振り向くとそこには不機嫌そうなレイフが立っていた―。
「あ、あの。オスカー様、腕が痛いので・・離して頂けますか?」
顔をしかめてオスカーを見上げると、彼は一度足を止めて私をじっと見つめてきた。
「痛かったか?」
オスカーの私の腕を握りしめる力が和らいだ。
「え、ええ・・・今はもう平気ですけど。」
「そうか・・・強く握りしめて悪かった。だが・・・お前の腕を離すわけには行かない。このまま教室まで行くぞ。」
「な、何故ですか・・・?方向は同じですし、わざわざ腕を掴まなくても・・・。」
「駄目だ!お前は見張っていなければレイフという男と一緒に行動する気だろう?全くあの男・・・いくらお前も幼馴染だからと言って、俺と言う婚約者がいる前でお前に・・。」
オスカーはそこまで言うと言葉を切り、私に言った。
「いいか?お前は・・俺の婚約者なんだ。他の男と親しくするな。特にあのレイフとかいう男とは・・・口も利くな。」
オスカーは滅茶苦茶な事を言ってくる。
「オスカー様。それはいくらなんでも・・・。」
私は言葉を最後まで言い終わる前に、再びオスカーは腕をつかむと歩きだした。腕の力は先程と違って強くはない。その気になれば振り払えそうな強さである。だが私はそれをしなかった。そんなことをすればどんな目に合うか分からないし、なによりオスカーの横顔がとても切羽詰まって見えたからだ。
「・・・。」
私は黙って手を引かれながら教室へと連れてこられた。
私がオスカーに腕を掴まれたまま教室へ入ると、学生たちからざわめきが起きた。
「あ、あの・・・オスカー様。もう教室についたので・・手を離して頂けますか?」
遠慮がちにオスカーに訴えると、少しの間黙ってオスカーは私を見て・・その手を離した。そして言った。
「昼休み、一緒に食事に行くからな。・・・他の奴らとは行くな。」
それは有無を言わさない強い口調だった。
「はい・・・分かりました・・。」
小さく頷くと、オスカーは自分の席へと向かう。ようやく緊張の糸が切れた私は溜息をつくと、自分の席へと向かった。
「おはようございます。アイリス様。」
カバンを持って席に座ると隣の席のミレディが声を掛けてきた。
「おはようございます、ミレディ様。」
笑顔で挨拶を返すとミレディが心配そうな表情を顔に浮かべると言った。
「大丈夫でしたか?アイリス様。おとといの昼休みからオスカー様と姿が見えなくなり、昨日はお2人ともアカデミーをお休みされましたよね?そして今はオスカー様と一緒に教室へいらっしゃいましたが・・・。」
そしてチラリと窓際の席に座るオスカーを見た。彼は今頬杖を突き、窓の外を眺めている。
「何だか・・・今朝もオスカー様・・かなりイラついているようにみえたので・・・。」
ミレディーが小声でささやいてくる。
「え、ええ・・・そうなんです。今朝は私を家まで迎えに来てくださったのですが、何故かオスカー様の機嫌があまりよくないようで・・。おとといはオスカー様とお昼をご一緒させていただいた時に私が気分が悪くなってしまって、倒れてしまったんです。そこをオスカー様が私の家へ連れ帰って来てくださったのです。昨日は具合が悪くてアカデミーを欠席してしまいました。でもオスカー様も欠席されていたのですね?」
ミレディーにいらぬ心配を掛けさせたくなかった私は肝心な部分は端折って説明した。
「まあ、そうだったのですね。」
私とミレディーがそこまで話した時、背後から声がかかった。
「アイリス。」
振り向くとそこには不機嫌そうなレイフが立っていた―。
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