タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
66 / 152

第5章 6 不機嫌な2人

しおりを挟む
 オスカーは私の左腕を強くねじり上げるように掴み、足早に校舎へと歩いて行く。これではまるで傍から見ると連行されているように周囲から見られてしまう。

「あ、あの。オスカー様、腕が痛いので・・離して頂けますか?」

顔をしかめてオスカーを見上げると、彼は一度足を止めて私をじっと見つめてきた。

「痛かったか?」

オスカーの私の腕を握りしめる力が和らいだ。

「え、ええ・・・今はもう平気ですけど。」

「そうか・・・強く握りしめて悪かった。だが・・・お前の腕を離すわけには行かない。このまま教室まで行くぞ。」

「な、何故ですか・・・?方向は同じですし、わざわざ腕を掴まなくても・・・。」

「駄目だ!お前は見張っていなければレイフという男と一緒に行動する気だろう?全くあの男・・・いくらお前も幼馴染だからと言って、俺と言う婚約者がいる前でお前に・・。」

オスカーはそこまで言うと言葉を切り、私に言った。

「いいか?お前は・・俺の婚約者なんだ。他の男と親しくするな。特にあのレイフとかいう男とは・・・口も利くな。」

オスカーは滅茶苦茶な事を言ってくる。

「オスカー様。それはいくらなんでも・・・。」

私は言葉を最後まで言い終わる前に、再びオスカーは腕をつかむと歩きだした。腕の力は先程と違って強くはない。その気になれば振り払えそうな強さである。だが私はそれをしなかった。そんなことをすればどんな目に合うか分からないし、なによりオスカーの横顔がとても切羽詰まって見えたからだ。

「・・・。」

私は黙って手を引かれながら教室へと連れてこられた。


 私がオスカーに腕を掴まれたまま教室へ入ると、学生たちからざわめきが起きた。

「あ、あの・・・オスカー様。もう教室についたので・・手を離して頂けますか?」

遠慮がちにオスカーに訴えると、少しの間黙ってオスカーは私を見て・・その手を離した。そして言った。

「昼休み、一緒に食事に行くからな。・・・他の奴らとは行くな。」

それは有無を言わさない強い口調だった。

「はい・・・分かりました・・。」

小さく頷くと、オスカーは自分の席へと向かう。ようやく緊張の糸が切れた私は溜息をつくと、自分の席へと向かった。


「おはようございます。アイリス様。」

カバンを持って席に座ると隣の席のミレディが声を掛けてきた。

「おはようございます、ミレディ様。」

笑顔で挨拶を返すとミレディが心配そうな表情を顔に浮かべると言った。

「大丈夫でしたか?アイリス様。おとといの昼休みからオスカー様と姿が見えなくなり、昨日はお2人ともアカデミーをお休みされましたよね?そして今はオスカー様と一緒に教室へいらっしゃいましたが・・・。」

そしてチラリと窓際の席に座るオスカーを見た。彼は今頬杖を突き、窓の外を眺めている。

「何だか・・・今朝もオスカー様・・かなりイラついているようにみえたので・・・。」

ミレディーが小声でささやいてくる。

「え、ええ・・・そうなんです。今朝は私を家まで迎えに来てくださったのですが、何故かオスカー様の機嫌があまりよくないようで・・。おとといはオスカー様とお昼をご一緒させていただいた時に私が気分が悪くなってしまって、倒れてしまったんです。そこをオスカー様が私の家へ連れ帰って来てくださったのです。昨日は具合が悪くてアカデミーを欠席してしまいました。でもオスカー様も欠席されていたのですね?」


ミレディーにいらぬ心配を掛けさせたくなかった私は肝心な部分は端折って説明した。

「まあ、そうだったのですね。」

私とミレディーがそこまで話した時、背後から声がかかった。

「アイリス。」

振り向くとそこには不機嫌そうなレイフが立っていた―。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、猛省中!!

***あかしえ
恋愛
「君との婚約は破棄させてもらう!」 ――この国の王妃となるべく、幼少の頃から悪事に悪事を重ねてきた公爵令嬢ミーシャは、狂おしいまでに愛していた己の婚約者である第二王子に、全ての罪を暴かれ断頭台へと送られてしまう。 処刑される寸前――己の前世とこの世界が少女漫画の世界であることを思い出すが、全ては遅すぎた。 今度生まれ変わるなら、ミーシャ以外のなにかがいい……と思っていたのに、気付いたら幼少期へと時間が巻き戻っていた!? 己の罪を悔い、今度こそ善行を積み、彼らとは関わらず静かにひっそりと生きていこうと決意を新たにしていた彼女の下に現れたのは……?! 襲い来るかもしれないシナリオの強制力、叶わない恋、 誰からも愛されるあの子に対する狂い出しそうな程の憎しみへの恐怖、  誰にもきっと分からない……でも、これの全ては自業自得。 今度こそ、私は私が傷つけてきた全ての人々を…………救うために頑張ります!

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

こな
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

元カレの今カノは聖女様

abang
恋愛
「イブリア……私と別れて欲しい」 公爵令嬢 イブリア・バロウズは聖女と王太子の愛を妨げる悪女で社交界の嫌われ者。 婚約者である王太子 ルシアン・ランベールの関心は、品行方正、心優しく美人で慈悲深い聖女、セリエ・ジェスランに奪われ王太子ルシアンはついにイブリアに別れを切り出す。 極め付けには、王妃から嫉妬に狂うただの公爵令嬢よりも、聖女が婚約者に適任だと「ルシアンと別れて頂戴」と多額の手切れ金。 社交会では嫉妬に狂った憐れな令嬢に"仕立てあげられ"周りの人間はどんどんと距離を取っていくばかり。 けれども当の本人は… 「悲しいけれど、過ぎればもう過去のことよ」 と、噂とは違いあっさりとした様子のイブリア。 それどころか自由を謳歌する彼女はとても楽しげな様子。 そんなイブリアの態度がルシアンは何故か気に入らない様子で… 更には婚約破棄されたイブリアの婚約者の座を狙う王太子の側近達。 「私をあんなにも嫌っていた、聖女様の取り巻き達が一体私に何の用事があって絡むの!?嫌がらせかしら……!」

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

気付けば名も知らぬ悪役令嬢に憑依して、見知らぬヒロインに手をあげていました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
私が憑依した身体の持ちは不幸のどん底に置かれた悪役令嬢でした ある日、妹の部屋で見つけた不思議な指輪。その指輪をはめた途端、私は見知らぬ少女の前に立っていた。目の前には赤く腫れた頬で涙ぐみ、こちらをじっと見つめる可憐な美少女。そして何故か右手の平が痛む私。もしかして・・今私、この少女を引っ叩いたの?!そして何故か頭の中で響き渡る謎の声の人物と心と体を共存することになってしまう。憑依した身体の持ち主はいじめられっ娘の上に悪役令嬢のポジションに置かれている。見るに見かねた私は彼女を幸せにする為、そして自分の快適な生活を手に入れる為に自ら身体を張って奮闘する事にした―。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。 瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。 そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。 その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。 そして……。 本編全79話 番外編全34話 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜

みおな
恋愛
 公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。  当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。  どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・

処理中です...