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第5章 2 3人目のオスカー
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オスカーは私を見ると大股でズカズカと近づいてくる。あの雰囲気は・・・昨日のオスカーとは違う・・っ!直感的に私は悟った。だけど昨日聞いた話ではこの都市は女神像で守られているので『エルトリアの呪い』に侵されたオスカーは不可侵だと聞かされていたのに・・?
するとレイフは無言で私の前に立ち塞がった。まるで私をオスカーから隠すかのように。
「何だ?お前は・・・そこをどけ。俺はアイリスに用があるのだ。彼女は俺の婚約者だからな。」
すると、あろうことかレイフはいずれこれから主君となるオスカーに向って、とんでも無いことを言った。
「婚約者と言っても、まだ『仮』婚約ではありませんか?いつでもイリヤ家から申し出があれば解消できると聞いていますが?」
「な・・何だって・・・?!」
オスカーは怒りで顔を赤く染めると、いきなり腰から短刀を引き抜き、ピタリとレイフの首筋にあてた。
「・・・・。」
しかし、レイフは顔色一つ変えずにオスカーと対峙している。
「貴様・・死にたいのか・・?」
「死ぬつもりはありません。命を懸けてもアイリスを守りぬくつもりです。今・・俺が守るべき存在は、アイリスであり・・・オスカー王子・・貴方ではありませんから。」
「な・・何だと・・・。」
オスカーは短刀を押し付けたのか、レイフの首筋から一筋の血が垂れてくるのが見えた。レイフ・・・ッ!!
「やめて下さいっ!」
気づけば私は叫んでいた。
「ア・・アイリス・・?」
レイフは私を横目でチラリと見た。
「お願いです、オスカー様。どうか・・どうかレイフを傷つけないで下さいっ!」
レイフの前に回り込むとオスカーの正面に立ち、両手を広げた。70年前は私の事を裏切ったレイフだけども、今は身を挺して私を庇おうとした。だから、今度は私が・・・。
「アイリス様っ!」
兵士たちはこの様子を見て騒ぐが、相手がオスカーなので手出しできずにいた。
「アイリスッ?何をしている。そこをどけっ!」
レイフが背後で叫ぶが、私はどくつもりはない。するとオスカーはレイフに言う。
「おい、貴様・・・。俺の婚約者に向ってなんて口を叩くんだ?」
「ですから・・・まだ『仮婚約』と申し上げていますよね?オスカー王子。」
「な・・生意気な・・っ!」
「オスカー様っ!」
私はついに我慢できず、右手でオスカーの身体に触れた。するとオスカーの思考がたちまち私に中に流れ込んでくる―。
< 何なんだ・・?せっかくお前を迎えにやってきたのに、門前払いをされる上、幼馴染だか何だか知らんが、アイリスになれなれしい態度を取るなど・・・!俺がどれだけお前を思っているのか分からないのかっ?!お前だけなのに・・・俺にはお前だけしかいないのに・・っ! >
「!」
私は驚いて顔をあげてオスカーを見た。オスカーの顔は苦し気で・・どこか悲し気に見える。
違う・・この人物は・・昨日のオスカーとは違う・・。では3人目のオスカー・・?
指輪のおかげか、不思議な事に私は瞬時に見分けがついたのだ。おそらくこの3人目のオスカーは呪いに置かされてはいるものの、その呪いはわずかなのだ。
思考を読んだおかげで、私はオスカーに何と声を掛ければよいか、もう分かる。
「オスカー様。私を迎えに来て下さったのですね?お気遣い頂き、誠にありがとうございます。」
笑みを浮かべて私は頭を下げた。
「アイリス・・・。」
途端にオスカーの雰囲気が柔らかいものになる。
「オスカー様。それではご一緒にアカデミーへまいりましょう。レイフの同伴もどうかお許し下さい。彼は私の体調を心配し、本日わざわざ来てくれたのです。」
レイフの方を見ながら言う。
「お、おい!アイリス・・・ッ!」
レイフが戸惑いの表情を浮かべる。
「フン・・・まあいい。同伴を許そう。」
オスカーは腕組みしながら言う。
「ありがとうございます、オスカー様。」
どうやら・・・私はこの場をうまく収めることが出来たようだ―。
するとレイフは無言で私の前に立ち塞がった。まるで私をオスカーから隠すかのように。
「何だ?お前は・・・そこをどけ。俺はアイリスに用があるのだ。彼女は俺の婚約者だからな。」
すると、あろうことかレイフはいずれこれから主君となるオスカーに向って、とんでも無いことを言った。
「婚約者と言っても、まだ『仮』婚約ではありませんか?いつでもイリヤ家から申し出があれば解消できると聞いていますが?」
「な・・何だって・・・?!」
オスカーは怒りで顔を赤く染めると、いきなり腰から短刀を引き抜き、ピタリとレイフの首筋にあてた。
「・・・・。」
しかし、レイフは顔色一つ変えずにオスカーと対峙している。
「貴様・・死にたいのか・・?」
「死ぬつもりはありません。命を懸けてもアイリスを守りぬくつもりです。今・・俺が守るべき存在は、アイリスであり・・・オスカー王子・・貴方ではありませんから。」
「な・・何だと・・・。」
オスカーは短刀を押し付けたのか、レイフの首筋から一筋の血が垂れてくるのが見えた。レイフ・・・ッ!!
「やめて下さいっ!」
気づけば私は叫んでいた。
「ア・・アイリス・・?」
レイフは私を横目でチラリと見た。
「お願いです、オスカー様。どうか・・どうかレイフを傷つけないで下さいっ!」
レイフの前に回り込むとオスカーの正面に立ち、両手を広げた。70年前は私の事を裏切ったレイフだけども、今は身を挺して私を庇おうとした。だから、今度は私が・・・。
「アイリス様っ!」
兵士たちはこの様子を見て騒ぐが、相手がオスカーなので手出しできずにいた。
「アイリスッ?何をしている。そこをどけっ!」
レイフが背後で叫ぶが、私はどくつもりはない。するとオスカーはレイフに言う。
「おい、貴様・・・。俺の婚約者に向ってなんて口を叩くんだ?」
「ですから・・・まだ『仮婚約』と申し上げていますよね?オスカー王子。」
「な・・生意気な・・っ!」
「オスカー様っ!」
私はついに我慢できず、右手でオスカーの身体に触れた。するとオスカーの思考がたちまち私に中に流れ込んでくる―。
< 何なんだ・・?せっかくお前を迎えにやってきたのに、門前払いをされる上、幼馴染だか何だか知らんが、アイリスになれなれしい態度を取るなど・・・!俺がどれだけお前を思っているのか分からないのかっ?!お前だけなのに・・・俺にはお前だけしかいないのに・・っ! >
「!」
私は驚いて顔をあげてオスカーを見た。オスカーの顔は苦し気で・・どこか悲し気に見える。
違う・・この人物は・・昨日のオスカーとは違う・・。では3人目のオスカー・・?
指輪のおかげか、不思議な事に私は瞬時に見分けがついたのだ。おそらくこの3人目のオスカーは呪いに置かされてはいるものの、その呪いはわずかなのだ。
思考を読んだおかげで、私はオスカーに何と声を掛ければよいか、もう分かる。
「オスカー様。私を迎えに来て下さったのですね?お気遣い頂き、誠にありがとうございます。」
笑みを浮かべて私は頭を下げた。
「アイリス・・・。」
途端にオスカーの雰囲気が柔らかいものになる。
「オスカー様。それではご一緒にアカデミーへまいりましょう。レイフの同伴もどうかお許し下さい。彼は私の体調を心配し、本日わざわざ来てくれたのです。」
レイフの方を見ながら言う。
「お、おい!アイリス・・・ッ!」
レイフが戸惑いの表情を浮かべる。
「フン・・・まあいい。同伴を許そう。」
オスカーは腕組みしながら言う。
「ありがとうございます、オスカー様。」
どうやら・・・私はこの場をうまく収めることが出来たようだ―。
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