58 / 152
第4章 11 オスカーの本心
しおりを挟む
その時、油断していた私の頭の中にオスカーの思考が流れ込んできた。
< アイリス・・俺はお前が愛おしい。ずっと・・お前に恋していた。お前は・・この俺をどう思ってくれている?赤毛の俺を恐れていないのだろうか?誰か愛する男でもいるのか?あのレイフとかいう男は・・・お前の何なのだ・・? >
オスカーの本心を知って、私は思わず頬がカッと熱くなってしまった。前世の世界を引きずっている私はどうしてもオスカーの事が信用出来ずにいた。けれど、今目の前にいるオスカーは・・・私の事を愛しているんだ・・・。
「アイリス・・?どうした・・?」
オスカーは私に心を読まれているのを知らないので平然としているが、オスカーの気持ちを知ってしまった私は平常心ではいられらなかった。
「い、いえ・・・何でもありません。」
赤い顔をしている私に気づいたオスカーは優し気にフッと笑うと言った。
「アイリス、急ごう。お前の両親にはもう伝令でお前の無事を知らせてあるが一刻も早く会いたがっているはずだからな。」
そして私たちは再びイリヤ家の城を目指した―。
「アイリスッ!」
城へ着くと正面口のホールの真正面に続く階段から真っ先に駆け下りてきたのは母だった。母はドレスの裾をたくし上げながら私に走り寄ってくる。その顔は今にも泣きそうだった。その後ろには父がいる。
「お母様っ!」
私も駆け寄ると母は私をかき抱くようにしっかりと抱きしめた。
「アイリス・・・私のアイリス・・・良かった・・・無事に戻ってきてくれて・・・。」
そしてすすり泣いた。母の熱い涙が私の肩先を濡らす。ああ、私はこんなにも母に愛されている。70年前・・私が捕らえられた時、母は一体どんな気持ちだったのだろう?
「お母様・・・・。」
私も強く母を抱きしめ返した。
「アイリス・・・。私にもお前の顔を見せてくれるかい?」
背後で父の声が聞こえた。振り向くとそこには酷くやつれた様子の父の姿があった。
「お父様・・・。」
私は母からそっと離れて父の顔を見た。
「アイリス・・。お前の事をどれだけ心配したことか・・・。 」
そして父も私を強く抱きしめると言った。
「お前がフリードリッヒ3世に囚われた話はオスカー様の伝令で知った。だが・・・助けに行きたくても下手に動くことが出来なかったのだ。何故なら相手は王族。兵を動かそうものなら反逆罪に問われる。オスカー王子が約束してくれたのだ。必ずお前を私たちの元へ連れ帰ってくるので待っていてほしいと・・・!」
え・・?
「オスカー様が・・?」
私はその言葉に顔を上げて父の肩越しにオスカーを見た。オスカーは私達親子から少し離れた場所に立ち、じっと私の事を見つめていた。
「それでは無事にアイリスを城へ連れて帰る事が出来たので・・・俺はこれで失礼しる。」
オスカーは頭を下げるとエントランスから出て行った。駄目・・・!このまま彼を行かせては・・っ!そう思った私は父の腕をすり抜けるとオスカーの後を追った。
「待ちなさいっ!アイリスッ!どこへ行くっ?!」
「アイリスッ!」
背後では父と母の私を呼ぶ声が聞こえたが、今はその呼びかけに答えず、私は必死でオスカーの後を追った。
「ま・・待ってくださっ!オスカー様っ!」
オスカーはもう扉の外に出ていた。イリヤ家の城の門に続くアプローチを歩く後姿を私は追った。
「オスカー様っ!」
「アイリス?」
追いすがる私の声にようやく気付いたのか、オスカーは振り向いた。その矢先に私は誤ってドレスの裾を踏みつけてしまい、前のめりに倒れそうになる。
「キャッ!」
「危ないっ!」
オスカーは駆け寄り、私を抱きとめた。
「あ・・・ありがとうございます・・。」
顔をあげてオスカーを見上げると、彼の顔は一瞬苦し気にゆがみ・・次の瞬間、私は強く抱きしめられていた―。
< アイリス・・俺はお前が愛おしい。ずっと・・お前に恋していた。お前は・・この俺をどう思ってくれている?赤毛の俺を恐れていないのだろうか?誰か愛する男でもいるのか?あのレイフとかいう男は・・・お前の何なのだ・・? >
オスカーの本心を知って、私は思わず頬がカッと熱くなってしまった。前世の世界を引きずっている私はどうしてもオスカーの事が信用出来ずにいた。けれど、今目の前にいるオスカーは・・・私の事を愛しているんだ・・・。
「アイリス・・?どうした・・?」
オスカーは私に心を読まれているのを知らないので平然としているが、オスカーの気持ちを知ってしまった私は平常心ではいられらなかった。
「い、いえ・・・何でもありません。」
赤い顔をしている私に気づいたオスカーは優し気にフッと笑うと言った。
「アイリス、急ごう。お前の両親にはもう伝令でお前の無事を知らせてあるが一刻も早く会いたがっているはずだからな。」
そして私たちは再びイリヤ家の城を目指した―。
「アイリスッ!」
城へ着くと正面口のホールの真正面に続く階段から真っ先に駆け下りてきたのは母だった。母はドレスの裾をたくし上げながら私に走り寄ってくる。その顔は今にも泣きそうだった。その後ろには父がいる。
「お母様っ!」
私も駆け寄ると母は私をかき抱くようにしっかりと抱きしめた。
「アイリス・・・私のアイリス・・・良かった・・・無事に戻ってきてくれて・・・。」
そしてすすり泣いた。母の熱い涙が私の肩先を濡らす。ああ、私はこんなにも母に愛されている。70年前・・私が捕らえられた時、母は一体どんな気持ちだったのだろう?
「お母様・・・・。」
私も強く母を抱きしめ返した。
「アイリス・・・。私にもお前の顔を見せてくれるかい?」
背後で父の声が聞こえた。振り向くとそこには酷くやつれた様子の父の姿があった。
「お父様・・・。」
私は母からそっと離れて父の顔を見た。
「アイリス・・。お前の事をどれだけ心配したことか・・・。 」
そして父も私を強く抱きしめると言った。
「お前がフリードリッヒ3世に囚われた話はオスカー様の伝令で知った。だが・・・助けに行きたくても下手に動くことが出来なかったのだ。何故なら相手は王族。兵を動かそうものなら反逆罪に問われる。オスカー王子が約束してくれたのだ。必ずお前を私たちの元へ連れ帰ってくるので待っていてほしいと・・・!」
え・・?
「オスカー様が・・?」
私はその言葉に顔を上げて父の肩越しにオスカーを見た。オスカーは私達親子から少し離れた場所に立ち、じっと私の事を見つめていた。
「それでは無事にアイリスを城へ連れて帰る事が出来たので・・・俺はこれで失礼しる。」
オスカーは頭を下げるとエントランスから出て行った。駄目・・・!このまま彼を行かせては・・っ!そう思った私は父の腕をすり抜けるとオスカーの後を追った。
「待ちなさいっ!アイリスッ!どこへ行くっ?!」
「アイリスッ!」
背後では父と母の私を呼ぶ声が聞こえたが、今はその呼びかけに答えず、私は必死でオスカーの後を追った。
「ま・・待ってくださっ!オスカー様っ!」
オスカーはもう扉の外に出ていた。イリヤ家の城の門に続くアプローチを歩く後姿を私は追った。
「オスカー様っ!」
「アイリス?」
追いすがる私の声にようやく気付いたのか、オスカーは振り向いた。その矢先に私は誤ってドレスの裾を踏みつけてしまい、前のめりに倒れそうになる。
「キャッ!」
「危ないっ!」
オスカーは駆け寄り、私を抱きとめた。
「あ・・・ありがとうございます・・。」
顔をあげてオスカーを見上げると、彼の顔は一瞬苦し気にゆがみ・・次の瞬間、私は強く抱きしめられていた―。
24
お気に入りに追加
587
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜
みおな
恋愛
公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。
当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。
どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・

【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆

この婚約は白い結婚に繋がっていたはずですが? 〜深窓の令嬢は赤獅子騎士団長に溺愛される〜
氷雨そら
恋愛
婚約相手のいない婚約式。
通常であれば、この上なく惨めであろうその場所に、辺境伯令嬢ルナシェは、美しいベールをなびかせて、毅然とした姿で立っていた。
ベールから、こぼれ落ちるような髪は白銀にも見える。プラチナブロンドが、日差しに輝いて神々しい。
さすがは、白薔薇姫との呼び名高い辺境伯令嬢だという周囲の感嘆。
けれど、ルナシェの内心は、実はそれどころではなかった。
(まさかのやり直し……?)
先ほど確かに、ルナシェは断頭台に露と消えたのだ。しかし、この場所は確かに、あの日経験した、たった一人の婚約式だった。
ルナシェは、人生を変えるため、婚約式に現れなかった婚約者に、婚約破棄を告げるため、激戦の地へと足を向けるのだった。
小説家になろう様にも投稿しています。
森に捨てられた令嬢、本当の幸せを見つけました。
玖保ひかる
恋愛
[完結]
北の大国ナバランドの貴族、ヴァンダーウォール伯爵家の令嬢アリステルは、継母に冷遇され一人別棟で生活していた。
ある日、継母から仲直りをしたいとお茶会に誘われ、勧められたお茶を口にしたところ意識を失ってしまう。
アリステルが目を覚ましたのは、魔の森と人々が恐れる深い森の中。
森に捨てられてしまったのだ。
南の隣国を目指して歩き出したアリステル。腕利きの冒険者レオンと出会い、新天地での新しい人生を始めるのだが…。
苦難を乗り越えて、愛する人と本当の幸せを見つける物語。
※小説家になろうで公開した作品を改編した物です。
※完結しました。
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに自分の恋も叶えちゃいます!
MEIKO
恋愛
最近まで死の病に冒されていたランドン伯爵家令嬢のアリシア。十六歳になったのを機に、胸をときめかせながら帝都学園にやって来た。「病も克服したし、今日からドキドキワクワクの学園生活が始まるんだわ!」そう思いながら一歩踏み入れた瞬間浮かれ過ぎてコケた。その時、突然奇妙な記憶が呼び醒まされる。見たこともない子爵家の令嬢ルーシーが、学園に通う見目麗しい男性達との恋模様を繰り広げる乙女ゲームの場面が、次から次へと思い浮かぶ。この記憶って、もしかして前世?かつての自分は、日本人の女子高生だったことを思い出す。そして目の前で転んでしまった私を心配そうに見つめる美しい令嬢キャロラインは、断罪される側の人間なのだと気付く…。「こんな見た目も心も綺麗な方が、そんな目に遭っていいいわけ!?」おまけに婚約者までもがヒロインに懸想していて、自分に見向きもしない。そう愕然としたアリシアは、自らキャロライン嬢の取り巻きAとなり、断罪を阻止し婚約者の目を覚まさせようと暗躍することを決める。ヒロインのヤロウ…赦すまじ!
笑って泣けるラブコメディです。この作品のアイデアが浮かんだ時、男女の恋愛以外には考えられず、BLじゃない物語は初挑戦です。貴族的表現を取り入れていますが、あくまで違う世界です。おかしいところもあるかと思いますが、ご了承下さいね。

ある日突然、醜いと有名な次期公爵様と結婚させられることになりました
八代奏多
恋愛
クライシス伯爵令嬢のアレシアはアルバラン公爵令息のクラウスに嫁ぐことが決まった。
両家の友好のための婚姻と言えば聞こえはいいが、実際は義母や義妹そして実の父から追い出されただけだった。
おまけに、クラウスは性格までもが醜いと噂されている。
でもいいんです。義母や義妹たちからいじめられる地獄のような日々から解放されるのだから!
そう思っていたけれど、噂は事実ではなくて……
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる