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第3章 15 フリードリッヒ3世との謁見
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「陛下は・・・・この奥のお部屋におられます。」
何処までも真っすぐに続く広々とした長い廊下には重厚そうな濃紺のカーペットが敷かれいてる。この廊下にも窓はなく、明かりは両脇の壁に等間隔で取り付けらた壁掛けのランタンのみである。
外の景色が見えない為今の時刻が何時なのかさっぱり分からない。私がカフェテリアで気を失ってから、どのくらいの時が流れたのだろうか・・・?数時間?それとも丸1日・・・?私が帰宅しないのを両親は心配しているに違いない・・・。
「あ、あの・・・。」
私は前方を歩くメイド長に声を掛けた。
「はい、何でしょうか?」
「今・・・何時でしょうか?」
「午前5時でございます。夜明けまでは後45分です。」
「えっ?!」
ま、まさか・・。明け方の午前5時だったとは・・・。
「随分・・陛下は早起きなのですね・・?」
夜明け前に起きているとは・・余程普段から公務が忙しいのだろうか?
「普段ならまだお休みになっておられるお時間ではございますが・・・本日は特別です。何故なら・・・アイリス・イリヤ様・・・貴女がこちらの宮殿におられるのですから。」
何故か意味深な言葉を言うメイド長に、ますます私は背筋が寒くなるのを感じた。だけど・・ここで怯んではいけない。何としても・・・オスカーを助け出す方法を聞きださなくては・・!
やがて、メイド長はピタリと足を止めた。
「こちらのお部屋に・・・陛下はおられます。」
その扉は先ほどのオスカーの部屋の扉と同じ作りをしていたが・・驚くのはその扉の大きさだ。先程の扉に比べて格段に大きさが違う。
「では、アイリス・イリヤ様・・・私はここで失礼致します。」
メイド長は頭を下げると、クルリと背を向け去って行く。私はその後ろ姿を見て思った。そんな・・・ここから先は・・・私一人で行かなければならないなんて・・・。確かに先程のメイド長は、私の中では信頼するに置けない人物ではあるが・・・それでもあのフリードリッヒ3世と2人きりで会うよりはマシだろうと思っていたのに・・。
だけど、ここまで来てはもう引き返せない。あのままでは恐らくオスカーは呪いに侵されて・・・死んでしまうだろう。
私は深呼吸をすると、扉についているドアノッカーを掴むと、ドアをノックした。
コンコン
すると扉の奥から声が聞こえた。
「入りたまえ。」
「失礼致します・・・・。」
思わず声が震えるのを何とか抑えながら、私はゆっくり扉を開けた。
キイイイ・・・・。
中へ入ると、広々とした部屋の光景が目に飛び込んできた。その部屋は明かりが無い為、薄暗い。唯一の明かりは大きな窓からさす月明かりのみである。
この部屋には大きな掃き出し窓が2か所あり、奥はテラスへ続くバルコニーが見える。分厚いカーテンは開けられているが、レースのカーテンは閉められている。そしてバルコニーの奥に広がるのは鬱蒼とした森の木々。空は少しずつ明るくなってはきているが、まだ夜明けには至っていない。
フリードリッヒ3世は窓の方を向き、こちらに背を向ける姿で立っていた。そして彼はそのままの姿勢で私に言った。
「アイリス・イリヤよ・・・この部屋には絵画が並んでいるのだが・・気が付いたか?」
「え・・?絵画・・・?」
「そう・・・絵画と言っても肖像画だがな・・。」
肖像画・・・?徐々に薄暗い部屋に目が慣れてきた私はようやく壁に掛けてある肖像画に気が付いた。絵画は壁の至る所に掛けてあった。
「・・・・。」
私はその中の1枚の絵画に近付き、絵を覗きこんだ。
「・・・っ!!」
その肖像画を見た時、思わず悲鳴をあげそうになり咄嗟に両手で口を押えた。そんな馬鹿な・・・。
そこに飾られていた肖像画は・・・私だったのだ。いや、この絵だけではない。壁一万に添えられた絵画は全て・・私の肖像画だったのである。
「どうだ?アイリス・イリヤ。ここに飾られている肖像画・・気に入ったか?」
そしてこちらを振り向いたのは・・・オスカーだった―。
何処までも真っすぐに続く広々とした長い廊下には重厚そうな濃紺のカーペットが敷かれいてる。この廊下にも窓はなく、明かりは両脇の壁に等間隔で取り付けらた壁掛けのランタンのみである。
外の景色が見えない為今の時刻が何時なのかさっぱり分からない。私がカフェテリアで気を失ってから、どのくらいの時が流れたのだろうか・・・?数時間?それとも丸1日・・・?私が帰宅しないのを両親は心配しているに違いない・・・。
「あ、あの・・・。」
私は前方を歩くメイド長に声を掛けた。
「はい、何でしょうか?」
「今・・・何時でしょうか?」
「午前5時でございます。夜明けまでは後45分です。」
「えっ?!」
ま、まさか・・。明け方の午前5時だったとは・・・。
「随分・・陛下は早起きなのですね・・?」
夜明け前に起きているとは・・余程普段から公務が忙しいのだろうか?
「普段ならまだお休みになっておられるお時間ではございますが・・・本日は特別です。何故なら・・・アイリス・イリヤ様・・・貴女がこちらの宮殿におられるのですから。」
何故か意味深な言葉を言うメイド長に、ますます私は背筋が寒くなるのを感じた。だけど・・ここで怯んではいけない。何としても・・・オスカーを助け出す方法を聞きださなくては・・!
やがて、メイド長はピタリと足を止めた。
「こちらのお部屋に・・・陛下はおられます。」
その扉は先ほどのオスカーの部屋の扉と同じ作りをしていたが・・驚くのはその扉の大きさだ。先程の扉に比べて格段に大きさが違う。
「では、アイリス・イリヤ様・・・私はここで失礼致します。」
メイド長は頭を下げると、クルリと背を向け去って行く。私はその後ろ姿を見て思った。そんな・・・ここから先は・・・私一人で行かなければならないなんて・・・。確かに先程のメイド長は、私の中では信頼するに置けない人物ではあるが・・・それでもあのフリードリッヒ3世と2人きりで会うよりはマシだろうと思っていたのに・・。
だけど、ここまで来てはもう引き返せない。あのままでは恐らくオスカーは呪いに侵されて・・・死んでしまうだろう。
私は深呼吸をすると、扉についているドアノッカーを掴むと、ドアをノックした。
コンコン
すると扉の奥から声が聞こえた。
「入りたまえ。」
「失礼致します・・・・。」
思わず声が震えるのを何とか抑えながら、私はゆっくり扉を開けた。
キイイイ・・・・。
中へ入ると、広々とした部屋の光景が目に飛び込んできた。その部屋は明かりが無い為、薄暗い。唯一の明かりは大きな窓からさす月明かりのみである。
この部屋には大きな掃き出し窓が2か所あり、奥はテラスへ続くバルコニーが見える。分厚いカーテンは開けられているが、レースのカーテンは閉められている。そしてバルコニーの奥に広がるのは鬱蒼とした森の木々。空は少しずつ明るくなってはきているが、まだ夜明けには至っていない。
フリードリッヒ3世は窓の方を向き、こちらに背を向ける姿で立っていた。そして彼はそのままの姿勢で私に言った。
「アイリス・イリヤよ・・・この部屋には絵画が並んでいるのだが・・気が付いたか?」
「え・・?絵画・・・?」
「そう・・・絵画と言っても肖像画だがな・・。」
肖像画・・・?徐々に薄暗い部屋に目が慣れてきた私はようやく壁に掛けてある肖像画に気が付いた。絵画は壁の至る所に掛けてあった。
「・・・・。」
私はその中の1枚の絵画に近付き、絵を覗きこんだ。
「・・・っ!!」
その肖像画を見た時、思わず悲鳴をあげそうになり咄嗟に両手で口を押えた。そんな馬鹿な・・・。
そこに飾られていた肖像画は・・・私だったのだ。いや、この絵だけではない。壁一万に添えられた絵画は全て・・私の肖像画だったのである。
「どうだ?アイリス・イリヤ。ここに飾られている肖像画・・気に入ったか?」
そしてこちらを振り向いたのは・・・オスカーだった―。
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