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第3章 13 オスカーの行方
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濃紺のドレスに身を包んだ私を見てメイド長は目を細めた。
「随分地味なドレスを選ばられたと思いましたが・・・やはり良くお似合いですね。とても美しゅうございます。これでしたら陛下もご満足いただけるでしょう。」
メイド長は何やら意味深な台詞を言う。その言葉を聞いただけで背筋にゾワリと悪寒が走るのを感じた。
「さあ、この通りドレスに着替えました。今すぐ私を先ほど怪我を負ったオスカー様の元へ連れて行って下さい。」
オスカーの話では自分には影武者がいると話していた。先程犬をけしかけてきたのは恐らく影武者のオスカーに違いない。だからあえて私は怪我を負ったオスカーと言ったのだ。
「はい。かしこまりました。ではご案内致します。こちらへどうぞ。」
メイド長に促され、私は彼女の後に続いて衣裳部屋を出た。するとメイド長は先ほど若い兵士が曲がっていった時と同じ方向を歩き始めた。
歩きながらメイド長は言う。
「この廊下の奥にオスカー様のお部屋があります。」
何て長い廊下なのだろう・・・。先が見えない位長く続く廊下を歩き続けていると、ひときわ豪華な装飾が施された扉の前でメイド長は足を止めた。
「こちらが先ほどオスカー様が運ばれたお部屋です。」
「この部屋が・・・。」
私は扉を見つめた。ライオンと巨大なワシの模様のレリーフが埋め込まれている。
「これは・・・王家の紋章・・・。」
私はレリーフに触れながら言った。すると私の背後に回っていたメイド長が声を掛けてきた。
「では、私はここで失礼させて頂きます。」
「あ、はい。どうもありがとう。」
やっとこの不気味な印象を持つメイド長が去ってくれる・・内心安堵のため息をつきながら、私は礼を述べた。
メイド長が背を向けて立ち去って行く様を見届けた後、私は改めてオスカーがいるとされる扉に向き直り、深呼吸するとノックした。
コンコン
「・・・。」
しかし、応答は全くない。
「まさか・・・怪我を負っているのに・・・誰も手当てをしてくれる人がいないのかしら・・・?」
私はガチャリと扉を開けて、部屋の中へと足を踏み入れた。
その部屋は先ほど私が目覚めた部屋とは全く様相が異なっていた。
広々とした部屋は一面重厚そうな青いカーペットが敷かれ、部屋の左側は大きな窓が並んでいるが、青いカーテンが引かれており外の様子を見る事が出来ない。部屋のかしこには見事な調度品が置かれ、壁にも城を描いた巨大な絵画が飾られている。
そして部屋の中央には天蓋付きのベッドが置かれ、中に人の気配がした。
恐らくあのベッドの上にオスカーがいるのだろう。私は息を吸うと、そっとベッドに近づき、カーテンを開けて目を見開いた。
ベッドの上には確かにオスカーが寝かされている。左腕には包帯が巻かれ、血がにじんでいる。しかし、傷を負った部分が異様な雰囲気を放っていた。
「こ、これは・・・?」
包帯が巻かれたオスカーの左腕には黒い靄がかかっている。その靄はまるでオスカーの身体を侵食していくかのように少しずつ大きくなっているのだ。
「う・・・・。」
オスカーは額に汗を浮かべながら目を閉じ、苦しんでいる。
「オスカー様っ?!しっかりして下さいっ!オスカー様っ!」
私は必死で呼びかけると、ようやくオスカーは薄目を開けてこちらを見た。
「ア・・アイリスか・・・よ、良かった・・・ぶ、無事だったんだ・・な・・・?」
そして弱々しく笑みを浮かべた。
「!」
その瞬間、私は胸を鷲掴みにされたかのような衝撃を受けた。何故なら、こんなに弱り切った姿で私の身を案ずるオスカーを見るのは・・・今世でも初めての事だったからだ―。
「随分地味なドレスを選ばられたと思いましたが・・・やはり良くお似合いですね。とても美しゅうございます。これでしたら陛下もご満足いただけるでしょう。」
メイド長は何やら意味深な台詞を言う。その言葉を聞いただけで背筋にゾワリと悪寒が走るのを感じた。
「さあ、この通りドレスに着替えました。今すぐ私を先ほど怪我を負ったオスカー様の元へ連れて行って下さい。」
オスカーの話では自分には影武者がいると話していた。先程犬をけしかけてきたのは恐らく影武者のオスカーに違いない。だからあえて私は怪我を負ったオスカーと言ったのだ。
「はい。かしこまりました。ではご案内致します。こちらへどうぞ。」
メイド長に促され、私は彼女の後に続いて衣裳部屋を出た。するとメイド長は先ほど若い兵士が曲がっていった時と同じ方向を歩き始めた。
歩きながらメイド長は言う。
「この廊下の奥にオスカー様のお部屋があります。」
何て長い廊下なのだろう・・・。先が見えない位長く続く廊下を歩き続けていると、ひときわ豪華な装飾が施された扉の前でメイド長は足を止めた。
「こちらが先ほどオスカー様が運ばれたお部屋です。」
「この部屋が・・・。」
私は扉を見つめた。ライオンと巨大なワシの模様のレリーフが埋め込まれている。
「これは・・・王家の紋章・・・。」
私はレリーフに触れながら言った。すると私の背後に回っていたメイド長が声を掛けてきた。
「では、私はここで失礼させて頂きます。」
「あ、はい。どうもありがとう。」
やっとこの不気味な印象を持つメイド長が去ってくれる・・内心安堵のため息をつきながら、私は礼を述べた。
メイド長が背を向けて立ち去って行く様を見届けた後、私は改めてオスカーがいるとされる扉に向き直り、深呼吸するとノックした。
コンコン
「・・・。」
しかし、応答は全くない。
「まさか・・・怪我を負っているのに・・・誰も手当てをしてくれる人がいないのかしら・・・?」
私はガチャリと扉を開けて、部屋の中へと足を踏み入れた。
その部屋は先ほど私が目覚めた部屋とは全く様相が異なっていた。
広々とした部屋は一面重厚そうな青いカーペットが敷かれ、部屋の左側は大きな窓が並んでいるが、青いカーテンが引かれており外の様子を見る事が出来ない。部屋のかしこには見事な調度品が置かれ、壁にも城を描いた巨大な絵画が飾られている。
そして部屋の中央には天蓋付きのベッドが置かれ、中に人の気配がした。
恐らくあのベッドの上にオスカーがいるのだろう。私は息を吸うと、そっとベッドに近づき、カーテンを開けて目を見開いた。
ベッドの上には確かにオスカーが寝かされている。左腕には包帯が巻かれ、血がにじんでいる。しかし、傷を負った部分が異様な雰囲気を放っていた。
「こ、これは・・・?」
包帯が巻かれたオスカーの左腕には黒い靄がかかっている。その靄はまるでオスカーの身体を侵食していくかのように少しずつ大きくなっているのだ。
「う・・・・。」
オスカーは額に汗を浮かべながら目を閉じ、苦しんでいる。
「オスカー様っ?!しっかりして下さいっ!オスカー様っ!」
私は必死で呼びかけると、ようやくオスカーは薄目を開けてこちらを見た。
「ア・・アイリスか・・・よ、良かった・・・ぶ、無事だったんだ・・な・・・?」
そして弱々しく笑みを浮かべた。
「!」
その瞬間、私は胸を鷲掴みにされたかのような衝撃を受けた。何故なら、こんなに弱り切った姿で私の身を案ずるオスカーを見るのは・・・今世でも初めての事だったからだ―。
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