タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

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第3章 6 昨夜の彼と今の彼

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「オスカー様・・・。何故ですか・・?」

タバサは目に薄っすらと涙を浮かべてオスカーを見つめ・・・その後、私に視線を移すと恐ろしい程の目つきで睨み付けてきた。その視線の鋭さに思わずビクリと肩が跳ねてしまった。しかし・・・何故私はタバサに睨まれなければならないのだろう。私はただのとばっちりを受けているだけだと言うのに・・。

「おい、タバサ。何をしている。早く教室から出て行け。お前は邪魔だ!」

鋭い声で命じるオスカーにタバサはなすすべも無かったのだろう。項垂れて私の横を通り過ぎる時にわざと右肩に強くぶつかって来た。

「!」

思わず痛みに顔を歪めた時、タバサが私の右手首を掴むと言った。

「あら、ごめんなさい。大丈夫でしたか?」

しかし、その言葉と同時に私の頭の中にタバサの思考が流れ込んできた。

< 一体、どういう事なの・・・?邪眼が通じないなんて・・・。 >

「え?」

私は思わず驚いてタバサを見た。しかし、タバサは私を侮蔑したかのような視線で見るとパッと手を放し、耳元で囁いて来た。

「あまりいい気にならない事ね。」

「!」

そして無言で教室を出て行った。私は思わずタバサの背中を視線で追い・・・身震いいした。
先程タバサに右手首を掴まれたとき、確かにタバサの思考が流れ込んできた。
『邪眼が通じない・・・』
邪眼・・・?タバサは・・そんな力を持っていたのだろうか・・?

その時、背後からオスカーの声が聞こえた。

「アイリス・イリヤ。」

「はい。」

振り向くと、驚くほど至近距離にオスカーが立っていた。じっと私を見下ろす瞳は何を考えているのか全く分からない。

「何故だ?」

「え・・?」

「何故、お前を見ていると・・イライラしてくる?」

オスカーは私から視線を逸らさずに言う。

「そ、そんな・・・イライラすると言われても・・・。」

私はオスカーの視線に耐えられず、目を逸らせた。

「いや・・・違うな・・。お前に馴れ馴れしく触れて来る男を見ているとイライラして来るのだ。」

「・・・。」

ひょっとすると・・オスカーは先ほどのレイフの事を言っているのだろうか・・?

「お前は自分の立場を分かっているのか?」

「私の・・立場ですか・・・?」

「ああ。お前にとって俺は何だ?」

「こ・・・婚約者です・・。」

「ああ、正式に決まったわけではないがな。」

そう言うと、オスカーは私から視線を逸らせると言った。

「俺は別にお前には何の関心も無い。だが・・・。」

再びオスカーは私を見ると左手首を掴んできた。

「俺の前で他の男にむやみに触れさせるな。それが例え幼馴染であっても・・分かったか?!」

強い口調でオスカーは言う。

「わ・・分かりました・・・。」

オスカーの握りしめる力があまりにも強く、私は痛みに顔を歪めながらも返事をした。だけど・・分からない。タバサの事はどう思っているのだろう?昨夜の約束では今朝もオスカーは迎えに来てくれるはずだったのに、彼は来なかった。それどころかタバサと・・。
オスカーの反応が怖かったが、私は今朝の事を尋ねる事にした。

「あ、あの・・・オスカー様・・・。お尋ねしたい事があるのですが・・。」

「何だ?この俺に質問して来るとは・・いい度胸をしているな。まあ、いい。その勇気に免じて聞いてやろう。」

オスカーは腕組みすると言った。

「昨夜・・・オスカー様は私に明日も迎えの馬車をよこす。これからは毎日一緒にアカデミーへ通うようにと仰りましたが・・・何故今朝はいらして頂けなかったのでしょうか?」

「何?俺が・・・昨夜お前にそんな事を言っただと?」

「は、はい・・・。」

するとオスカーは一瞬顔を歪め、頭に手をやると言った。

「そんな約束・・・お前とした覚えはないな。俺がお前と一緒にアカデミーへ行こうと誘っただと?あり得ない。」

その言葉を聞いて私は確信した。

ああ・・・やはり昨夜のオスカーと今のオスカーは別人なのだと―。



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