タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@コミカライズ発売中

文字の大きさ
上 下
26 / 152

第2章 8 入れ替わる立場

しおりを挟む
 オリエンテーションは2時間続いた。その後、昼休みを兼ねた休憩時間が2時間取られる事になった。
担任教師が教室を出て行くと、途端に学生達は騒がしくなった。周囲を見渡すと、既に友人同士のグループの輪が幾つも出来上がっており、レイフも親しい友人が出来たようで楽し気に何か話している。その時、レイフが私の視線に気づいたのか、こちらを見た。しかし、次の瞬間気まずそうにパッと視線を逸らせたのだ。

「・・・?」

その時になって私は気付いた。背後に人の気配があることに。慌てて振り向くとそこに立っていたのは他でも無い、オスカーだった。

「あ・・・オスカー様。」

慌てて椅子から立ち上がると、オスカーは言った。

「アイリス・イリヤ。行くぞ。」

そして私の左腕を掴むと、さっさと歩き始める。

「あ、あの・・・行くって、いったいどちらに・・?」

腕を掴まれながらチラリとタバサを見ると、彼女は歯を喰いしばるようにこちらを鋭い視線で睨み付けていた。
ああ・・・これでますます私はタバサに目を付けられてしまう事になるのね・・・。
心の中で思わずため息をつかずにはいられなかった―。


 オスカーに連れて来られたのは学食だった。既に食堂には多くの学生たちが集まり、賑わいを見せている。私は唖然としていた。何故なら70年前・・・私は一度たりともオスカーと2人で昼休みを過ごした事等無かったからだ。たいてい彼はタバサと一緒に学食へ来ており、私はその姿を何度も見かけ・・・周囲がこそこそと私を見ながら噂をしているのを胸を痛めながら聞いていた。

「まあ・・・またタバサ様はオスカー様と一緒におられるわ。」

「本当・・・でもオスカー様もオスカー様だわ。アイリス様と言う正式な婚約者がいらっしゃるのに・・・。」

「ほんと・・・。私ならみじめでここにいられないわ・・・。」

等々・・・私にわざと聞こえよがしに彼女たちは悪口を言って・・・。


「アイリス・イリヤ。お前は何を食べる?」

その時、不意にオスカーが振り向きながら尋ねてきた。

「え?わ、私ですか?」

慌てて顔を上げると、オスカーが神妙そうな顔つきでじっと私を見つめてたが、突然私の顎をつまむと顔を自分の方へ向けさせた。
オスカーの端正に整った顔が眼前へと近づいてくる。
え?え?い、一体何を・・・?!
思わず戸惑っていると、まつ毛が触れそうな距離でピタリとオスカーは動きを止めると言った。

「まただ・・・。」

「え?」

「また・・・顔色が悪い・・・。」

オスカーは美しく整った眉をひそめながら言った。

「え?か、顔色・・・?」

その時―

「何をしておられるのですかっ?!オスカー様っ?!こ、公衆の面前で・・・!」

突然大きな声が起こり、振り向くとそこには怒りで顔を赤く染めたタバサの姿がそこにあった。
あ・・・あの言葉は・・・!
私は息を飲んだ。忘れもしない、タバサが今言ったあのセリフは70年前のまさにこの場所で私がオスカーとタバサの様子を見て、周りに聞こえよがしに皮肉を言われた事に我慢できずに、2人に叫んだ言葉だ。するとそれを聞いたオスカーが・・・!
私は慌ててオスカーを振り向くと、彼はタバサに負けず劣らず、顔を赤く染めて憤慨している。
この後の展開は・・・既に私は経験済みだ。

「オスカー様っ!」

私は慌ててオスカーにしがみつくと言った。それに驚いたのか、オスカーが私の方を見た。

「アイリス・イリヤ、どうした?」

「あ、あの・・・き、気分が悪くて・・・そ、外の空気を吸いに行きたいのですが・・。」

その時の私の顔色は余程青ざめていたのだろう。

「・・・・。」

オスカーは神妙そうな顔で私を見つめていたが・・・やがて言った。

「わ、分った。お前・・・本当に具合が悪そうだ。外へ行こう。」

そしてオスカーは私の肩に手を回すと、外へ歩き始めた―。


しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢、猛省中!!

***あかしえ
恋愛
「君との婚約は破棄させてもらう!」 ――この国の王妃となるべく、幼少の頃から悪事に悪事を重ねてきた公爵令嬢ミーシャは、狂おしいまでに愛していた己の婚約者である第二王子に、全ての罪を暴かれ断頭台へと送られてしまう。 処刑される寸前――己の前世とこの世界が少女漫画の世界であることを思い出すが、全ては遅すぎた。 今度生まれ変わるなら、ミーシャ以外のなにかがいい……と思っていたのに、気付いたら幼少期へと時間が巻き戻っていた!? 己の罪を悔い、今度こそ善行を積み、彼らとは関わらず静かにひっそりと生きていこうと決意を新たにしていた彼女の下に現れたのは……?! 襲い来るかもしれないシナリオの強制力、叶わない恋、 誰からも愛されるあの子に対する狂い出しそうな程の憎しみへの恐怖、  誰にもきっと分からない……でも、これの全ては自業自得。 今度こそ、私は私が傷つけてきた全ての人々を…………救うために頑張ります!

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

元カレの今カノは聖女様

abang
恋愛
「イブリア……私と別れて欲しい」 公爵令嬢 イブリア・バロウズは聖女と王太子の愛を妨げる悪女で社交界の嫌われ者。 婚約者である王太子 ルシアン・ランベールの関心は、品行方正、心優しく美人で慈悲深い聖女、セリエ・ジェスランに奪われ王太子ルシアンはついにイブリアに別れを切り出す。 極め付けには、王妃から嫉妬に狂うただの公爵令嬢よりも、聖女が婚約者に適任だと「ルシアンと別れて頂戴」と多額の手切れ金。 社交会では嫉妬に狂った憐れな令嬢に"仕立てあげられ"周りの人間はどんどんと距離を取っていくばかり。 けれども当の本人は… 「悲しいけれど、過ぎればもう過去のことよ」 と、噂とは違いあっさりとした様子のイブリア。 それどころか自由を謳歌する彼女はとても楽しげな様子。 そんなイブリアの態度がルシアンは何故か気に入らない様子で… 更には婚約破棄されたイブリアの婚約者の座を狙う王太子の側近達。 「私をあんなにも嫌っていた、聖女様の取り巻き達が一体私に何の用事があって絡むの!?嫌がらせかしら……!」

【完結】魔女令嬢はただ静かに生きていたいだけ

こな
恋愛
 公爵家の令嬢として傲慢に育った十歳の少女、エマ・ルソーネは、ちょっとした事故により前世の記憶を思い出し、今世が乙女ゲームの世界であることに気付く。しかも自分は、魔女の血を引く最低最悪の悪役令嬢だった。  待っているのはオールデスエンド。回避すべく動くも、何故だが攻略対象たちとの接点は増えるばかりで、あれよあれよという間に物語の筋書き通り、魔法研究機関に入所することになってしまう。  ひたすら静かに過ごすことに努めるエマを、研究所に集った癖のある者たちの脅威が襲う。日々の苦悩に、エマの胃痛はとどまる所を知らない……

【コミカライズ決定】地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~

胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。 時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。 王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。 処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。 これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。

気付けば名も知らぬ悪役令嬢に憑依して、見知らぬヒロインに手をあげていました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
私が憑依した身体の持ちは不幸のどん底に置かれた悪役令嬢でした ある日、妹の部屋で見つけた不思議な指輪。その指輪をはめた途端、私は見知らぬ少女の前に立っていた。目の前には赤く腫れた頬で涙ぐみ、こちらをじっと見つめる可憐な美少女。そして何故か右手の平が痛む私。もしかして・・今私、この少女を引っ叩いたの?!そして何故か頭の中で響き渡る謎の声の人物と心と体を共存することになってしまう。憑依した身体の持ち主はいじめられっ娘の上に悪役令嬢のポジションに置かれている。見るに見かねた私は彼女を幸せにする為、そして自分の快適な生活を手に入れる為に自ら身体を張って奮闘する事にした―。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

死に戻りの悪役令嬢は、今世は復讐を完遂する。

乞食
恋愛
メディチ家の公爵令嬢プリシラは、かつて誰からも愛される少女だった。しかし、数年前のある事件をきっかけに周囲の人間に虐げられるようになってしまった。 唯一の心の支えは、プリシラを慕う義妹であるロザリーだけ。 だがある日、プリシラは異母妹を苛めていた罪で断罪されてしまう。 プリシラは処刑の日の前日、牢屋を訪れたロザリーに無実の証言を願い出るが、彼女は高らかに笑いながらこう言った。 「ぜーんぶ私が仕組んだことよ!!」 唯一信頼していた義妹に裏切られていたことを知り、プリシラは深い悲しみのまま処刑された。 ──はずだった。 目が覚めるとプリシラは、三年前のロザリーがメディチ家に引き取られる前日に、なぜか時間が巻き戻っていて──。 逆行した世界で、プリシラは義妹と、自分を虐げていた人々に復讐することを誓う。

妹に全てを奪われた令嬢は第二の人生を満喫することにしました。

バナナマヨネーズ
恋愛
四大公爵家の一つ。アックァーノ公爵家に生まれたイシュミールは双子の妹であるイシュタルに慕われていたが、何故か両親と使用人たちに冷遇されていた。 瓜二つである妹のイシュタルは、それに比べて大切にされていた。 そんなある日、イシュミールは第三王子との婚約が決まった。 その時から、イシュミールの人生は最高の瞬間を経て、最悪な結末へと緩やかに向かうことになった。 そして……。 本編全79話 番外編全34話 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。

処理中です...