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第1章 5 二度目の出会い
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70年ぶり?に口にしたイリヤ家の食事は本当に美味しく、私は味わって食べた。
私があまりにも美味しい美味しいと連呼するものだから給仕のフットマンに妙な顔をされた位だったのだから。
食後の紅茶を飲みながら、時計をみると時刻はそろそろ8時半になろうとしている。
そこで私は70年前のあの入学式の日の出来事を頭の中で振り返った。
あの日、我が屋敷に見慣れない立派な馬車がやって来た。そして御者は私に言った。
この馬車はオスカー殿下の命により、私を迎えに寄こした馬車なので必ずこれに乗ってアカデミーに来るようにと申しつけられました。と―。
しかし、私はこの日オスカーが寄こした馬車には乗らなかった。何故なら彼のよこした馬車が怖かったからだ。
オスカーの悪い噂は全てイリヤ家に入って来ていた。気に入らない貴族には平気で暴力を振るい、色々な女性に手を出したと言う話も耳にした。婚約者の自分には会いに来ないくせに、他の女性の元へ行くなんてとんでもないと当時の私は考えた。しかしそれはまだ18歳で気位の高い小娘だったのだから無理も無い話だった。
だから婚約式を迎えるまでは、なるべくオスカーとはかかわりを持たないように生きてきた。それにオスカーだって恐らく自分には興味が無いだろうと勝手に思っていた。何故なら5歳の時に婚約者と決められてから、只の一度もオスカーは私に会いに来た事など無かったからだ。
しかし、オスカーが私に興味を持っていないと言うのは私の飛んでもない勘違いであったのだ―。
その時、突然ドアが開いて慌てた様子の父と母が駆け込んできた。
「アイリスッ!大変だ!オスカー様の馬車がお前をアカデミー迄迎えにやってきたぞっ!」
父が取り乱した様子で私に言う。
「・・・そうですか。」
私は最後の紅茶をクイッと飲み干すとテーブルに置いた。
「そうですか・・・ってアイリス・・貴女どうするつもりなの?!当然・・・乗る必要はありませんからねっ?!あのオスカー様は貴女と言う婚約者がありながら・・・色々な女性達との噂話がたえないお方なのですから。」
母は私の右手を握りしめると言った。
「ああ、そうだ。アイリス・・・絶対に乗ってはいけないぞ?あの馬車は罠かもしれない。乗ったらとんでもない所へ連れて行かれるかもしれない・・・。お前は我が家で用意した馬車に乗ればいいのだからな?」
しかし、父の言葉に私は首を振った。
「いいえ、お父様。私はオスカー様がよこして下さった馬車に乗り学校へ参ります。」
「な・・・何だって・・・?アイリス・・・お前本気で言ってるのか?アイリス・・さてはお前・・オスカー様がどんな男か分からないからそんな事を言うのだろう?兎に角彼は残虐非道な男として界隈で有名なのか知らないからだな?」
しかし、私は父や母よりもオスカーの性格をよく知っている。何故ならこの世界は私にとっての2度目の人生。だからここで選択を誤ってはいけない。
「大丈夫です、お父様。それでは学校へ行って参ります。」
そして私が乗り込むと、馬車は静かに走り出した。
今回、何故私がこの馬車に乗り込んだかと言うと・・・・この後、馬車は道の途中で止まり、オスカーが乗り込んでくるからだ。
オスカーは馬車に私の姿が無い事を知ると・・・激しく怒り狂い、御者を剣で切りつけ、殺害してしまったのだ。
私は御者台に乗っている男性の後姿を馬車の中から見つめた。
・・どうしても彼を死なせるわけにはいかない。だって彼には家族があり、生まれてきたばかりの赤ちゃんがいるのだから―。
暫く馬車は走り続けるとやがて町の中で止まった。そして馬車の扉がゆっくりと開かれた。
「まさか・・・本当に俺の寄こした馬車に乗ってきたとはな・・・。賢いのか、それとも愚かなのか・・?」
馬車に乗り込んできたのは私の婚約者であるオスカー・オブ・ウィンザード王太子その人であった―。
私があまりにも美味しい美味しいと連呼するものだから給仕のフットマンに妙な顔をされた位だったのだから。
食後の紅茶を飲みながら、時計をみると時刻はそろそろ8時半になろうとしている。
そこで私は70年前のあの入学式の日の出来事を頭の中で振り返った。
あの日、我が屋敷に見慣れない立派な馬車がやって来た。そして御者は私に言った。
この馬車はオスカー殿下の命により、私を迎えに寄こした馬車なので必ずこれに乗ってアカデミーに来るようにと申しつけられました。と―。
しかし、私はこの日オスカーが寄こした馬車には乗らなかった。何故なら彼のよこした馬車が怖かったからだ。
オスカーの悪い噂は全てイリヤ家に入って来ていた。気に入らない貴族には平気で暴力を振るい、色々な女性に手を出したと言う話も耳にした。婚約者の自分には会いに来ないくせに、他の女性の元へ行くなんてとんでもないと当時の私は考えた。しかしそれはまだ18歳で気位の高い小娘だったのだから無理も無い話だった。
だから婚約式を迎えるまでは、なるべくオスカーとはかかわりを持たないように生きてきた。それにオスカーだって恐らく自分には興味が無いだろうと勝手に思っていた。何故なら5歳の時に婚約者と決められてから、只の一度もオスカーは私に会いに来た事など無かったからだ。
しかし、オスカーが私に興味を持っていないと言うのは私の飛んでもない勘違いであったのだ―。
その時、突然ドアが開いて慌てた様子の父と母が駆け込んできた。
「アイリスッ!大変だ!オスカー様の馬車がお前をアカデミー迄迎えにやってきたぞっ!」
父が取り乱した様子で私に言う。
「・・・そうですか。」
私は最後の紅茶をクイッと飲み干すとテーブルに置いた。
「そうですか・・・ってアイリス・・貴女どうするつもりなの?!当然・・・乗る必要はありませんからねっ?!あのオスカー様は貴女と言う婚約者がありながら・・・色々な女性達との噂話がたえないお方なのですから。」
母は私の右手を握りしめると言った。
「ああ、そうだ。アイリス・・・絶対に乗ってはいけないぞ?あの馬車は罠かもしれない。乗ったらとんでもない所へ連れて行かれるかもしれない・・・。お前は我が家で用意した馬車に乗ればいいのだからな?」
しかし、父の言葉に私は首を振った。
「いいえ、お父様。私はオスカー様がよこして下さった馬車に乗り学校へ参ります。」
「な・・・何だって・・・?アイリス・・・お前本気で言ってるのか?アイリス・・さてはお前・・オスカー様がどんな男か分からないからそんな事を言うのだろう?兎に角彼は残虐非道な男として界隈で有名なのか知らないからだな?」
しかし、私は父や母よりもオスカーの性格をよく知っている。何故ならこの世界は私にとっての2度目の人生。だからここで選択を誤ってはいけない。
「大丈夫です、お父様。それでは学校へ行って参ります。」
そして私が乗り込むと、馬車は静かに走り出した。
今回、何故私がこの馬車に乗り込んだかと言うと・・・・この後、馬車は道の途中で止まり、オスカーが乗り込んでくるからだ。
オスカーは馬車に私の姿が無い事を知ると・・・激しく怒り狂い、御者を剣で切りつけ、殺害してしまったのだ。
私は御者台に乗っている男性の後姿を馬車の中から見つめた。
・・どうしても彼を死なせるわけにはいかない。だって彼には家族があり、生まれてきたばかりの赤ちゃんがいるのだから―。
暫く馬車は走り続けるとやがて町の中で止まった。そして馬車の扉がゆっくりと開かれた。
「まさか・・・本当に俺の寄こした馬車に乗ってきたとはな・・・。賢いのか、それとも愚かなのか・・?」
馬車に乗り込んできたのは私の婚約者であるオスカー・オブ・ウィンザード王太子その人であった―。
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