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第1章 1 再スタート
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朝日が顔に差し込み、眩しさのあまり私はベッドの中でゴロリと寝返りを打った。
フカフカの枕にスプリングのきいたベッド、そして手触りの良い寝具が気持ちいいい・・・。
「え?寝具・・?」
私はぱちりと目を開け、自分が今触れている寝具をよく見た。それはシルク素材で出来ていた。慌てて飛び起きて周囲を見渡すとそこは私が投獄されるまで使っていた自分の部屋だった。70年経っても未だにはっきり覚えている。
「これは・・・夢の続き・・・?」
私は何も無いあの無人島で・・・狭くて古い石造りの家で粗末なベッド寝起きしていた。そして傍らにはいつも彼がいて・・・・・って彼?彼って誰・・?
「まだ夢の続きを見ているのかしら・・・。それにしても身体が軽いわね。腰痛も無いし肩凝りも無い・・おまけに目がはっきり見えるし、耳も良く聞こえているわ。」
そこで私は気が付いた。まさか・・・私はあの無人島で老衰で死んでしまい、ここはあの世なのかもしれない。
「魂だけになったから、身体の調子がいいのかしら?」
そしてベッドから降りると、念の為に今の自分の状態を確認しようとドレッサーに向い、自分の姿を鏡に映して息を飲んだ。
「え・・?嘘でしょう・・・?」
そこに写っているのはまだ若かりし頃の私の姿だった。誰もが羨んだ金糸のように細く長い髪・・そしてとても珍しいと言われたコバルトグリーンの瞳。皺もシミも一つも無い真っ白な肌・・・・。
私は今の自分の状況がとても信じられず、ペタペタとあちこち自分の身体を触ってみる。
「・・・感触がある。死んだわけでも無さそうだわ・・・。」
その時、壁にカレンダーが掛けてあることに気が付き、何気なく眺めて驚いた。
「え・・・?エンパイア歴1580年9月1日・・・?」
私はそのカレンダーを見て絶句してしまった。何故ならこの年の今日、私は王立アカデミーに入学したのだから。
「そ・・そんな馬鹿な・・・。」
その時、突然部屋のドアがノックされ、外から女性の声が聞こえてきた。
「アイリスお嬢様?御目覚めでしょうか?本日は王立アカデミーの入学式です。もうそろそろ起きて頂かなければ遅刻してしまいかねませんよ。」
「あ!は、はい。どうぞ!」
慌てた私はつい、返事をしてしまった。
「失礼致します。」
するとドアが開かれ、中へ入って来たメイドを見て私は息を飲んだ。中へ入って来たのは私の専属メイドのリリーだったのだ。
「リリー・・・・。」
私は信じられない思いでリリーを見つめた。
「おはようございます。アイリスさ・・・ま・・・?」
リリーはギョッとした顔で私を見た。彼女が驚くのは無理も無いだろう。何故なら私はボロボロと泣きながらリリーを見つめていたからだ。
「アイリス様?どうされたのですか?そのように泣かれて・・・。」
困ったように私に駆け寄ってきたリリーを私は強く抱きしめた。
「リリーッ!リリーッ!ごめんなさい・・ごめんなさい・・・。」
私はリリーに縋りついて涙を流した。
「アイリス様?アイリス様?本当にどうなさったのですか・・・?」
リリーは戸惑いながらも私をそっと抱きしめて優しく背中を撫でてくれた。
良かった・・・リリーはまだ・・まだ生きているっ!
これはきっと惨めな死に方をした私を哀れに思い、神様が私にやり直しのチャンスを与えてくれたのかもしれない。私はオスカーのせいで大切な人を・・・信頼を・・・沢山失ってしまった。
やり直しの人生で私の最初にするべきことが見つかった。
まずは私の一番の理解者で親友でもあったメイドのリリー。
彼女の命を助ける事だと―。
フカフカの枕にスプリングのきいたベッド、そして手触りの良い寝具が気持ちいいい・・・。
「え?寝具・・?」
私はぱちりと目を開け、自分が今触れている寝具をよく見た。それはシルク素材で出来ていた。慌てて飛び起きて周囲を見渡すとそこは私が投獄されるまで使っていた自分の部屋だった。70年経っても未だにはっきり覚えている。
「これは・・・夢の続き・・・?」
私は何も無いあの無人島で・・・狭くて古い石造りの家で粗末なベッド寝起きしていた。そして傍らにはいつも彼がいて・・・・・って彼?彼って誰・・?
「まだ夢の続きを見ているのかしら・・・。それにしても身体が軽いわね。腰痛も無いし肩凝りも無い・・おまけに目がはっきり見えるし、耳も良く聞こえているわ。」
そこで私は気が付いた。まさか・・・私はあの無人島で老衰で死んでしまい、ここはあの世なのかもしれない。
「魂だけになったから、身体の調子がいいのかしら?」
そしてベッドから降りると、念の為に今の自分の状態を確認しようとドレッサーに向い、自分の姿を鏡に映して息を飲んだ。
「え・・?嘘でしょう・・・?」
そこに写っているのはまだ若かりし頃の私の姿だった。誰もが羨んだ金糸のように細く長い髪・・そしてとても珍しいと言われたコバルトグリーンの瞳。皺もシミも一つも無い真っ白な肌・・・・。
私は今の自分の状況がとても信じられず、ペタペタとあちこち自分の身体を触ってみる。
「・・・感触がある。死んだわけでも無さそうだわ・・・。」
その時、壁にカレンダーが掛けてあることに気が付き、何気なく眺めて驚いた。
「え・・・?エンパイア歴1580年9月1日・・・?」
私はそのカレンダーを見て絶句してしまった。何故ならこの年の今日、私は王立アカデミーに入学したのだから。
「そ・・そんな馬鹿な・・・。」
その時、突然部屋のドアがノックされ、外から女性の声が聞こえてきた。
「アイリスお嬢様?御目覚めでしょうか?本日は王立アカデミーの入学式です。もうそろそろ起きて頂かなければ遅刻してしまいかねませんよ。」
「あ!は、はい。どうぞ!」
慌てた私はつい、返事をしてしまった。
「失礼致します。」
するとドアが開かれ、中へ入って来たメイドを見て私は息を飲んだ。中へ入って来たのは私の専属メイドのリリーだったのだ。
「リリー・・・・。」
私は信じられない思いでリリーを見つめた。
「おはようございます。アイリスさ・・・ま・・・?」
リリーはギョッとした顔で私を見た。彼女が驚くのは無理も無いだろう。何故なら私はボロボロと泣きながらリリーを見つめていたからだ。
「アイリス様?どうされたのですか?そのように泣かれて・・・。」
困ったように私に駆け寄ってきたリリーを私は強く抱きしめた。
「リリーッ!リリーッ!ごめんなさい・・ごめんなさい・・・。」
私はリリーに縋りついて涙を流した。
「アイリス様?アイリス様?本当にどうなさったのですか・・・?」
リリーは戸惑いながらも私をそっと抱きしめて優しく背中を撫でてくれた。
良かった・・・リリーはまだ・・まだ生きているっ!
これはきっと惨めな死に方をした私を哀れに思い、神様が私にやり直しのチャンスを与えてくれたのかもしれない。私はオスカーのせいで大切な人を・・・信頼を・・・沢山失ってしまった。
やり直しの人生で私の最初にするべきことが見つかった。
まずは私の一番の理解者で親友でもあったメイドのリリー。
彼女の命を助ける事だと―。
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