もしもカボチャが無い世界の「シンデレラ」になったとしたら?

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

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9話 王子からの誘い

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「え? そ、そうだったのですか?」

王子のあまりにも意外な言葉に首を傾げる。

「ええ、そうなんです。少しその件に関してお話しませんか?」

「はい、お願いします」

なんとなく含みをもたせた王子の言葉に興味を引かれ、頷く。

「それなら、先程のベンチで座ってお話しましょう」

そこで二人並んでベンチに座ると、早速王子が話しかけてきた。

「そういえば、まだ貴女のお名前を伺っておりませんでしたね?」

「あ、そうでしたね。私の名前はシンデレラと申します」

「シンデレラ……とても素敵なお名前ですね。ではシンデレラ、私の話を聞いて下さい」

「はい」

王子の言葉に頷く。

「そもそも、何故今宵舞踏会が開催されたかシンデレラはご存知ですか?」

「いえ? 全く分かりません」

第一、ここはシンデレラの世界。シンデレラと言えば、舞踏会。それしか無いだろう。

「実はこの舞踏会には特別な意味がこめられているのです。古よりの言い伝えで、今宵は冥府から亡者たちがこの世に姿を現す特別な夜なのです」

「え……?」

その言葉にドキリとする。それって……まさかハロウィンのことなのでは!?

「そこでこの世に迷いでてきた亡者たちを再びあの世に導くために祭事が執り行われるようになりました。彼らに我々が生者だと気づかれないように仮装し、元の冥府に送り返してあげるのです」

「なるほど……」

聞けば聞くほど、ハロウィンの祭りにそっくりだ。

「けれど、徐々にそのような風習は失われていきました」

王子は遠い目をして語る。

「やがて人々は、その祭事をくだらないことだと言い始めました。それなら亡者たちが我々に近づけないように盛大なパーティーを開催しようということで、そのようになりました。それが今宵の舞踏会なのです」

「そうだったのですか。中々奥が深い舞踏会だったのですね」

「シンデレラはこのお話に興味がありますか?」

「ええ、そうですね。舞踏会よりもずっと興味深いです」

踊れない私にとっては、むしろ馴染み深いハロウィンのような祭事の方がずっとあっている。

「本当ですか? それなら今からその祭事へ行ってみませんか?」

王子がとんでもないことを言ってきた。

「ええ!! い、今からですか!?」

「はい、そうです。その祭事は日付が変わる深夜1時で終了になります。ちょうど、今頃から始まりますよ」

「深夜1時……」

その頃には、私にかけられた魔法が解けてしまう。魔法使いからは12時になる前に帰ってくるように言われているのに……

「実は、衣装も特別に着替えるのですよ。亡者に見えるような服装になるのです。面白いと思いませんか?」

「えぇ! そ、そうなのですか……?」

衣装替えがあるのか……それなら別に参加してもいいかなぁ……?

「どうです? 私の友人たちも領民たちも大勢参加していますよ?」

「……分かりました。参加します」

どうせシンデレラの世界に入ってしまったのなら、とことん今の状況を楽しんだほうがいいかもしれない。

私はあっさり王子からの提案を承諾した――

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