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5話 行っておいで!
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「そ、そんな……この世界には『カボチャ』が無いなんて……」
思わずガックリうなだれると、魔法使いが背中をバンバン叩いてきた。
「何やってるんだい! ほら、しっかりしなさい! この靴をあげるから!」
そして魔法使いはふところからガラスの靴を取り出した。……って、一体どこから取り出すのだろう。
「これは、例のあのガラスの靴ですね?」
「例の……? 言ってる意味が分からないが、確かにガラスの靴だよ。さぁ! その靴を履いて、王子様のハートを射止めておいで!」
「はぁ……そうですね」
気乗りしないまま、私は生暖かいガラスの靴を履いた。
別に王子様のハートを射止めたいとは思ってもいない。むしろ、今一番大事なことは馬車に乗れるかどうかの問題だ。
こんなドレス姿で、あんな細長い人参馬車に乗れるのだろうか?
「ああ、そうだ。私としたことが……肝心の御者を忘れていたよ」
魔法使いがパチンと指を鳴らすと、空中から二匹のネズミが現れて私の目の前に落ちてきた。
「きゃあああああ!! いやああああ!! ネ、ネズミ!!」
ネズミと言っても、ハムスターやスナネズミのような愛らしいネズミなら許せる。なのに現れたのはドブネズミなのだ。茶色い身体に小さい耳。しかもネズミにしては大きいサイズ。
その二匹がチュウチュウ鳴きながら私の周りをぐるぐる走り回っている。
「いやあああ!! ネズミいや! ネズミ怖い!!」
身悶えて叫んでいると、魔法使いに怒られた。
「いいかげんにおし!! たかが、ドブネズミくらいでギャアギャア騒ぐんじゃないよ! ホレ!」
魔法使いが杖を振りかざすと、とたんに一匹は白い馬。もう一匹は御者となって人参馬車の御者台に座っている。
「さぁ、準備が整った! 馬車に乗って舞踏会にお行き! ああ、そうそう。くれぐれも12時までに帰ってこなくてはならないよ? そうでなければ魔法が解けてしまうからね?」
「わ、分かっています! 必ず戻ってきますとも!」
馬と御者を見つめながら返事をする。冗談じゃない。あれらがまた元のドブネズミに戻る姿など見たくもない。
「さぁ! 早く馬車に乗りな!」
益々言葉遣いが乱暴になってくる魔法使いにせっつかれ、私は渋々腰程の高さしかな馬車の扉を開けた。
……それにしても、どうやって乗ればいいのだろう?
思わず固まっていると、背後から魔法使いが背中を押してきた。
「何やってるんだい! さっさとおし!」
「わ、分かりましたから! 押さないでくださいよ! 乗ればいいのでしょう? 乗れば!」
こうなったらヤケだ。
腰を低くして馬車に乗り込んでみたが、やはり普通に座ると天井に頭がついてしまう。そこで渋々横たわることにした。
うう……ドレスが邪魔で視界が見えない。
馬車の中はシンデレラのふわふわドレスが広がり、邪魔でしょうがない。何とか顔の部分だけドレスをかき分けて覗かせると、魔法使いがじっとこちらを見つめている。
「あの……」
魔法使いに声をかける私。
「何だい?」
「申し訳ありませんが……扉、閉めてもらえませんか? ご覧の通り、この体勢では自分で扉を閉められませんので」
「分かったよ」
魔法使いは扉を閉めると、笑みを浮かべた。
「さぁ、シンデレラや。楽しんでおいで!」
言うなり、馬のお腹を杖でパチンと叩く。
すると……
「ヒヒーン!!」
馬は大きくいななき、猛スピードで駆け始めた――
思わずガックリうなだれると、魔法使いが背中をバンバン叩いてきた。
「何やってるんだい! ほら、しっかりしなさい! この靴をあげるから!」
そして魔法使いはふところからガラスの靴を取り出した。……って、一体どこから取り出すのだろう。
「これは、例のあのガラスの靴ですね?」
「例の……? 言ってる意味が分からないが、確かにガラスの靴だよ。さぁ! その靴を履いて、王子様のハートを射止めておいで!」
「はぁ……そうですね」
気乗りしないまま、私は生暖かいガラスの靴を履いた。
別に王子様のハートを射止めたいとは思ってもいない。むしろ、今一番大事なことは馬車に乗れるかどうかの問題だ。
こんなドレス姿で、あんな細長い人参馬車に乗れるのだろうか?
「ああ、そうだ。私としたことが……肝心の御者を忘れていたよ」
魔法使いがパチンと指を鳴らすと、空中から二匹のネズミが現れて私の目の前に落ちてきた。
「きゃあああああ!! いやああああ!! ネ、ネズミ!!」
ネズミと言っても、ハムスターやスナネズミのような愛らしいネズミなら許せる。なのに現れたのはドブネズミなのだ。茶色い身体に小さい耳。しかもネズミにしては大きいサイズ。
その二匹がチュウチュウ鳴きながら私の周りをぐるぐる走り回っている。
「いやあああ!! ネズミいや! ネズミ怖い!!」
身悶えて叫んでいると、魔法使いに怒られた。
「いいかげんにおし!! たかが、ドブネズミくらいでギャアギャア騒ぐんじゃないよ! ホレ!」
魔法使いが杖を振りかざすと、とたんに一匹は白い馬。もう一匹は御者となって人参馬車の御者台に座っている。
「さぁ、準備が整った! 馬車に乗って舞踏会にお行き! ああ、そうそう。くれぐれも12時までに帰ってこなくてはならないよ? そうでなければ魔法が解けてしまうからね?」
「わ、分かっています! 必ず戻ってきますとも!」
馬と御者を見つめながら返事をする。冗談じゃない。あれらがまた元のドブネズミに戻る姿など見たくもない。
「さぁ! 早く馬車に乗りな!」
益々言葉遣いが乱暴になってくる魔法使いにせっつかれ、私は渋々腰程の高さしかな馬車の扉を開けた。
……それにしても、どうやって乗ればいいのだろう?
思わず固まっていると、背後から魔法使いが背中を押してきた。
「何やってるんだい! さっさとおし!」
「わ、分かりましたから! 押さないでくださいよ! 乗ればいいのでしょう? 乗れば!」
こうなったらヤケだ。
腰を低くして馬車に乗り込んでみたが、やはり普通に座ると天井に頭がついてしまう。そこで渋々横たわることにした。
うう……ドレスが邪魔で視界が見えない。
馬車の中はシンデレラのふわふわドレスが広がり、邪魔でしょうがない。何とか顔の部分だけドレスをかき分けて覗かせると、魔法使いがじっとこちらを見つめている。
「あの……」
魔法使いに声をかける私。
「何だい?」
「申し訳ありませんが……扉、閉めてもらえませんか? ご覧の通り、この体勢では自分で扉を閉められませんので」
「分かったよ」
魔法使いは扉を閉めると、笑みを浮かべた。
「さぁ、シンデレラや。楽しんでおいで!」
言うなり、馬のお腹を杖でパチンと叩く。
すると……
「ヒヒーン!!」
馬は大きくいななき、猛スピードで駆け始めた――
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