君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
35 / 56

第35話 困惑

しおりを挟む
「は、はい! 今開けます! キャアッ!」

ソフィアは急いで扉に向うと大きく開け放し、驚きの声をあげてしまった。
何故なら扉の前に立っていたのはアダムだったからだ。

「ア、アダムさんっ!?」

するとアダムはニコリと笑みを浮かべる。

「こんばんは。ソフィアさん、6時間ぶりですね」

何とも妙な挨拶に思えたが、ソフィアは返事をした。

「は、はい。こんばんは、アダムさん」

「申し訳ございません。驚かせてしまいましたね? 実は2時間程前に扉をノックしたのですが、お返事が無かったのでメイドに頼んでソフィアさんの様子を見てもらったのです。するとベッドで眠っていると聞かされたので、そのまま休んでもらうことにさせていただきました」

「え……? そうだったのですか?」

(私、自分でベッドに入ったのかしら……? ソファに座って居眠りしてしまったのだとばかり思っていたけど……?)

ソフィアはどうにも腑に落ちなかった。しかし、ベッドで眠っていると言われてしまえば、そうなのだろう。

「とても良く眠っているということだったので、目が覚めるまでそっとしておこうと思ったのですが……。夕食の時間が近づいてきたので、もう一度様子を見に伺った次第です。でも起きていらっしゃったようで良かったです」

にこやかに話すアダム。

「そうでしたか……2度もお手数おかけしてしまい、大変申し訳ございませんでした。でも、アダムさん。別にノックしなくても部屋に入って良かったのですよ?」

「え……? で、ですが……」

その時になって、初めてアダムの顔に困惑の表情が浮かぶ。

「私達は夫婦ですよね? なので遠慮なさらないで下さい。この先もずっと」

「分かりました。今の言葉を肝に銘じておきます。それでソフィアさん。これから夕食なのですが、もし目が覚めたばかりで食欲が無いようであれば後にされますか?」

「アダムさんはどうされるのですか?」

じっとアダムの目を見つめるソフィア。

「私は、今食事をとるつもりですけど。ですがソフィアさんは後でも構いませんよ」

「え?」

まさかそんな風に言われるとは思わず、一瞬言葉を失ってしまった。

(そんな……それでは夕食を別々にとるということなの? 私達夫婦なのに? 華族になったのに……?)

アダムに聞きたいことが山ほどあったが、肝心の居場所を知らないので半ばソフィアは諦めていた。けれど思いがけず、アダムが屋敷に現れたのだ。
しかも一緒に夕食ともなれば、話もしやすい。

今のソフィアは全く食欲が無かったが、このチャンスを逃すわけにはいかなかった。

「どうしましたか? ソフィアさん」

アダムが首を傾げる。

「アダムさん。私も食事をご一緒させて下さい! 是非!」

ソフィアは力強く訴えた。

「ええ、勿論です。やはり1人で食事をするのは味気ないですからね。では一緒にダイニングルームへ行きましょう」

「はい、アダムさん」

ソフィアは手を伸ばそうとしたところ、アダムは背を向けると歩き始めた。伸ばした右手は空しく宙で止まる。

(え? エスコートしてくれるのでは無いの……?)

てっきり、腕を組んでダイニングルームに行くのかとばかり思っていたソフィアは拍子抜けしてしまった。

「ソフィアさん? どうかしましたか?」

アダムが足を止めて振り返る。

「い、いえ。何でもありません。行きます」

ソフィアはアダムの傍に来ると、謝罪した。

「そうですか? では参りましょう」

こうして2人はダイニングルームへ向かった。

互いの距離を少し空けるように――
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

お望み通り、別れて差し上げます!

珊瑚
恋愛
「幼なじみと子供が出来たから別れてくれ。」 本当の理解者は幼なじみだったのだと婚約者のリオルから突然婚約破棄を突きつけられたフェリア。彼は自分の家からの支援が無くなれば困るに違いないと思っているようだが……?

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

処理中です...