君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました

結城芙由奈@コミカライズ連載中

文字の大きさ
31 / 56

第31話 出迎える使用人達

しおりを挟む
 恥ずかしさのあまりずっと俯いていたソフィア。

当然周囲の光景を楽しむ余裕も、初体験のドライブを楽しむことも出来なかった。ただ下を向き、羞恥にずっと耐え続け……。

キキーッ

車は音を立てて停車した。

「奥様、新居に到着いたしました」

ノーマンに声をかけられ、ソフィアは顔を上げた。

「まぁ……何て素敵なお宅なのかしら」

白い壁に2階建ての大きな屋敷は、今ソフィアが住んでいる家より10倍以上は広く見えた。
屋敷の隣には屋根付きのガレージがあり、車が3台止まっている。芝生が敷き詰められた庭も広く、家を囲む門からガレージまでは道が舗装されている。

「どうですか? 奥様。こちらのお屋敷、お気に召されましたか?」

「はい、とても素敵です」

その言葉にノーマンは笑顔になる。

「それでは中へ入りましょう」

「……そうですね」

ソフィアは新居を見上げたまま返事をしたが、心の中には寂しい気持ちがあった。
それはアダムが今、自分の傍にいないことだ。

幸せな結婚生活を送りたいソフィアには夢があった。

この国では花婿に抱きかかえられて新居に入ると、花嫁は一生幸せになれると言われている。だから自分がもし結婚するときは、花婿に抱きかかえられて一緒に家に入りたかったのだ。

それなのに現実はどうだろう?
大勢の人々に祝われる結婚式でもなければ、アダムの乗らない車でここまで連れて来られた。……しかもまるで見世物状態で。
そして今一緒に新居に入ろうとしている人物は両親と同年代……もしくは人生黄昏時を迎えた年代の男性だ。

(まさか、夫不在で新居に来ることになるなんて……)

そんなことをぼんやり考えていると、声をかけられた。

「奥様? どうされましたか? 中に入られないのですか?」

「い、いえ! 何でもありません。入ります」

背筋を正すソフィア。

「では開けますね」

――カチャ……

ノーマンが扉を開けると、10人前後の使用人達がエントランスに待機していた。
そしてウェディングドレス姿のソフィアを見るなり……彼らの顔が一瞬硬直する。

「え……?」
「ウェディングドレス姿?」
「まさか着替えないで、この屋敷に直接……?」

使用人たちの驚愕した眼差し……ヒソヒソ声は全てソフィアの耳に届いている。

(ああ……やっぱり、ウェディングドレス姿で来たせいで、皆に驚かれてしまっているわ……! は、恥ずかしい……!)

羞恥で思わず俯く。その様子を見かねたノーマンが咳払いした。

「ゴホン! 皆の者、良く聞きなさい。こちらの女性がこの度、屋敷の女主人となったソフィア・ジョンソン様だ。挨拶をするように」

すると我に返ったかのように、使用人達は声を揃えてソフィアに挨拶した。

『ようこそ、お越しくださいました。奥様!』

「あ、ありがとうございます。本日からこちらでお世話になりますソフィアです。皆さん、よろしくお願いします」

ソフィアも丁寧に挨拶すると、30代半ばと思しき女性が前に出てきた。

「この度、奥様のお世話をさせていただことになりましたメイドのベスと申します。どうぞよろしくお願いいたします。では、お部屋にご案内させていただきますね?」

ベスはニコリと笑みを浮かべる。

その後……ソフィアは驚愕の事実を知ることになるのだった――
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

お望み通り、別れて差し上げます!

珊瑚
恋愛
「幼なじみと子供が出来たから別れてくれ。」 本当の理解者は幼なじみだったのだと婚約者のリオルから突然婚約破棄を突きつけられたフェリア。彼は自分の家からの支援が無くなれば困るに違いないと思っているようだが……?

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

処理中です...