挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

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第199話 歳月

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 18時――

「ただいまー」

仕事を終え、屋敷に帰ってくるとルークが笑顔で駆け寄ってきた。

「お帰りなさい!お母さんっ!」

そして胸の中に飛び込んでくる。
頭を撫でながら、私はいつものようにルークに尋ねた。

「ただいま、ルーク。いい子にしていた?」

「うん。あのね、今日算数のテストで100点もらえたんだよ!」

「まぁ、100点を取ったの?凄いわね」

「お母さんの教え方が上手だからだよ」


するとそこへ母が現れた。

「お帰りなさい、エルザ」

「ただいま、お母様」

「本当にルークは賢いわ。また算数のテストで満点を貰ったのだから。計算が得意なのは流石エルザの子ね?」

「そ、そう?ありがとう……。あの、お父様は本日会社の人達と会食があるから食事はいらないと言っていたわ」

「あら、そうなのね?それじゃ、3人で夕食にしましょうか?もうダイニングに準備が出来ているのよ」

「あのね、お母さん。今日はビーフシチューなんだよ」

ルークが嬉しそうに話しかけてくる。

「それは良かったわね。ルークはビーフシチューが好きだもの」

「うん!」

ルークの頭を撫でると、私達は3人揃ってダイニングルームへ足を向けた。



**

「あのね、今日は学校で図工の時間に絵を描いたんだよ。それで……」

夕食の時間にルークの話を聞くのが今ではすっかり日課になっていた。
時が流れるのは早いもので、あの夜のセシルとの別れから10年の歳月が流れていた。

実家に戻った私は何とか父と母を説得し、会社の経理の仕事をさせてもらえることになった。
ルークがまだ幼い頃は家で帳簿をつける仕事をしていたけれども、小学生になってからは会社に出勤していた。


 そして一方、セシルの方は『カリス』に旅立った頃は一月に二度は手紙が届いていた。
手紙の内容は自分の今の生活や仕事のことばかりだったが、セシルの近況を知ることが出来るのは嬉しいことだった。

けれども時が経つに連れ、手紙の回数は減っていった。
一月に二度届いていた手紙がやがて、二ヶ月に一度となっていき…3ヶ月に一度となっていった。
そしてここ2年あまりセシルからの手紙は届かなくなっていた。
連絡が取れなくなってからは一度、セシルに手紙を書いたことがあったけれども住所が変わってしまったのか、宛先不明で返信されてしまった

アンバー家とはすっかり疎遠になってしまっていったので、セシルの事を尋ねるのは躊躇われた。
そこで私は、きっとセシルは想い人が出来たので私への連絡を断ったのだろうと割り切ることにした。
もともと明確な約束をしていたわけではないし、セシルを縛るつもりも私には無かったからだ。


 その一方でアンバー家の事業は成長を成し遂げ、今では諸外国にもその会社の名前が知れ渡るまでになっていた。


そんなある日……

私の周囲が大きく動いた――。

 

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