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第172話 セシルの計らい
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「懐かしいわ……」
フィリップが使っていた部屋は彼が生前使用していた時と、全く変わりが無かった。
きっと離れの使用人の人達が気を使って、残しておいてくれたのだろう。
「フィリップ……」
眠っているルークを抱いたまま、フィリップが使用していた書斎机の大きな肘掛け椅子に座ってみた。
「……」
まるで背後からフィリップに抱きしめて貰っているような安心感を感じる。
「フィリップの香りがまだ残っているのね……」
胸に熱いものが込み上げ、目尻に涙が浮かびそうになって慌てて目を擦った。
「駄目よ、いつまでも悲しんでいてばかりじゃ…。私にはまだ抱えている問題があるし、ルークの為にも強くならなくちゃいけないのだから」
そして何気なく正面を見ると、目の前には大きな本棚が並んでいる。
そう言えば、まだ彼の本心を知らないまま結婚した時……本をプレゼントしたことが頭をよぎった。
フィリップにプレゼントしたものの、私は一度も読んだことが無かった。
「そうね。この離れにいる間はフィリップの本を読んでみようかしら」
ルークを起こさないように立ち上がると、私は本棚へ向かった。
「…あった、これだわ」
その本はすぐに見つかった。何故なら一番目立つ中心に並べられていたからだ。
本棚を開けて、扉を開くと早速並べられた3冊の本を取り出した。
「フィリップ、借りていくわね」
そっと言葉にし、、本棚の扉を閉じた時――。
「あ、こちらにいらっしゃったのですか?エルザ様」
執事のチャールズさんが開け放たれた扉から姿を見せた。
「はい、フィリップの部屋を見に来ていました。でも驚きました……彼が使っていた時と全く変わっていないのですから」
「ええ、それはセシル様からの指示があったからです」
「え?セシルの?」
意外な言葉にドキリとした。
「はい、尤もそれは記憶を失う前のセシル様が命じたことですけれども。あの方が仰ったのです。エルザ様の為に、この部屋はこのまま残しておくようにと」
「え……?」
「セシル様仰っておりました。エルザ様がいつか、フィリップ様のことを懐かしく思い、このお屋敷にいらした時の為にこのままこの部屋を残しておくようにと」
「セシルが…そんなことを……?」
「ええ、左様でございます。今はまだ辛くて入る気にはなれないかもしれないけれど、時が経てばいつか懐かしく思う日が来るだろうからと」
「そ、そうだったのですか……」
それではセシルの言葉があったから、今もこの部屋は以前と全く変わらない状況のまま…?
「あ、そう言えばチャールズさん。私を探していたのですか?」
「はい、そうです。実は今夜の食事ですが……セシル様がエルザ様と御一緒の食事を望まれておりまして…」
チャールズさんが申し訳なさ気に私を見た。
「ええ、分かりました。行きます。セシルにそう伝えて下さい」
「分かりました。早速伝えて参りますね。それでは失礼致します」
ホッとした様子でチャールズさんは部屋を出て行った。
「そうよね。セシルは私の為を思ってフィリップの部屋をそのままにしておいてくれたのだから…。彼が私のことを妻と思っているうちは、変に避けないほうがいいかもしれないわよね…」
私はそう、自分に言い聞かせた――。
フィリップが使っていた部屋は彼が生前使用していた時と、全く変わりが無かった。
きっと離れの使用人の人達が気を使って、残しておいてくれたのだろう。
「フィリップ……」
眠っているルークを抱いたまま、フィリップが使用していた書斎机の大きな肘掛け椅子に座ってみた。
「……」
まるで背後からフィリップに抱きしめて貰っているような安心感を感じる。
「フィリップの香りがまだ残っているのね……」
胸に熱いものが込み上げ、目尻に涙が浮かびそうになって慌てて目を擦った。
「駄目よ、いつまでも悲しんでいてばかりじゃ…。私にはまだ抱えている問題があるし、ルークの為にも強くならなくちゃいけないのだから」
そして何気なく正面を見ると、目の前には大きな本棚が並んでいる。
そう言えば、まだ彼の本心を知らないまま結婚した時……本をプレゼントしたことが頭をよぎった。
フィリップにプレゼントしたものの、私は一度も読んだことが無かった。
「そうね。この離れにいる間はフィリップの本を読んでみようかしら」
ルークを起こさないように立ち上がると、私は本棚へ向かった。
「…あった、これだわ」
その本はすぐに見つかった。何故なら一番目立つ中心に並べられていたからだ。
本棚を開けて、扉を開くと早速並べられた3冊の本を取り出した。
「フィリップ、借りていくわね」
そっと言葉にし、、本棚の扉を閉じた時――。
「あ、こちらにいらっしゃったのですか?エルザ様」
執事のチャールズさんが開け放たれた扉から姿を見せた。
「はい、フィリップの部屋を見に来ていました。でも驚きました……彼が使っていた時と全く変わっていないのですから」
「ええ、それはセシル様からの指示があったからです」
「え?セシルの?」
意外な言葉にドキリとした。
「はい、尤もそれは記憶を失う前のセシル様が命じたことですけれども。あの方が仰ったのです。エルザ様の為に、この部屋はこのまま残しておくようにと」
「え……?」
「セシル様仰っておりました。エルザ様がいつか、フィリップ様のことを懐かしく思い、このお屋敷にいらした時の為にこのままこの部屋を残しておくようにと」
「セシルが…そんなことを……?」
「ええ、左様でございます。今はまだ辛くて入る気にはなれないかもしれないけれど、時が経てばいつか懐かしく思う日が来るだろうからと」
「そ、そうだったのですか……」
それではセシルの言葉があったから、今もこの部屋は以前と全く変わらない状況のまま…?
「あ、そう言えばチャールズさん。私を探していたのですか?」
「はい、そうです。実は今夜の食事ですが……セシル様がエルザ様と御一緒の食事を望まれておりまして…」
チャールズさんが申し訳なさ気に私を見た。
「ええ、分かりました。行きます。セシルにそう伝えて下さい」
「分かりました。早速伝えて参りますね。それでは失礼致します」
ホッとした様子でチャールズさんは部屋を出て行った。
「そうよね。セシルは私の為を思ってフィリップの部屋をそのままにしておいてくれたのだから…。彼が私のことを妻と思っているうちは、変に避けないほうがいいかもしれないわよね…」
私はそう、自分に言い聞かせた――。
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