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第160話 突然の…
しおりを挟む「セシル、子供って……?」
嫌な予感がする。まさか……?
「子供って言ったら1人しかいないじゃないか。ルークだよ」
「え……?」
「ルークにも早く会いたいしな……。そうだ、エルザ。明日にでも連れてきてくれないかな?」
「セシル、それは……」
それ以上、なんと声を掛ければよいか分からなかった。すると、セシルは違う意味で解釈したようだった。
「あ、ひょっとするとここは病室だから赤子は連れて来れないのか?」
「え、ええ……。実はそうなのよ」
ここはそう返事をして誤魔化すしか無いようだ。
「そう…か…。なら仕方ないな。諦めるか」
「ええ、そうね…ごめんなさい。分かったら、横になって。早く身体を治さないと。それじゃ、私はお義父様とお義母様にセシルの目が覚めたことを報告してくるから」
「ああ、宜しく頼むよ」
「ええ」
そして私はセシルに見送られながら病室を後にした――。
**
『何ですって?!セシルが目を覚ましたですって?』
病院の受話器越しから義母の驚きの声が聞こえてきた。
「はい、そうなのです。本日私が病室に様子を見に行くとすぐに目を覚ましたのです。ご連絡が遅くなって申し訳ございません。……色々あったものですから…」
『色々って?何があったの?』
「実は、セシルの記憶が……」
私はこれまでの経緯を全て話し……私の話を聞いた義母はその話に電話越しで涙を流した――。
**
「それで?母さんは何て言ってたんだ?」
病室に戻ると、セシルは早速電話の内容を尋ねてきた。
「ええ、貴方が目を覚ましたことを報告したらとても驚いていたし、喜ばれていたわ」
セシルには義母と交わした本当の会話を知らせるわけにはいかなかった。
「そうか、かなり心配させてしまっただろうからな……」
しんみりと肩を落とすセシル。
「あのね。それで今お義母様がこちらへ向かっているの。だからお義母様が病室に来られたら……私は今日は…帰るわね?」
勘違いしているセシルの側に今日はもうこれ以上いるわけにはいかなかった。
「そう…なのか?それは残念だな……」
「ごめんなさい……ルークのお世話が…あるから」
あまりルークの話はするわけにはいかなかったけれども、他に理由が思いつかなかった。
「そうだよな?確かにルークの世話があるし…ずっとこの病室にいるわけにはいかないよな?あれ…?そう言えば、誰がルークの世話をしているんだ?」
「え、ええ……。私の母に…みてもらっているのよ」
「え?エルザのお母さんに?俺の母さんじゃなくて?」
セシルが驚いた様子で目を見張る。
「そうなの。ほ、ほら。私…今も子育てで里帰りしているからじゃない」
「え?そう…だったか?」
セシルが頭を押さえながら尋ねてきた。
「ええ、そうよ?ルークを産んだ後体調が悪くてずっと里帰りしていたじゃない?」
「う…。そ、そう言えばそうだったかも…?」
セシルは頭を押さえながら、顔を苦痛で歪める。
「大丈夫っ?!セシル!頭が痛いのでしょう?すぐに横になって」
慌ててセシルのそばに寄って、身体を支えたその時……。
「!」
セシルの腕が伸びてきて……気づけば私はセシルにキスをされていた――。
嫌な予感がする。まさか……?
「子供って言ったら1人しかいないじゃないか。ルークだよ」
「え……?」
「ルークにも早く会いたいしな……。そうだ、エルザ。明日にでも連れてきてくれないかな?」
「セシル、それは……」
それ以上、なんと声を掛ければよいか分からなかった。すると、セシルは違う意味で解釈したようだった。
「あ、ひょっとするとここは病室だから赤子は連れて来れないのか?」
「え、ええ……。実はそうなのよ」
ここはそう返事をして誤魔化すしか無いようだ。
「そう…か…。なら仕方ないな。諦めるか」
「ええ、そうね…ごめんなさい。分かったら、横になって。早く身体を治さないと。それじゃ、私はお義父様とお義母様にセシルの目が覚めたことを報告してくるから」
「ああ、宜しく頼むよ」
「ええ」
そして私はセシルに見送られながら病室を後にした――。
**
『何ですって?!セシルが目を覚ましたですって?』
病院の受話器越しから義母の驚きの声が聞こえてきた。
「はい、そうなのです。本日私が病室に様子を見に行くとすぐに目を覚ましたのです。ご連絡が遅くなって申し訳ございません。……色々あったものですから…」
『色々って?何があったの?』
「実は、セシルの記憶が……」
私はこれまでの経緯を全て話し……私の話を聞いた義母はその話に電話越しで涙を流した――。
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「それで?母さんは何て言ってたんだ?」
病室に戻ると、セシルは早速電話の内容を尋ねてきた。
「ええ、貴方が目を覚ましたことを報告したらとても驚いていたし、喜ばれていたわ」
セシルには義母と交わした本当の会話を知らせるわけにはいかなかった。
「そうか、かなり心配させてしまっただろうからな……」
しんみりと肩を落とすセシル。
「あのね。それで今お義母様がこちらへ向かっているの。だからお義母様が病室に来られたら……私は今日は…帰るわね?」
勘違いしているセシルの側に今日はもうこれ以上いるわけにはいかなかった。
「そう…なのか?それは残念だな……」
「ごめんなさい……ルークのお世話が…あるから」
あまりルークの話はするわけにはいかなかったけれども、他に理由が思いつかなかった。
「そうだよな?確かにルークの世話があるし…ずっとこの病室にいるわけにはいかないよな?あれ…?そう言えば、誰がルークの世話をしているんだ?」
「え、ええ……。私の母に…みてもらっているのよ」
「え?エルザのお母さんに?俺の母さんじゃなくて?」
セシルが驚いた様子で目を見張る。
「そうなの。ほ、ほら。私…今も子育てで里帰りしているからじゃない」
「え?そう…だったか?」
セシルが頭を押さえながら尋ねてきた。
「ええ、そうよ?ルークを産んだ後体調が悪くてずっと里帰りしていたじゃない?」
「う…。そ、そう言えばそうだったかも…?」
セシルは頭を押さえながら、顔を苦痛で歪める。
「大丈夫っ?!セシル!頭が痛いのでしょう?すぐに横になって」
慌ててセシルのそばに寄って、身体を支えたその時……。
「!」
セシルの腕が伸びてきて……気づけば私はセシルにキスをされていた――。
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