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第155話 冷たい父と母
しおりを挟む セシルの入院している病室の前に到着した私と母。
早速私は部屋の扉をノックした。
コンコン
すると扉が開かれ、姿を現したのは驚くことに父だった。
「まぁ…お父様」
「エルザか…うん?お前も一緒に屋敷に戻っていたのか?」
父は背後にいる母に気付き、声を掛けてきた。
「ええ、そうよ。ひょっとして……アンバー夫妻はお留守なの?」
「ああ、そうだ。エルザからセシルの付き添いをしてもらう許可が得られたからと、ホテルを手配しに席を外しているのだが……」
父は何かいいたげな目で私を見ると、ため息を付いた。
「エルザ、本当にいいのか?セシルの病院の付き添いなんて……」
「ええ、お父様。アンバー家では色々セシルにお世話になったし、お義父様やお義母様にも悪いことをしてしまったったから…少しは役に立たないといけないでしょう?だって私はまだアンバー家の籍を抜いていないのだから」
「うむ……確かにそれはそうだが…。でも、まぁここでアンバー家に恩を売っておくのも良いかもしれない。何しろ我が家は一度ローズがフィリップとの結婚を前に駆け落ちしてしまった為に、アンバー家からはよく思われていなかったからな」
「え……?」
私は父のあまりの発言に目を見開いた。
「お父様、一体何を言い出すの?」
「ええ、あなた。そうではないでしょう?さっさと籍を抜いてさえ入れば、エルザはこんな面倒なことに巻き込まれずに済んだのですよ」
母はもっと驚きの発言をした。
「待って、お父様、お母様。今の発言はあまりにも不謹慎だと思わないの?しかも…仮にもこんな大怪我を負って意識のない人の前で…」
「…まぁ、たしかにセシルは気の毒だと思うが…我々を介入させるほうがどうかと思わないのか?」
「そうよ、本来はもうエルザには関係ない話なのよ。だけど、私は貴方の意見を尊重してあげたのよ?いい?セシルに付き合うのであれば、アンバー家と取り決めをしなさい。この日までに目を覚まさなければ付き添いを終わると決めて、念書を交わしなさい?」
「そんな念書って…」
父と母の意見を聞いて、私はショックだった。
2人はセシルのことをこれっぽっちも心配していなかったのだ。
セシルは両親にとって、子供の頃から良く知っている相手なのに…。
もしセシルが今、目を覚ましていたとして……父と母の話を聞いたらどんなふうに思うだろう?
その時――
ガチャリと扉が開かれ、義父母が部屋の中に現れた。
「まぁ、エルザ。夫人、お戻りになっておりましたのね?」
「はい、たった今戻りました」
私が答えると、次に義父が声を掛けてきた。
「済まなかったね。エルザ。我々の我儘を聞いてくれて…。お詫びと言っては何だが、この病院の直ぐ近くにあるホテルのスイートルームを手配させてもらったよ。では早速ホテルに向かおうか?今日の付き添いはもうしなくても大丈夫だから」
「はい、ありがとうございます」
義父の言葉は助かった。
正直、病院と屋敷を2往復もしたので身体はとても疲れていた。
そして、私達は全員でアンバー夫妻が手配してくれたホテルへ向かった――。
早速私は部屋の扉をノックした。
コンコン
すると扉が開かれ、姿を現したのは驚くことに父だった。
「まぁ…お父様」
「エルザか…うん?お前も一緒に屋敷に戻っていたのか?」
父は背後にいる母に気付き、声を掛けてきた。
「ええ、そうよ。ひょっとして……アンバー夫妻はお留守なの?」
「ああ、そうだ。エルザからセシルの付き添いをしてもらう許可が得られたからと、ホテルを手配しに席を外しているのだが……」
父は何かいいたげな目で私を見ると、ため息を付いた。
「エルザ、本当にいいのか?セシルの病院の付き添いなんて……」
「ええ、お父様。アンバー家では色々セシルにお世話になったし、お義父様やお義母様にも悪いことをしてしまったったから…少しは役に立たないといけないでしょう?だって私はまだアンバー家の籍を抜いていないのだから」
「うむ……確かにそれはそうだが…。でも、まぁここでアンバー家に恩を売っておくのも良いかもしれない。何しろ我が家は一度ローズがフィリップとの結婚を前に駆け落ちしてしまった為に、アンバー家からはよく思われていなかったからな」
「え……?」
私は父のあまりの発言に目を見開いた。
「お父様、一体何を言い出すの?」
「ええ、あなた。そうではないでしょう?さっさと籍を抜いてさえ入れば、エルザはこんな面倒なことに巻き込まれずに済んだのですよ」
母はもっと驚きの発言をした。
「待って、お父様、お母様。今の発言はあまりにも不謹慎だと思わないの?しかも…仮にもこんな大怪我を負って意識のない人の前で…」
「…まぁ、たしかにセシルは気の毒だと思うが…我々を介入させるほうがどうかと思わないのか?」
「そうよ、本来はもうエルザには関係ない話なのよ。だけど、私は貴方の意見を尊重してあげたのよ?いい?セシルに付き合うのであれば、アンバー家と取り決めをしなさい。この日までに目を覚まさなければ付き添いを終わると決めて、念書を交わしなさい?」
「そんな念書って…」
父と母の意見を聞いて、私はショックだった。
2人はセシルのことをこれっぽっちも心配していなかったのだ。
セシルは両親にとって、子供の頃から良く知っている相手なのに…。
もしセシルが今、目を覚ましていたとして……父と母の話を聞いたらどんなふうに思うだろう?
その時――
ガチャリと扉が開かれ、義父母が部屋の中に現れた。
「まぁ、エルザ。夫人、お戻りになっておりましたのね?」
「はい、たった今戻りました」
私が答えると、次に義父が声を掛けてきた。
「済まなかったね。エルザ。我々の我儘を聞いてくれて…。お詫びと言っては何だが、この病院の直ぐ近くにあるホテルのスイートルームを手配させてもらったよ。では早速ホテルに向かおうか?今日の付き添いはもうしなくても大丈夫だから」
「はい、ありがとうございます」
義父の言葉は助かった。
正直、病院と屋敷を2往復もしたので身体はとても疲れていた。
そして、私達は全員でアンバー夫妻が手配してくれたホテルへ向かった――。
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