挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

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第146話 両親との会話

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ベルクール男爵様とコレット令嬢が帰った後、自室で眠っているルークの様子を見ていると部屋の扉からノック音と共に父の声が聞こえた。

コンコン

『エルザ、ちょっといいか?』

「ええ、どうぞ」

返事をすると扉が開かれ、父と母が部屋の中に入ってきた。

「お母様も一緒だったのね?」

「ええ、3人で話をしたかったから……ルークはもう寝たのかしら?」

「ええ、さっき寝たばかりよ?」

「そうか…なら話が出来るな?座って話をすることにしよう」

「ええ」

父に促されてカウチソファに座ると、2人が向かい側のソファに座った。

「それで…話というのは他でもない。エルザ、コレット様とどんな話をしたんだ?」

早速父が尋ねてきた。

「ええ……コレット様は私とセシルの仲を疑って、話をされに来たのよ。知らなかったけど、貴族の間では未だに私とセシルの噂があるみたいなの。…驚いたわ」

「そうか……葬儀の会食の席でエルザと亡くなったフィリップのことが話題に登ったのだよ。あのときは残されたお前がどれほどフィリップのことを愛していたのかが分かったと多くの人がそう言っていたのだが……。やはり一部の貴族たちはエルザとセシルの仲を酷く疑っていたしな…。ひょっとすると彼等が2人の噂を流しているのかもしれない」

父が眉をしかめた。

「そうだったの…?」

そんなこと、少しも知らなかった。

「ええ、そうよ。だから、一刻も早くアンバー家から貴女を連れ出したかったのよ。このままではエルザとセシルの名誉に傷がつくと思ったから」

名誉なんて…随分母は大げさな言い方をする。

「お母様…セシルならいざ知らず、私の名誉なんて…」

言いかけるも、母は首を振った。

「いいえ、エルザ。貴女の名誉も重要よ。だって…いつまでもこのままというわけにはいかないでしょう?貴女はまだ21歳なのだから、今はまだ無理だとしても…いずれは誰かと再婚して…」

私が何か言いかけようとした時、父が母を止めた。

「よさないか、母さん。まだフィリップが亡くなって2ヶ月しか経過していない。それにまだエルザの籍だって、アンバー家から抜けていないんだぞ?」

アンバー家から籍を抜く…。
でも、まだ私は例えフィリップが亡くなっても…彼の妻でいたかった。

「あの…やっぱり、今すぐ…籍を抜かなければならないのかしら…?」

なるべく両親の視線から目をそらせながら2人に問いかけた。

「エルザ…」
「何を言い出すの?エルザ」

父の沈痛な声とは裏腹に母の声には苛立ちが混じっていた。

「貴女はもうあの屋敷に帰ることは無いのよ?だからこの際籍を抜いて、ブライトン家に戻るべきだ思わない?」

「よさないか、母さん。その件は今話をしなくても…それに先方に無断で籍を抜くわけにもいかないだろう?」

「で、でもあなた…!」

父の言葉に、尚も母は食い下がろうとした。

「お母様、ここはお父様の言う通りアンバー家と話し合ってから決めたいの。…いいでしょう?」

「分かったわ。でも…なるべく早めに話し合いを持って貰うようにあなたの方から先方に伝えて下さいね?」

「ああ…分かったよ。ところで、エルザ。他にコレット様とはどんな話をしたんだい?」

「それは…。セシルとコレット様に関する話だったけど……でも、ごめんなさい。私の口からは言えないわ。だって、2人のプライベートな話を…コレット様の許可も得ていないのに、話すわけにはいかないでしょう?」

「「……」」

流石に今の話で父と母は悪いと思ったのかそれ以上尋ねて来ることは無かった。
それが何となく申し訳ない気がして、代わりに私は別の話をした。

「でも、コレット様は意外と良い方だったわ。こんな出会い方でなければ…良いお友達になれたかもしれないわ」

「そう…なの?それなら良かったわ」

母が安堵のため息をついた。

「お母様?」

「いや…実は内心母さんと心配していたんだよ。相手は貴族令嬢で、しかもセシルの婚約相手だ。何かお前に言いがかりをつけてくるのではないかと思ったが…。エルザがそう言うなら、悪い女性では無かったのだろう」

「ええ、大丈夫よ。お父様、とても素直で可愛らしい方だったわ」

「そうか。まぁ…もう我が家には来ることは無いと思う。今夜はご苦労だったな。それじゃ私達はもう行くよ」

父はそれだけ告げると、母を連れて部屋を出て行った。


パタン…

扉が閉ざされ、1人になると私は思った。

セシルはこの先、どうするつもりなのだろう――と。


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