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第128話 セシルの来訪
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あれから早いもので2カ月が経過していた。
すっかり身体の調子も良くなり、最近ではルークの世話は全て1人で出来る様になっていた。
本当はもっと早くアンバー家に戻る予定だったのに、母がどうしても産後1カ月はむやみに動いてはいけないと引き留めてきた。
そこで母に言われた通り1カ月実家に滞在し、その後アンバー家に戻ろうと思ったのだが両親から何だかんだと引き留めらていた。
そして結局2カ月も実家に滞在することになってしまったのだった―。
****
コンコン
丁度ルークの授乳を終えて、胸元を直している時に部屋の扉がノックされた。
「はい」
返事をすると母の声が聞こえて来た。
『エルザ、私よ。入っていいかしら?』
「ええ、どうぞ」
「お邪魔するわね」
扉を開けて母が部屋の中に入って来た。
「あら、ひょっとして授乳が終わったところだったの?」
「ええ、そうよ。フフフ…ルーク、今日も沢山飲んでくれたの。体重も増えて来たわ」
そしてベビーベッドの中のルークを抱き上げた。
「可愛いわね…目元なんか貴女にそっくりだわ」
母が顔をほころばせてルークを見ている。
「そう?私はフィリップの方によく似ていると思うけど?」
「フィリップ…」
すると何故か母の顔が曇る。
「どうかしたの?」
「い、いえ。何でもないのよ。ちょっと2人の顔を見に来ただけだから」
「そうだったの?でも丁度良かったわ。話したいことがあったから」
そろそろ2カ月になる。
母に話をするにはちょうど頃合いが良いだろう。
「話って何かしら?」
「ええ、もう2カ月が過ぎたから、アンバー家に戻ろかと思っているの」
「え?」
途端に母の顔が青ざめた。
「どうかしたの?」
「い、いえ…何でもないのよ」
母は首を振るも、何だか様子がおかしい。随分動揺しているように見える。
「お母様?何でもないことは無いでしょう?何故そんなに青くなっているの?」
「そ、それは…」
その時――。
「いい加減にして下さい!俺はエルザの気持ちを聞きに来たんですっ!どうしても会わせないならこちらから会いに行くまでですっ!」
「お、お待ちくださいっ!」
セシルの声がこちらに向かって近付いてくる。そしてそれを引き留めようとする家政婦さんの声。
「え?セシルが来ていたの?!」
「え、ええ…じ、実はそうなのよ…」
母が答えにくそうに返事をする。
するとそこへ扉がノックされる音が聞こえた。
コンコン
『エルザ。俺だ、突然訪ねて悪いが…部屋にいるんだろう?会えないか?』
セシルの声が聞こえた。
母をチラリと見ると、必死で首を振っている。余程母は私とセシルを会わせたくはないようだ。けれど、私に会いに来ているのを理由もなく追い返すなんて真似私には出来るはずは無かった。
「ええ、どうぞ。中に入って」
「エルザッ!」
母の静止も聞かず、私は返事をした。
ガチャ…
すぐに扉は開かれ、セシルが部屋の中に現れた。
「エルザ…久しぶりだな。やっと…会えた」
そして笑みを浮かべる。
「え?ええ。そうね?」
やっと…?
どういう意味なのだろう?
「夫人はこちらにいらしたのですね。さてはエルザを足止めしようとしていたのですか?」
セシルは部屋にいた母を見ると、何処か冷たい口調で声を掛けてきた。
「い、いいえ。べ、別に足止めなんて…わ、私はそんなつもりでは…」
母は明らかに動揺している。
「ねぇ、セシル。どういうことなの?さっきから…やっと会えたとか、私を足止めしようとしていたとか‥‥私には何が何だかさっぱり分からないのだけど」
するとセシルがため息をついた。
「そうか…やはりエルザは何も聞かされていなかったんだな」
「え…?」
「俺はもう何通も何通も手紙をエルザに出していたし、毎週末エルザに会わせて欲しいと頼みに来ていたんだ。それなのに今まで一度も会わせてもらうどころか、手紙の返事すら貰えたことは無かったからな」
「え…?」
全て初めて耳にすることばかりだった。
「どういうことなの?」
私は怯えた様子で立っている母を見つめた――。
すっかり身体の調子も良くなり、最近ではルークの世話は全て1人で出来る様になっていた。
本当はもっと早くアンバー家に戻る予定だったのに、母がどうしても産後1カ月はむやみに動いてはいけないと引き留めてきた。
そこで母に言われた通り1カ月実家に滞在し、その後アンバー家に戻ろうと思ったのだが両親から何だかんだと引き留めらていた。
そして結局2カ月も実家に滞在することになってしまったのだった―。
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コンコン
丁度ルークの授乳を終えて、胸元を直している時に部屋の扉がノックされた。
「はい」
返事をすると母の声が聞こえて来た。
『エルザ、私よ。入っていいかしら?』
「ええ、どうぞ」
「お邪魔するわね」
扉を開けて母が部屋の中に入って来た。
「あら、ひょっとして授乳が終わったところだったの?」
「ええ、そうよ。フフフ…ルーク、今日も沢山飲んでくれたの。体重も増えて来たわ」
そしてベビーベッドの中のルークを抱き上げた。
「可愛いわね…目元なんか貴女にそっくりだわ」
母が顔をほころばせてルークを見ている。
「そう?私はフィリップの方によく似ていると思うけど?」
「フィリップ…」
すると何故か母の顔が曇る。
「どうかしたの?」
「い、いえ。何でもないのよ。ちょっと2人の顔を見に来ただけだから」
「そうだったの?でも丁度良かったわ。話したいことがあったから」
そろそろ2カ月になる。
母に話をするにはちょうど頃合いが良いだろう。
「話って何かしら?」
「ええ、もう2カ月が過ぎたから、アンバー家に戻ろかと思っているの」
「え?」
途端に母の顔が青ざめた。
「どうかしたの?」
「い、いえ…何でもないのよ」
母は首を振るも、何だか様子がおかしい。随分動揺しているように見える。
「お母様?何でもないことは無いでしょう?何故そんなに青くなっているの?」
「そ、それは…」
その時――。
「いい加減にして下さい!俺はエルザの気持ちを聞きに来たんですっ!どうしても会わせないならこちらから会いに行くまでですっ!」
「お、お待ちくださいっ!」
セシルの声がこちらに向かって近付いてくる。そしてそれを引き留めようとする家政婦さんの声。
「え?セシルが来ていたの?!」
「え、ええ…じ、実はそうなのよ…」
母が答えにくそうに返事をする。
するとそこへ扉がノックされる音が聞こえた。
コンコン
『エルザ。俺だ、突然訪ねて悪いが…部屋にいるんだろう?会えないか?』
セシルの声が聞こえた。
母をチラリと見ると、必死で首を振っている。余程母は私とセシルを会わせたくはないようだ。けれど、私に会いに来ているのを理由もなく追い返すなんて真似私には出来るはずは無かった。
「ええ、どうぞ。中に入って」
「エルザッ!」
母の静止も聞かず、私は返事をした。
ガチャ…
すぐに扉は開かれ、セシルが部屋の中に現れた。
「エルザ…久しぶりだな。やっと…会えた」
そして笑みを浮かべる。
「え?ええ。そうね?」
やっと…?
どういう意味なのだろう?
「夫人はこちらにいらしたのですね。さてはエルザを足止めしようとしていたのですか?」
セシルは部屋にいた母を見ると、何処か冷たい口調で声を掛けてきた。
「い、いいえ。べ、別に足止めなんて…わ、私はそんなつもりでは…」
母は明らかに動揺している。
「ねぇ、セシル。どういうことなの?さっきから…やっと会えたとか、私を足止めしようとしていたとか‥‥私には何が何だかさっぱり分からないのだけど」
するとセシルがため息をついた。
「そうか…やはりエルザは何も聞かされていなかったんだな」
「え…?」
「俺はもう何通も何通も手紙をエルザに出していたし、毎週末エルザに会わせて欲しいと頼みに来ていたんだ。それなのに今まで一度も会わせてもらうどころか、手紙の返事すら貰えたことは無かったからな」
「え…?」
全て初めて耳にすることばかりだった。
「どういうことなの?」
私は怯えた様子で立っている母を見つめた――。
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