121 / 204
第119話 葬儀準備
しおりを挟む
その夜―
「エルザ、具合の方はどうなの?」
ルークの授乳を終えた私に母が不意に尋ねてきた。
「そうね…大分良くなってきたわ…」
母にルークを託すと再びベッドに身体を横たえ、ため息をついた。
「ごめんなさい…お母様。ルークをお願いしっぱなしで…」
「いいのよ。そんなこと気にしなくて。貴女は…今大変な立場にいるのだから」
母ははっきりと口にはしないけれども、その声には同情が混ざっているのが分かる。
「エルザ、明日の葬儀…無理して参列することは無いわよ?まだそんな状態なのに」
「駄目よ…何が何でも明日の葬儀には参列するわ。だって…フィリップとの最後のお別れなのよ…」
私は自分の身体がこんな状態になってから、一度もフィリップの顔を見ていない。
最後に…フィリップの身体が埋められてしまう前に、どうしても一目顔を見たかった。
「分かったわ。エルザの喪服はもう用意してあるから、明日はそれを来て参列すればいいわ。ルークのことは私が面倒を見るから、また休みなさい?」
「ええ…ありがとう。お母様…」
本当はこれからの自分の身の振り方や、他にもやるべきことがあるのに何も今はする気が起こらない。
私は考えることを放棄して…目を閉じた―。
****
翌朝午前10時―
私は3日ぶりに起き上がった。
母が用意してくれた喪服に袖を通し、ソファベッドに横たわっていると扉をノックする音が聞こえた。
「きっとセシルかもしれないわね」
喪服に身を包み、ルークを抱っこしていた母が扉を開けた。
カチャ…
「おはよう、セシル。やはり貴方だったのね?」
「おはようございます。お2人を迎えに参りました。…やぁ、ルーク。フフ…可愛いな…兄さんによく似ている…」
セシルの少し寂しげな声が横になっている私の耳に聞こえてきた。
「それでエルザはどうしていますか?車椅子を持ってきたのですが」
「エルザならもう喪服に着替えてソファベッドに横たわっているわ」
「ありがとうございます」
そしてセシルが近付いてくる気配を感じた。
「エルザ…大丈夫か?」
セシルがベッドに横たわる私を覗き込んできた。
「ええ…大丈夫よ」
「大丈夫なものか。顔色が良くないぞ?本当に参列出来るのか?」
「出るわ。だって…フィリップとの最後のお別れなのだから」
「…そうか、分かったよ。それじゃ俺が移動させてやるよ」
セシルが横たわる私を軽々と抱き上げ、車椅子に静かに乗せてくれた。
「ありがとう、セシル」
「いや…」
セシルは何故かじっと私を見つめている。
「どうかしたの?」
「エルザ…ちゃんと食事とっているのか?いくらなんでも軽すぎる。ルークの世話もあるんだから…栄養はちゃんととったほうがいいぞ?」
すると母が会話に混ざってきた。
「ええ、そうなのよ…いくら言ってもエルザったら中々食事を取らないのよ。困っているの」
「だって…食欲がわかないのだもの…」
うつむきながら答えると、セシルが声を掛けてきた。
「よし、それなら今夜から俺と一緒に食事をしよう。いいな?エルザ」
「え…?だけど、今夜はフィリップの葬儀に訪れた方たちと食事会が…」
「いいんだよ。俺はあの場にいないほうが…それに色々と聞きたくない話も耳にいれなくて済むし。父さんと母さんに任せるさ」
「聞きたくない話…?」
「いや、エルザは何も気にしなくていい。それじゃ行こうか?」
「ええ」
そしてセシルは私の車椅子を押すと、礼拝堂へ向った。
そこで、私はセシルの言った言葉の意味を知ることになる――。
「エルザ、具合の方はどうなの?」
ルークの授乳を終えた私に母が不意に尋ねてきた。
「そうね…大分良くなってきたわ…」
母にルークを託すと再びベッドに身体を横たえ、ため息をついた。
「ごめんなさい…お母様。ルークをお願いしっぱなしで…」
「いいのよ。そんなこと気にしなくて。貴女は…今大変な立場にいるのだから」
母ははっきりと口にはしないけれども、その声には同情が混ざっているのが分かる。
「エルザ、明日の葬儀…無理して参列することは無いわよ?まだそんな状態なのに」
「駄目よ…何が何でも明日の葬儀には参列するわ。だって…フィリップとの最後のお別れなのよ…」
私は自分の身体がこんな状態になってから、一度もフィリップの顔を見ていない。
最後に…フィリップの身体が埋められてしまう前に、どうしても一目顔を見たかった。
「分かったわ。エルザの喪服はもう用意してあるから、明日はそれを来て参列すればいいわ。ルークのことは私が面倒を見るから、また休みなさい?」
「ええ…ありがとう。お母様…」
本当はこれからの自分の身の振り方や、他にもやるべきことがあるのに何も今はする気が起こらない。
私は考えることを放棄して…目を閉じた―。
****
翌朝午前10時―
私は3日ぶりに起き上がった。
母が用意してくれた喪服に袖を通し、ソファベッドに横たわっていると扉をノックする音が聞こえた。
「きっとセシルかもしれないわね」
喪服に身を包み、ルークを抱っこしていた母が扉を開けた。
カチャ…
「おはよう、セシル。やはり貴方だったのね?」
「おはようございます。お2人を迎えに参りました。…やぁ、ルーク。フフ…可愛いな…兄さんによく似ている…」
セシルの少し寂しげな声が横になっている私の耳に聞こえてきた。
「それでエルザはどうしていますか?車椅子を持ってきたのですが」
「エルザならもう喪服に着替えてソファベッドに横たわっているわ」
「ありがとうございます」
そしてセシルが近付いてくる気配を感じた。
「エルザ…大丈夫か?」
セシルがベッドに横たわる私を覗き込んできた。
「ええ…大丈夫よ」
「大丈夫なものか。顔色が良くないぞ?本当に参列出来るのか?」
「出るわ。だって…フィリップとの最後のお別れなのだから」
「…そうか、分かったよ。それじゃ俺が移動させてやるよ」
セシルが横たわる私を軽々と抱き上げ、車椅子に静かに乗せてくれた。
「ありがとう、セシル」
「いや…」
セシルは何故かじっと私を見つめている。
「どうかしたの?」
「エルザ…ちゃんと食事とっているのか?いくらなんでも軽すぎる。ルークの世話もあるんだから…栄養はちゃんととったほうがいいぞ?」
すると母が会話に混ざってきた。
「ええ、そうなのよ…いくら言ってもエルザったら中々食事を取らないのよ。困っているの」
「だって…食欲がわかないのだもの…」
うつむきながら答えると、セシルが声を掛けてきた。
「よし、それなら今夜から俺と一緒に食事をしよう。いいな?エルザ」
「え…?だけど、今夜はフィリップの葬儀に訪れた方たちと食事会が…」
「いいんだよ。俺はあの場にいないほうが…それに色々と聞きたくない話も耳にいれなくて済むし。父さんと母さんに任せるさ」
「聞きたくない話…?」
「いや、エルザは何も気にしなくていい。それじゃ行こうか?」
「ええ」
そしてセシルは私の車椅子を押すと、礼拝堂へ向った。
そこで、私はセシルの言った言葉の意味を知ることになる――。
218
あなたにおすすめの小説
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
元侯爵令嬢は冷遇を満喫する
cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。
しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は
「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」
夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。
自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。
お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。
本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。
※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる