挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売

文字の大きさ
114 / 204

第112話 輸血の効果

しおりを挟む
 フィリップがベッドに寝かされたまま私の自室に運ばれてきたのは午後3時を過ぎた頃だった。

コンコン


フィリップを待ちながら縫い物をしていると部屋の扉がノックされた。

「ひょっとしてフィリプが戻ってきたのかしら?」

大きなお腹を下から支えて、立ち上がると扉に向った。

ガチャ…

ノブを回して扉を開けると、そこには先生と2人の看護婦さん。阻止ベッドに寝かされているフィリップの姿があった。

「輸血が終わったのですね?」

「はい、お部屋にご案内して宜しいでしょうか?」

私が尋ねると先生が返事をした。

「はい、お願いします」

頷くと、看護婦さんたちがフィリップが横たわるベッドを押して部屋の中に入ってきた。

「フィリップ…」

声を掛けて覗き込むと、顔の血色がいつもよりも良い彼の眠った姿がそこにある。

「あの、先生…フィリップは…」

「はい。今は薬で眠っておられますが、時期に目を覚まされると思います。副作用も無く、うまくいきましたよ」

先生は笑みを浮かべた。

「そうですか…。ありがとうございます」

安堵のため息を付いてお礼を述べると、フィリップのベッドを運び終えた看護婦さん達が戻ってきた。

「では、我々はこれで失礼します」
「「失礼致します」」

「どうもありがとうございました」

先生に引き続き、看護婦さん達が挨拶をしてきたので私もお礼を述べ…先生たちは部屋から出て行った。


バタン…


扉が閉ざされ、部屋には私と眠っているフィリップの2人だけになった。

「フィリップ…」

名前を呼び、そっと眠っている彼の側に近づく。

「…」

フィリップは静かに眠っている。
頬はすっかりこけてしまってはいるものの普段よりは血色が良い。

「良かった…輸血の効果があったのね…」


 もっとフィリップの側に居たい…。

そこで、部屋に置いてある背もたれ付きの椅子をフィリップの枕元に移動すると、腰掛けた。

フィリップ…。

眠っている彼の姿を見ていると、何故か眠くなってきた。

「ふわぁ…」

口元を押さえて欠伸をすると、私はそっと目を閉じた。

フィリップが目を覚ますまで…少しだけ寝よう…。



****


 私は夢を見ていた。

美しい花畑の中を私は小さな子供の右手を引いて歩いている。そして子供の左手を繋いで歩いているのはフィリップだ。

私達親子3人は笑顔で花畑を歩いている。

そんな素敵な夢だった―。



誰かが髪に触れている気配で目が覚めた。

「う…ん…」

ゆっくり目を開けると、そこにはベッドから起き上がって私の髪にそっと触れているフィリップの姿が飛び込んできた。

「え…?フィリップ…?」

「あ、ごめん…エルザ。起こしちゃったかな?椅子の上で眠っているから心配になって…」

「フィリップ…貴方、1人で起き上がれたの…?」

今までは誰かの支えなしに起き上がれなかったフィリップが身体を起こしている。

「うん。そうだよ。きっとこれも輸血のお陰だよ。あまり頻繁に輸血することは出来ないけれども…お陰で少しは体力が戻ったよ」

「良かった…フィリップ…」

泣きたくなる気持ちをぐっと押さえて私はフィリップの手を取った。

「うん、心配掛けたね…」

フィリップは笑みを浮かべて私の手を握りしめてきた。

実にフィリップが床に伏して半月目のことだった。




輸血後の経過が良かったためその後もフィリップは1週間置きに輸血を行った。


そして…輸血を初めて3週間目…ついに運命の日がやってきた―。
しおりを挟む
感想 171

あなたにおすすめの小説

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】 白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語 ※他サイトでも投稿中

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?

雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。 最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。 ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。 もう限界です。 探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】 私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。 その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。 ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない 自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。 そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが―― ※ 他サイトでも投稿中   途中まで鬱展開続きます(注意)

恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ

恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。 王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。 長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。 婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。 ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。 濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。 ※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています

処理中です...