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第88話 まだ秘密に
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少しの抱擁の後、フィリップが私からそっと身体を離すと尋ねてきた。
「エルザ、お昼はセシルと一緒に食事することになっているんだけど、どうする?」
「え?もうそんな時間だったの?」
時計をみると12時を少し過ぎていた。
「うん、一応セシルにはエルザの様子を見てから書斎に戻ると話はしてあるんだけど」
「そうね。一緒に食事したいのは山々だけど、あまり食欲がないの。少し胸がムカムカして…。もしかしてこれが、つわりというものかしら?」
「え…?まさかもう始まったのかい?それは大変だ。母はつわりが大変だったらしくて、ほとんど何も口にすることが出来なかったらしくて…あ、そうだ…」
不意にフィリップが神妙な顔つきになった。
「エルザ、セシルと両親に君が妊娠したことを告げるの…少し待ってもらってもいいかな?」
「ええ、いいわよ」
「そうかい?ありがとう」
フィリップは笑みを浮かべて私の頭を撫でると立ち上がった。
「それじゃセシルに今日は一緒に食事が出来ないと伝えてくるよ」
「え?いいのよ。そんなことしなくても。だって食事をしながら仕事の話だってあるわけでしょう?」
「う、うん…。確かにそれは…」
「だったらセシルと食事をしてきてちょうだい。私は何か食べれそうなものだけお願いするから…だから、ここで働いている皆には…赤ちゃんが出来たこと、伝えてもいいかしら…?」
「勿論だよ。ここで働く皆は僕が選んだ使用人たちばかりだからね。皆口が固くて信頼出来るから安心して伝えてくれていいよ。それにエルザの体調のことは皆に知っておいて貰ったほうが僕も安心できるからね」
「ありがとう、フィリップ。…愛しているわ」
フィリップの優しい心遣いがとても嬉しかった。
「僕もだよ。エルザ。愛してる」
彼は私を抱き寄せ、軽くキスしてきた。
「それじゃ、又後でね」
「ええ」
そしてフィリップは書斎に戻り、私は又1人になった―。
「取り敢えず、誰か呼んで食事のことについて話したほうがいいわね」
自分に言い聞かせるように呟くと、廊下に出てみた。
すると、丁度良い具合にメイドのクララがこちらへ向って歩いてくる姿が目に入った。
「あ、エルザ様。今お食事の件でお話がありまして伺いました」
クララは急ぎ足でこちらへ来るとすぐに話しかけてきた。
「食事の件で?」
「はい、フィリップ様から今日はエルザ様は自室でお食事をされるので、何が食べたいのか確認して欲しいと先程申しつかりました。お昼のお食事はいかが致しましょうか?」
「ええ、そのことなのだけど…あまり食欲がないので、今はフルーツだけでいいわ」
「え?そうなのですか…?まさかまた胃の具合が悪いのでは…?」
途端に心配そうな視線を向けてくるクララ。
「いいえ、そうではないの。実はね…」
そこで私はそっとクララに耳打ちをした。するとたちまち目を見開くクララ。
「エ、エルザ様…。その話、本当ですか…?」
「ええ、本当よ。離れで働く皆にはこのことを知っておいて貰いたいと思って。それでお願いがあるのだけど、クララから皆に伝えてくれる?」
「は、はいっ!すぐに伝えてきますっ!」
クララは踵を返すと、急ぎ足で去って行った。
「フフフ…きっと、あの様子では皆にすぐ伝わるわよね」
私は幸せ一杯だった。
だから気付かなかったのかも知れない。
この時、フィリップが重大な決意を胸に秘めていたということを―。
「エルザ、お昼はセシルと一緒に食事することになっているんだけど、どうする?」
「え?もうそんな時間だったの?」
時計をみると12時を少し過ぎていた。
「うん、一応セシルにはエルザの様子を見てから書斎に戻ると話はしてあるんだけど」
「そうね。一緒に食事したいのは山々だけど、あまり食欲がないの。少し胸がムカムカして…。もしかしてこれが、つわりというものかしら?」
「え…?まさかもう始まったのかい?それは大変だ。母はつわりが大変だったらしくて、ほとんど何も口にすることが出来なかったらしくて…あ、そうだ…」
不意にフィリップが神妙な顔つきになった。
「エルザ、セシルと両親に君が妊娠したことを告げるの…少し待ってもらってもいいかな?」
「ええ、いいわよ」
「そうかい?ありがとう」
フィリップは笑みを浮かべて私の頭を撫でると立ち上がった。
「それじゃセシルに今日は一緒に食事が出来ないと伝えてくるよ」
「え?いいのよ。そんなことしなくても。だって食事をしながら仕事の話だってあるわけでしょう?」
「う、うん…。確かにそれは…」
「だったらセシルと食事をしてきてちょうだい。私は何か食べれそうなものだけお願いするから…だから、ここで働いている皆には…赤ちゃんが出来たこと、伝えてもいいかしら…?」
「勿論だよ。ここで働く皆は僕が選んだ使用人たちばかりだからね。皆口が固くて信頼出来るから安心して伝えてくれていいよ。それにエルザの体調のことは皆に知っておいて貰ったほうが僕も安心できるからね」
「ありがとう、フィリップ。…愛しているわ」
フィリップの優しい心遣いがとても嬉しかった。
「僕もだよ。エルザ。愛してる」
彼は私を抱き寄せ、軽くキスしてきた。
「それじゃ、又後でね」
「ええ」
そしてフィリップは書斎に戻り、私は又1人になった―。
「取り敢えず、誰か呼んで食事のことについて話したほうがいいわね」
自分に言い聞かせるように呟くと、廊下に出てみた。
すると、丁度良い具合にメイドのクララがこちらへ向って歩いてくる姿が目に入った。
「あ、エルザ様。今お食事の件でお話がありまして伺いました」
クララは急ぎ足でこちらへ来るとすぐに話しかけてきた。
「食事の件で?」
「はい、フィリップ様から今日はエルザ様は自室でお食事をされるので、何が食べたいのか確認して欲しいと先程申しつかりました。お昼のお食事はいかが致しましょうか?」
「ええ、そのことなのだけど…あまり食欲がないので、今はフルーツだけでいいわ」
「え?そうなのですか…?まさかまた胃の具合が悪いのでは…?」
途端に心配そうな視線を向けてくるクララ。
「いいえ、そうではないの。実はね…」
そこで私はそっとクララに耳打ちをした。するとたちまち目を見開くクララ。
「エ、エルザ様…。その話、本当ですか…?」
「ええ、本当よ。離れで働く皆にはこのことを知っておいて貰いたいと思って。それでお願いがあるのだけど、クララから皆に伝えてくれる?」
「は、はいっ!すぐに伝えてきますっ!」
クララは踵を返すと、急ぎ足で去って行った。
「フフフ…きっと、あの様子では皆にすぐ伝わるわよね」
私は幸せ一杯だった。
だから気付かなかったのかも知れない。
この時、フィリップが重大な決意を胸に秘めていたということを―。
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