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第75話 彼の為に出来ること
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「お義母様とお義父様には折角素敵なお部屋を用意していただいたのに、バラアレルギーがあった為に使用することが出来ずに大変申し訳なく思っております」
私はお義父様とお義母様が私がバラアレルギーを持っていることをあたかも知らないでいたかのような言い回しをした。
「あ…まぁバラアレルギーがあるのでは仕方が無いわね…。だけど部屋のことは仕方がないとして、何故今迄一度も私達の所へ挨拶に来なかったのかしら?」
お義母様は余程ハーブティーが気に入ったのか、再びカップに口をつけると尋ねてきた。
「はい、それもバラアレルギーに関連しています。あのお部屋で暫くの間過ごしていたのですが、体調が悪化してしまって具合が悪くて寝込んでしまっていたのです。それでご挨拶に伺えませんでした。ご心配おかけしてしまい、申し訳ございません」
本当はバラアレルギーは起こしていなかったけれども体調が悪かったことには違いない。
大丈夫、嘘は…ついていないのだから。
「あ、あら…そんなにバラアレルギーで体調が悪かったの?」
お義母様の態度が少し軟化してきた。
「ええ、そうです。そこで無理を言ってフィリップに別に部屋を用意して貰ったのです。それがここのお部屋になります。何故ラベンダー模様にしたのかですが、私のすきな花ですし、精神を安定させる効果もあるんですよ。あの頃は本当にアレルギーの症状が酷かったですから」
「…」
すると、お義母様がすっかり静かになってしまった。
「お義母様、どうかされましたか?」
「い、いえ。何でも無いのよ…お茶、とても美味しかったわ。それでは私はこれで帰ります」
お義母様はカップをソーサーに戻すと立ち上がった。
「あの、もう宜しいのですか?」
私も立ち上がるとお義母様に声を掛けた。
「ええ、もういいのよ。ちょっと貴女の顔を見に来ただけですから。でも…まぁ、体調が良くなったのなら良かったわ。何しろ貴女にはフィリップの子供を産むと言う大切な役目があるのだから」
お義母様は口元に笑みを浮かべた…けれどもその目は笑ってはいなかった。
「はい、分かりました。フィリップによく似た可愛らしい赤ちゃんが産めるように自分の身体を今後も労ってまいります」
にっこり微笑んで返事をすると、お義母様は少しだけ眉をしかめた。
「そ、そうね。それは良い心がけだわ…。それでは私はこの辺りで失礼するわ」
「はい、お義母様」
「見送りは結構よ」
「承知致しました」
そしてお義母様は私に背を向け、部屋を出ていった―。
パタン…
「ふぅ~…」
扉が閉まると、椅子に座りこみ…思わずため息が漏れてしまった。
疲れた…。
恐らく時間にして30分もお義母様は滞在していなかっただろうけれども、精神的に何だかとても疲れてしまった。
フィリップや両親からある程度話は聞かされていたので覚悟はしていたけれども、お義母様の態度から、私に対する敵意がビシビシと伝わってきた。
「私って…本当にフィリップの両親から憎まれていたのね…」
だからフィリップは自分の病気の事も明かせないのだろうか?
余命が僅かな事も告げられず…人知れず病気と戦って苦しんで…。
フィリップとの結婚生活は長くは続けられないだろうけれども、それでも私は彼の命が尽きる最後の時まで側に寄り添い、彼に幸せな生涯だったと感じさせてあげたい…。
その為にはフィリップが抱える心の負担を少しでも減らしてあげなければ。
それが今の私に出来るただ1つのことなのだから―。
私はお義父様とお義母様が私がバラアレルギーを持っていることをあたかも知らないでいたかのような言い回しをした。
「あ…まぁバラアレルギーがあるのでは仕方が無いわね…。だけど部屋のことは仕方がないとして、何故今迄一度も私達の所へ挨拶に来なかったのかしら?」
お義母様は余程ハーブティーが気に入ったのか、再びカップに口をつけると尋ねてきた。
「はい、それもバラアレルギーに関連しています。あのお部屋で暫くの間過ごしていたのですが、体調が悪化してしまって具合が悪くて寝込んでしまっていたのです。それでご挨拶に伺えませんでした。ご心配おかけしてしまい、申し訳ございません」
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大丈夫、嘘は…ついていないのだから。
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「…」
すると、お義母様がすっかり静かになってしまった。
「お義母様、どうかされましたか?」
「い、いえ。何でも無いのよ…お茶、とても美味しかったわ。それでは私はこれで帰ります」
お義母様はカップをソーサーに戻すと立ち上がった。
「あの、もう宜しいのですか?」
私も立ち上がるとお義母様に声を掛けた。
「ええ、もういいのよ。ちょっと貴女の顔を見に来ただけですから。でも…まぁ、体調が良くなったのなら良かったわ。何しろ貴女にはフィリップの子供を産むと言う大切な役目があるのだから」
お義母様は口元に笑みを浮かべた…けれどもその目は笑ってはいなかった。
「はい、分かりました。フィリップによく似た可愛らしい赤ちゃんが産めるように自分の身体を今後も労ってまいります」
にっこり微笑んで返事をすると、お義母様は少しだけ眉をしかめた。
「そ、そうね。それは良い心がけだわ…。それでは私はこの辺りで失礼するわ」
「はい、お義母様」
「見送りは結構よ」
「承知致しました」
そしてお義母様は私に背を向け、部屋を出ていった―。
パタン…
「ふぅ~…」
扉が閉まると、椅子に座りこみ…思わずため息が漏れてしまった。
疲れた…。
恐らく時間にして30分もお義母様は滞在していなかっただろうけれども、精神的に何だかとても疲れてしまった。
フィリップや両親からある程度話は聞かされていたので覚悟はしていたけれども、お義母様の態度から、私に対する敵意がビシビシと伝わってきた。
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だからフィリップは自分の病気の事も明かせないのだろうか?
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その為にはフィリップが抱える心の負担を少しでも減らしてあげなければ。
それが今の私に出来るただ1つのことなのだから―。
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