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第61話 フィリップの話 1
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え…?
私は今自分の身に起きていることが理解できなかった。
ひょっとして…私は今フィリップにキスをされているのだろうか?
結婚式のときだって誓いのキスすら交わさなかったのに…?
思わず固まっているとフィリップは私からそっと離れ、バツが悪そうな顔をした。
「ごめん…突然こんなことして…驚かせてしまったようだね…」
「そ、それは…」
確かに驚いた。驚いたけど…。
胸に熱いものがこみ上げてきて、思わず両目に涙が浮かぶ。
「エ、エルザ…。泣くほど嫌だったかな…本当にごめん…」
フィリップがオロオロした様子で頭を下げてきた。
「いいえ、違う…そうじゃないわ…フィリップの余命を聞かされたショックと…私のことを好きと言ってくれたこと…そ、それにキスされたことが…う、嬉しかったから…」
そして今迄堪えてき涙が後から後から溢れ出してきた。
「エルザ…」
フィリップの腕が伸びてきて、私を力強く抱きしめてくれた。まるで病人であることを思わせないほどに…。
「エルザ…本当に今迄ごめん…。僕は君のことが好きなのに…ずっと君を苦しめてしまっていたね。今更謝ってもどうしようも無いし、僕の言葉を信じられないかも知れないけれど…僕は子供の頃からずっと君が好きだった。でも僕は君より5歳も歳上だったし、ローズという同い年の少女がいた。それに君はセシルのことが好きだと思っていたから…気持ちを隠していたんだ。誰にもこの気持ちを知られていないつもりだったのに、ローズにはバレていたけどね」
「え…?」
フィリップの胸に身体を預けながら、私は信じられない気持ちで彼の話を聞いていた。
「両親が僕の妻に選んだ相手は…ローズだった。どうしても両親には逆らえなくて僕とローズは承諾したんだ。取り敢えず2年程、偽装婚をした後は離婚しようという約束を2人で交わして僕達は婚約したんだ。けれど彼女に好きな男性が出来た直後に、僕の病気が発覚して…2人で話し合って決めたんだよ。ローズが…彼とこの国を出ることを…」
「そ、そうだったの…」
フィリップの話はにわかに信じられない事ばかりだった。そして彼の話はまだ続く。
「余命僅かなことを知った僕は…本当は君と結婚したかったけど…どうしても言い出せなかった。だって、もう先がないのに…結婚しても君を不幸にするだけなのは分かりきっていたからね。だからこのまま諦めて死を待とうと思っていた時に、ローズが駆け落ちしたことに激怒した両親が…彼女の身代わりに君を僕の元に嫁がせることに決めたんだよ」
フィリップは私の髪を優しく撫でながら語りかけてくる。
「そ、そんなことがあったの…?」
「両親からこの提案を受けた時、本当はすごく嬉しかったけど…僕は余命僅かだから、エルザが僕に嫁いできても結婚生活は長く続かないのは分かりきっていた。だから反対したんだよ。第一君はセシルのことが好きだと思っていたからね…」
何故、私がセシルを好きだと思ったのか分からない。
「それは違うわフィリップ。私が好きなのは…今も昔も貴方だけだもの」
するとフィリップは私から身体を離すと、じっと見つめてきた。
「ありがとう…すごく嬉しいよ」
フィリップは笑みを浮かべると、再び顔を近づけてきたので私は目を閉じた。
するとすぐに唇が重なってきた。
フィリップ…。
私達は少しの間、キスを交わし…やがてフィリップは私から顔を離すと、言った。
「…愛してるよ。エルザ」
「フィリップ…わ、私も…」
再び私の両目から涙が溢れ…フィリップが優しく私の頬に伝わる涙を拭うと尋ねてきた。
「エルザ…僕の話の続きを聞いてくれるかい?」
「ええ…聞かせて。ずっと…貴方の言葉を待ってたんですもの…」
「うん、分かったよ…」
フィリップは私を再び抱きしめた―。
私は今自分の身に起きていることが理解できなかった。
ひょっとして…私は今フィリップにキスをされているのだろうか?
結婚式のときだって誓いのキスすら交わさなかったのに…?
思わず固まっているとフィリップは私からそっと離れ、バツが悪そうな顔をした。
「ごめん…突然こんなことして…驚かせてしまったようだね…」
「そ、それは…」
確かに驚いた。驚いたけど…。
胸に熱いものがこみ上げてきて、思わず両目に涙が浮かぶ。
「エ、エルザ…。泣くほど嫌だったかな…本当にごめん…」
フィリップがオロオロした様子で頭を下げてきた。
「いいえ、違う…そうじゃないわ…フィリップの余命を聞かされたショックと…私のことを好きと言ってくれたこと…そ、それにキスされたことが…う、嬉しかったから…」
そして今迄堪えてき涙が後から後から溢れ出してきた。
「エルザ…」
フィリップの腕が伸びてきて、私を力強く抱きしめてくれた。まるで病人であることを思わせないほどに…。
「エルザ…本当に今迄ごめん…。僕は君のことが好きなのに…ずっと君を苦しめてしまっていたね。今更謝ってもどうしようも無いし、僕の言葉を信じられないかも知れないけれど…僕は子供の頃からずっと君が好きだった。でも僕は君より5歳も歳上だったし、ローズという同い年の少女がいた。それに君はセシルのことが好きだと思っていたから…気持ちを隠していたんだ。誰にもこの気持ちを知られていないつもりだったのに、ローズにはバレていたけどね」
「え…?」
フィリップの胸に身体を預けながら、私は信じられない気持ちで彼の話を聞いていた。
「両親が僕の妻に選んだ相手は…ローズだった。どうしても両親には逆らえなくて僕とローズは承諾したんだ。取り敢えず2年程、偽装婚をした後は離婚しようという約束を2人で交わして僕達は婚約したんだ。けれど彼女に好きな男性が出来た直後に、僕の病気が発覚して…2人で話し合って決めたんだよ。ローズが…彼とこの国を出ることを…」
「そ、そうだったの…」
フィリップの話はにわかに信じられない事ばかりだった。そして彼の話はまだ続く。
「余命僅かなことを知った僕は…本当は君と結婚したかったけど…どうしても言い出せなかった。だって、もう先がないのに…結婚しても君を不幸にするだけなのは分かりきっていたからね。だからこのまま諦めて死を待とうと思っていた時に、ローズが駆け落ちしたことに激怒した両親が…彼女の身代わりに君を僕の元に嫁がせることに決めたんだよ」
フィリップは私の髪を優しく撫でながら語りかけてくる。
「そ、そんなことがあったの…?」
「両親からこの提案を受けた時、本当はすごく嬉しかったけど…僕は余命僅かだから、エルザが僕に嫁いできても結婚生活は長く続かないのは分かりきっていた。だから反対したんだよ。第一君はセシルのことが好きだと思っていたからね…」
何故、私がセシルを好きだと思ったのか分からない。
「それは違うわフィリップ。私が好きなのは…今も昔も貴方だけだもの」
するとフィリップは私から身体を離すと、じっと見つめてきた。
「ありがとう…すごく嬉しいよ」
フィリップは笑みを浮かべると、再び顔を近づけてきたので私は目を閉じた。
するとすぐに唇が重なってきた。
フィリップ…。
私達は少しの間、キスを交わし…やがてフィリップは私から顔を離すと、言った。
「…愛してるよ。エルザ」
「フィリップ…わ、私も…」
再び私の両目から涙が溢れ…フィリップが優しく私の頬に伝わる涙を拭うと尋ねてきた。
「エルザ…僕の話の続きを聞いてくれるかい?」
「ええ…聞かせて。ずっと…貴方の言葉を待ってたんですもの…」
「うん、分かったよ…」
フィリップは私を再び抱きしめた―。
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