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第37話 父と母の隠し事
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「エルザ、貴女の好きなラベンダーティーよ」
リビングルームのソファに座っていると母が真っ白い陶器のティーポットと2人分のティーカップをトレーに乗せて入ってきた。
母は私のテーブルの前にティーカップを置くと、カップにラベンダーティーを注いでいく。カップに薄い紫色のお茶が注がれると、部屋の中に優しいラベンダーの香りが漂ってきた。
私はその香りを思い切り吸い込むと笑みを浮かべた。
「フフフ…良い香り…心が落ち着くわ…」
すると私の向かい側に座った母が神妙そうな顔つきで尋ねてきた。
「エルザ…。嫁ぎ先でやっぱり何かあったのではないの?」
「え?どうしてそんな事聞くの?」
「だって…たった1週間もしない間に、こんなにやつれて…顔色も悪いし、目の下にクマまで出来ているわ?おまけに元気が無いし…ひょっとして…うまくいってないの?」
その言葉にドキリとする。フィリップとの不仲を見抜かれてしまったのだろうか?
「え…?そ、そんな事ないわ」
「そう?義理の御両親に嫌な目に合わされたりしていない?」
「え?」
てっきりフィリップのことを言っているのかと思っていたのに、お義父様とお義母様のことを持ち出してきたのには驚いた。
「やっぱり…そうなの?実は心配していたのよ…」
母はため息をついた。
「え?お母さん…今の話…どういう意味なの?何故お義父様とお義母様の話が出てくるの?」
「え?そ、それは…い、いえ。何でもないのよ?今の話は忘れてちょうだい。」
私の話に一瞬顔色を変えた母だったが、笑みを浮かべて誤魔化そうとした。
「お母様、誤魔化さないで。何か知っているなら教えて頂戴。何も分からないのは嫌なの。当事者である私が知らないなんておかしいわ」
「…分かったわ…。でも今の貴女の様子で分かったのだけど、特に義理の御両親からは理不尽な目に遭わされていないのでしょう?」
「え?ええ…」
理不尽な目も何も、私は結婚してからまだ一度もお義父様とお義母様に会ってはいない。同じ敷地内にいるにも関わらず、フィリップからは本館に行くことを禁じられているからだ。私が外出中に2人は私に会いに来ていたことが会ったけれども、それだフィリップが物凄い剣幕で追い払ってしまったようだし…。
「でも…そうね。今はまだ結婚したてだから貴女に何も言ってこないだけなのかもしれない。予備知識として頭に入れておいた方が本当は貴女の為なのかもしれないわね。本当はこのことを知って、エルザを思い悩ませたくは無かったのだけれど…」
母がため息をついた。
ドクン
ドクン
ドクン…
母の意味深な言葉に私の心臓の鼓動が激しくなる。知るのは怖い、だけど…知らないままでいるほうがもっと怖い。
「お願い、お母様。私の為を思うなら…教えてくれる?」
私は声を震わせて懇願した。
あの屋敷での暮らしは私にとって不安な場所でしかない。何処までも冷たいフィリップの態度、そして何故か義父母に会わせようとしない。一方で、義父母の方では私に会うことを希望している…。これらの疑問が少しでも晴れるなら…今よりは気持ちが楽になれるかもしれない。
「…分かったわ。エルザ…。実はね、本来…ローズがアンバー家に嫁ぐことになっていたでしょう?けれど…ローズは別に好きな男性が出来て…家を出てしまった…。その事に対して、アンバー夫妻は大層激怒したのよ」
「え?そうだったの…?」
知らなかった。
結婚話が決まってからフィリップの御両親とは何度もお会いしていたのに、一度たりとも私に嫌な態度を見せたことは無かったのに…。
「平民のくせによくも馬鹿にしてくれたなと言って、このままでは体裁が悪いから貴女をローズの身代わりに嫁がせる様に命じてきたのよ。私達はこの要求にすごく不安を感じたのだけれど、アンバー夫妻は貴女にはとても良くしてくれていたし、逆に貴女に話して不安を煽る必要は無いだろうと、お父様と話し合って決めたことなのよ」
「お母様…」
「エルザには嫌な態度を取ることはないかもしれないと思って今迄この話は伏せていたの。何より貴女が結婚に乗り気だったから。でも…本当に…ごめんなさい。こんな肝心な話を今迄黙っていて。貴女には申し訳ないことをしてしまったわ」
そして母は私に頭を下げてきた―。
リビングルームのソファに座っていると母が真っ白い陶器のティーポットと2人分のティーカップをトレーに乗せて入ってきた。
母は私のテーブルの前にティーカップを置くと、カップにラベンダーティーを注いでいく。カップに薄い紫色のお茶が注がれると、部屋の中に優しいラベンダーの香りが漂ってきた。
私はその香りを思い切り吸い込むと笑みを浮かべた。
「フフフ…良い香り…心が落ち着くわ…」
すると私の向かい側に座った母が神妙そうな顔つきで尋ねてきた。
「エルザ…。嫁ぎ先でやっぱり何かあったのではないの?」
「え?どうしてそんな事聞くの?」
「だって…たった1週間もしない間に、こんなにやつれて…顔色も悪いし、目の下にクマまで出来ているわ?おまけに元気が無いし…ひょっとして…うまくいってないの?」
その言葉にドキリとする。フィリップとの不仲を見抜かれてしまったのだろうか?
「え…?そ、そんな事ないわ」
「そう?義理の御両親に嫌な目に合わされたりしていない?」
「え?」
てっきりフィリップのことを言っているのかと思っていたのに、お義父様とお義母様のことを持ち出してきたのには驚いた。
「やっぱり…そうなの?実は心配していたのよ…」
母はため息をついた。
「え?お母さん…今の話…どういう意味なの?何故お義父様とお義母様の話が出てくるの?」
「え?そ、それは…い、いえ。何でもないのよ?今の話は忘れてちょうだい。」
私の話に一瞬顔色を変えた母だったが、笑みを浮かべて誤魔化そうとした。
「お母様、誤魔化さないで。何か知っているなら教えて頂戴。何も分からないのは嫌なの。当事者である私が知らないなんておかしいわ」
「…分かったわ…。でも今の貴女の様子で分かったのだけど、特に義理の御両親からは理不尽な目に遭わされていないのでしょう?」
「え?ええ…」
理不尽な目も何も、私は結婚してからまだ一度もお義父様とお義母様に会ってはいない。同じ敷地内にいるにも関わらず、フィリップからは本館に行くことを禁じられているからだ。私が外出中に2人は私に会いに来ていたことが会ったけれども、それだフィリップが物凄い剣幕で追い払ってしまったようだし…。
「でも…そうね。今はまだ結婚したてだから貴女に何も言ってこないだけなのかもしれない。予備知識として頭に入れておいた方が本当は貴女の為なのかもしれないわね。本当はこのことを知って、エルザを思い悩ませたくは無かったのだけれど…」
母がため息をついた。
ドクン
ドクン
ドクン…
母の意味深な言葉に私の心臓の鼓動が激しくなる。知るのは怖い、だけど…知らないままでいるほうがもっと怖い。
「お願い、お母様。私の為を思うなら…教えてくれる?」
私は声を震わせて懇願した。
あの屋敷での暮らしは私にとって不安な場所でしかない。何処までも冷たいフィリップの態度、そして何故か義父母に会わせようとしない。一方で、義父母の方では私に会うことを希望している…。これらの疑問が少しでも晴れるなら…今よりは気持ちが楽になれるかもしれない。
「…分かったわ。エルザ…。実はね、本来…ローズがアンバー家に嫁ぐことになっていたでしょう?けれど…ローズは別に好きな男性が出来て…家を出てしまった…。その事に対して、アンバー夫妻は大層激怒したのよ」
「え?そうだったの…?」
知らなかった。
結婚話が決まってからフィリップの御両親とは何度もお会いしていたのに、一度たりとも私に嫌な態度を見せたことは無かったのに…。
「平民のくせによくも馬鹿にしてくれたなと言って、このままでは体裁が悪いから貴女をローズの身代わりに嫁がせる様に命じてきたのよ。私達はこの要求にすごく不安を感じたのだけれど、アンバー夫妻は貴女にはとても良くしてくれていたし、逆に貴女に話して不安を煽る必要は無いだろうと、お父様と話し合って決めたことなのよ」
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「エルザには嫌な態度を取ることはないかもしれないと思って今迄この話は伏せていたの。何より貴女が結婚に乗り気だったから。でも…本当に…ごめんなさい。こんな肝心な話を今迄黙っていて。貴女には申し訳ないことをしてしまったわ」
そして母は私に頭を下げてきた―。
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