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第35話 ラベンダーの送り主は?
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翌朝―
私は大好きなラベンダーの花の香りで目が覚めた。
「ラベンダーの香り…?」
ベッドから起き上がると、センターテーブルに大きな白い花瓶に大輪のラベンダーが飾られていた。
「まぁ…何て奇麗なのかしら…」
ひょっとしてフィリップが夜、私が眠っている間に届けてくれたのだろうか?
そんなはずは無いだろうと思いつつ、私は密かに期待した。
体調の悪い私を気遣って、フィリップがラベンダーを届けてくれたのだろかと…。
7時―
ダイニングルームへ行くと、まだフィリップとセシルの姿は無かった。
「昨夜はきっと兄弟2人で夜遅くまでお話をしていたのかもね…」
ポツリと呟くと、廊下からフィリップとセシルの会話する声が聞こえてきた。
「…それにしても兄さんが昨夜飲ませてくれたワインは本当に美味しかったよ」
「そうだろう?あれは年代物で貴重なワインだから…」
そこで会話はぴたりとやんだ。セシルが私の姿に気づいたからだ。私は席を立つと、笑顔で2人に朝の挨拶をした。
「おはよう、フィリップ、セシル。今朝もお天気で素敵な朝ね?」
「…そうだね」
フィリップは無表情で返事をする。
「おはよう、エルザ。胃の具合はどうだい?少しは良くなったのか?」
セシルが笑みを浮かべながら尋ねてくる。
「そうね、今朝はあまり痛みが無いわ。先生の薬が効いてきている証拠ね」
そしてチラリとフィリップを見るも、彼は私に視線を合わせることなく、席に座った。
そこで私とセシルも着席すると、すぐに食事が運ばれてきた。今朝の給仕はまだあまり親しく話したことが無いメイドのアンネだった。
「おはようございます。朝食をお持ちしました」
ワゴンを押しながらダイニングルームに現れたアンネは手際よく朝食を並べていく。フィリップとセシルの前にはスクランブルエッグ、厚切りハムステーキ、グリーンサラダにバゲット、オニオンスープが並べられる。そして私の前には…。
「エルザ様。本日はお召し上がりになれるでしょうか…?」
私の前にはスフレオムレツにエンドウ豆のスープが置かれる。
「まぁ…わざわざ用意してくれたの?ひょっとして…」
チラリとフィリップを見るが、彼は無反応だ。
「え、ええ。執事のチャールズ様からの申し出ですので」
アンネが答える。
「そう?ありがとう。後でお礼を伝えておいてくれる?気を使って貰って嬉しいわって」
「はい、必ず伝えて置きます」
その時、視線を感じてふと顔を上げると何故かセシルがじっと私を見つめていた。
「…どうかしたの?セシル?」
「あ、い、いや。何でもない」
セシルはフイと視線をそらせてしまった。
「では、ごゆっくりお召し上がり下さい」
アンネは頭を下げて、退室するとフィリップが声を掛けた。
「さて、それじゃ頂こうか」
「そうだね」
「ええ」
そして私達3人は食事を開始した。
目の前に湯気の立つ柔らかなスフレオムレツ…。そっとスプーンですくって口の中に入れると、バターとミルクの優しい味が口の中に広がっていく。
「…おいしい…やっぱりアンバー家のお食事はとても美味しいわ」
フィリップとセシルの顔を見ながら私は2人に声を掛けた。
「そうか、良かったな」
セシルは私に笑顔を向けた。
「…そうだね」
相変わらず気の無い言葉で話すフィリップ。それでも最初の頃のように存在を無視されるよりずっとマシだった。
少しは…歩み寄ってくれるようになったのだろうか…?
そこで私は今朝のお礼をフィリップに伝えることにした。
「フィリップ、今朝はありがとう。お部屋に大輪のラベンダーの花が飾られていたわ。おかげでとても良い気分で目覚める事が出来たの。とても嬉しかった」
「…」
しかし、フィリップは返事をしない。
「フィリップ…?」
声を掛けると、セシルが私に言った。
「エルザ。それは俺が用意したんだよ」
「え?」
「昨日、エルザがラベンダーの花が好きな事を知ったじゃないか?だから本館の温室からラベンダーの花を摘んで、エルザの部屋に飾っておくように伝えたんだよ。そうだよね?兄さん」
「…何故僕に尋ねるんだい?僕は関与していないから何も分からないよ」
フィリップはそっけなく言うと、スープを口にする。
「まぁ…そうだったの?セシル。ありがとう」
「気に入ってもらえて良かったよ」
その後、結局フィリップは話に混ざることなく、私とセシルの2人だけの会話で朝食時間は終わってしまった―。
私は大好きなラベンダーの花の香りで目が覚めた。
「ラベンダーの香り…?」
ベッドから起き上がると、センターテーブルに大きな白い花瓶に大輪のラベンダーが飾られていた。
「まぁ…何て奇麗なのかしら…」
ひょっとしてフィリップが夜、私が眠っている間に届けてくれたのだろうか?
そんなはずは無いだろうと思いつつ、私は密かに期待した。
体調の悪い私を気遣って、フィリップがラベンダーを届けてくれたのだろかと…。
7時―
ダイニングルームへ行くと、まだフィリップとセシルの姿は無かった。
「昨夜はきっと兄弟2人で夜遅くまでお話をしていたのかもね…」
ポツリと呟くと、廊下からフィリップとセシルの会話する声が聞こえてきた。
「…それにしても兄さんが昨夜飲ませてくれたワインは本当に美味しかったよ」
「そうだろう?あれは年代物で貴重なワインだから…」
そこで会話はぴたりとやんだ。セシルが私の姿に気づいたからだ。私は席を立つと、笑顔で2人に朝の挨拶をした。
「おはよう、フィリップ、セシル。今朝もお天気で素敵な朝ね?」
「…そうだね」
フィリップは無表情で返事をする。
「おはよう、エルザ。胃の具合はどうだい?少しは良くなったのか?」
セシルが笑みを浮かべながら尋ねてくる。
「そうね、今朝はあまり痛みが無いわ。先生の薬が効いてきている証拠ね」
そしてチラリとフィリップを見るも、彼は私に視線を合わせることなく、席に座った。
そこで私とセシルも着席すると、すぐに食事が運ばれてきた。今朝の給仕はまだあまり親しく話したことが無いメイドのアンネだった。
「おはようございます。朝食をお持ちしました」
ワゴンを押しながらダイニングルームに現れたアンネは手際よく朝食を並べていく。フィリップとセシルの前にはスクランブルエッグ、厚切りハムステーキ、グリーンサラダにバゲット、オニオンスープが並べられる。そして私の前には…。
「エルザ様。本日はお召し上がりになれるでしょうか…?」
私の前にはスフレオムレツにエンドウ豆のスープが置かれる。
「まぁ…わざわざ用意してくれたの?ひょっとして…」
チラリとフィリップを見るが、彼は無反応だ。
「え、ええ。執事のチャールズ様からの申し出ですので」
アンネが答える。
「そう?ありがとう。後でお礼を伝えておいてくれる?気を使って貰って嬉しいわって」
「はい、必ず伝えて置きます」
その時、視線を感じてふと顔を上げると何故かセシルがじっと私を見つめていた。
「…どうかしたの?セシル?」
「あ、い、いや。何でもない」
セシルはフイと視線をそらせてしまった。
「では、ごゆっくりお召し上がり下さい」
アンネは頭を下げて、退室するとフィリップが声を掛けた。
「さて、それじゃ頂こうか」
「そうだね」
「ええ」
そして私達3人は食事を開始した。
目の前に湯気の立つ柔らかなスフレオムレツ…。そっとスプーンですくって口の中に入れると、バターとミルクの優しい味が口の中に広がっていく。
「…おいしい…やっぱりアンバー家のお食事はとても美味しいわ」
フィリップとセシルの顔を見ながら私は2人に声を掛けた。
「そうか、良かったな」
セシルは私に笑顔を向けた。
「…そうだね」
相変わらず気の無い言葉で話すフィリップ。それでも最初の頃のように存在を無視されるよりずっとマシだった。
少しは…歩み寄ってくれるようになったのだろうか…?
そこで私は今朝のお礼をフィリップに伝えることにした。
「フィリップ、今朝はありがとう。お部屋に大輪のラベンダーの花が飾られていたわ。おかげでとても良い気分で目覚める事が出来たの。とても嬉しかった」
「…」
しかし、フィリップは返事をしない。
「フィリップ…?」
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「気に入ってもらえて良かったよ」
その後、結局フィリップは話に混ざることなく、私とセシルの2人だけの会話で朝食時間は終わってしまった―。
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