上 下
181 / 221

第181話 ついに告白

しおりを挟む
 音楽に併せて、エディットと一緒に踊るダンス。

 簡単なステップしか踏めなかったけれども、僕はとても幸せを感じていた。

「アドルフ様、ダンスお上手ですよ?」

 手を取って踊るエディットが僕を見上げて笑みを浮かべる。

「そ、そうかな?でもそれはエディットのお陰だよ」

 ドキドキする心臓の音がエディットに聞かれやしないかと、ハラハラしながら返事をした。

「フフフ……6年前は踊れませんでしたけど、今こうしてアドルフ様と念願のダンスを踊れて嬉しいです」

「うん、僕もだよ」

 少し余裕が出来てきたので、そっと周囲を見渡すと見知った顔の学生たちがやはり僕達と同じようにダンスを踊っている。
 いつもは悪ふざけをしているラモンやエミリオまで正装し、畏まってダンスをしている姿は中々見ものだった。

「アドルフ様、向こうを見て下さい」

 エディットに言われた方向を見ると、そこにはサチとセドリックがダンスを踊っている。
 
 やはり、セドリックは転生者だけども王子だけあってダンスをしている姿は様になっていた。
 でもまさか、サチまでもが華麗なステップを踏んでいるのは少し以外だったけれど。


 やがて音楽が鳴り止み、1曲目のワルツが終わった。ここで一旦小休止が入ることになる。

 よ、よし……!言うなら今がチャンスだ……!

「あ、あのエディット」

 エディットの手を握りしめたまま声を掛けた。

「はい、アドルフ様」

 ニッコリ笑みを浮かべるエディット。

「このバルコニーを出た先にある園庭に行ってみない?噴水がランタンに照らされて綺麗だから2人で見に行ってみたいだんけど」

 何度も頭の中でエディットを園庭に誘う言葉を考え……思いついたのが今のセリフだった。

「そうですね。行ってみてみたいです」

「それじゃ、早速行ってみよう」

 半ば、小躍りしたい気持ちを抑えて僕はエディットに腕を差し伸べた。するとエディットは自然に僕の腕に手を添える。
 以前のエディットだったら、これくらいのことで真っ赤に頬を染めていたけれども、今ではそんなことも無くなった。

 これは、僕に慣れてきたって前向きに捉えていいこと……なのだと思いたい――。



****


「まぁ……本当に綺麗ですね」


 エディットは噴水の前に行くと感嘆の声を漏らした。

丸い大きな噴水の周囲にはランタンが置かれている。吹き上げる水がオレンジ色の明かりに照らされて、まるで光のシャワーが上から降り注いでいるみたいだった。

 空には満点の星空と、大きな満月がキラキラと輝き……まさにあの『コイカナ』の世界観そのものだった。

 よし……今こそ、僕の気持ちをエディットに告げよう。

 深呼吸すると、僕はエディットに声を掛けた。

「エディット。大切な話があるんだ」

「はい?何でしょうか?」

こちらを振り向くエディットは光のシャワーに包まれて、とても綺麗だった。

「エディット。今迄、黙っていたけど…… 僕は君のことが好きだ。どうか婚約者としてだけではなく、恋人として……これからも側にいて欲しいんだ」

 まるで今にも心臓が飛び出しそうだ。

 エディットは……何て返事をしてくれるだろう?自惚れじゃなければエディットも僕のことを好いていてくれるはず。
 赤くなりながら……「はい」と返事をしてくれるのでは無いだろうか……?


「え……?」

 しかし、僕は息を飲んだ。

 何故ならエディットが怪訝そうな表情を浮かべて僕を見つめていたからだ――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

【完結】なぜか悪役令嬢に転生していたので、推しの攻略対象を溺愛します

楠結衣
恋愛
魔獣に襲われたアリアは、前世の記憶を思い出す。 この世界は、前世でプレイした乙女ゲーム。しかも、私は攻略対象者にトラウマを与える悪役令嬢だと気づいてしまう。 攻略対象者で幼馴染のロベルトは、私の推し。 愛しい推しにひどいことをするなんて無理なので、シナリオを無視してロベルトを愛でまくることに。 その結果、ヒロインの好感度が上がると発生するイベントや、台詞が私に向けられていき── ルートを無視した二人の恋は大暴走! 天才魔術師でチートしまくりの幼馴染ロベルトと、推しに愛情を爆発させるアリアの、一途な恋のハッピーエンドストーリー。

婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます

葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。 しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。 お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。 二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。 「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」 アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。 「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」 「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」 「どんな約束でも守るわ」 「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」 これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。 ※タイトル通りのご都合主義なお話です。 ※他サイトにも投稿しています。

【完結】お花畑ヒロインの義母でした〜連座はご勘弁!可愛い息子を連れて逃亡します〜

himahima
恋愛
夫が少女を連れ帰ってきた日、ここは前世で読んだweb小説の世界で、私はざまぁされるお花畑ヒロインの義母に転生したと気付く。 えっ?!遅くない!!せめてくそ旦那と結婚する10年前に思い出したかった…。 ざまぁされて取り潰される男爵家の泥舟に一緒に乗る気はありませんわ! ★恋愛ランキング入りしました! 読んでくれた皆様ありがとうございます。 連載希望のコメントをいただきましたので、 連載に向け準備中です。 *他サイトでも公開中 日間総合ランキング2位に入りました!

結婚相手の幼馴染に散々馬鹿にされたので離婚してもいいですか?

ヘロディア
恋愛
とある王国の王子様と結婚した主人公。 そこには、王子様の幼馴染を名乗る女性がいた。 彼女に追い詰められていく主人公。 果たしてその生活に耐えられるのだろうか。

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。 兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。 ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。 私も脳筋ってこと!? それはイヤ!! 前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。 ゆるく軽いラブコメ目指しています。 最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。 小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。

【完結】もったいないですわ!乙女ゲームの世界に転生した悪役令嬢は、今日も生徒会活動に勤しむ~経済を回してる?それってただの無駄遣いですわ!~

鬼ヶ咲あちたん
恋愛
内容も知らない乙女ゲームの世界に転生してしまった悪役令嬢は、ヒロインや攻略対象者たちを放って今日も生徒会活動に勤しむ。もったいないおばけは日本人の心! まだ使える物を捨ててしまうなんて、もったいないですわ! 悪役令嬢が取り組む『もったいない革命』に、だんだん生徒会役員たちは巻き込まれていく。「このゲームのヒロインは私なのよ!?」荒れるヒロインから一方的に恨まれる悪役令嬢はどうなってしまうのか?

今日も学園食堂はゴタゴタしてますが、こっそり観賞しようとして本日も萎えてます。

柚ノ木 碧/柚木 彗
恋愛
駄目だこれ。 詰んでる。 そう悟った主人公10歳。 主人公は悟った。実家では無駄な事はしない。搾取父親の元を三男の兄と共に逃れて王都へ行き、乙女ゲームの舞台の学園の厨房に就職!これで予てより念願の世界をこっそりモブ以下らしく観賞しちゃえ!と思って居たのだけど… 何だか知ってる乙女ゲームの内容とは微妙に違う様で。あれ?何だか萎えるんだけど… なろうにも掲載しております。

処理中です...