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第109話 馬術訓練 2
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ブラッドリーが選んでくれた馬は栗毛色の毛並みが美しい馬だった。
「ほら、どうだ?この馬、優しい目をしている。きっとおとなしい馬に違いないぞ」
「そ、そうかな……?」
優しい目?
本当にそうなのだろうか?僕には全ての馬が同じ目つきに見えてしまう。
けれど、ブラッドリーは馬術が得意だと言っていた。
恐らく馬の気持ちも良く分かるのだろう。
「それじゃこの馬にするよ」
きっとブラッドリーの見立ては信頼していいだろう。
ただ、少し気になる節があった。
「ところで、この馬………随分震えているけど大丈夫かい?」
先程から僕の目の前にいる馬は小刻みに震えているように見える。
「あぁ、馬は臆病な生き物だからな。馬に怯えている人間を前にすると、気持ちが伝わって馬も過敏になってしまうぞ?例えば今のお前みたいにな」
「え?そ、そうなのかい?」
やっぱり、大きな身体の馬に僕が尻込みしているのが馬に伝わってしまったのだろうか?
「ああ、そうだ。だからお前もドーンと構えてりゃいいのさ。それじゃ俺はもう行くが……一つ、お前にアドバイスしてやるよ」
「アドバイス?それは助かる。教えてくれるかな?」
やはり頼もしい友人だ。
ブラッドリーとエディットはお似合いのカップルになれるに違いない。
「ああ、いいぜ。馬はな、お腹の部分を撫でられるのが大好きなんだ。念入りに撫でてやれよ。きっと喜んでお前を信頼してくれるはずだぜ?」
「お腹周りを念入りに撫でればいいんだね?分かったよ。ありがとう」
なるほど、馬はお腹周り撫でられるのが好きなのか。知らなかった。
「それじゃあな。頑張れよ、アドルフ」
ブラッドリーは踵を返すと、手をヒラヒラ振ってグループの待機場所に戻っていった。
するとその時……。
「ほら!そこの学生っ!もう馬に乗っていないのは君だけだ!早くしたまえ!」
馬術教師が僕に近づきながら声を掛けてきた。
「あ、す、すみません!」
そして僕は先程教えてもらった馬のお腹部分に触れると撫でながら声を掛けた。
「それじゃ、宜しく頼むよ」
その時……。
「お、おい!君!何処を触っているんだ!!」
馬術教師の焦った声が聞こえたと思った瞬間……。
ヒヒーンッ!!
目の前の馬が大きく嘶き、気づけば僕の身体は後方に吹き飛んでいた――。
****
僕は夢を見ていた。
昔の子供の頃の夢を……。
いつものように綺麗な庭が見えるサンルームで本を呼んでいると、観葉植物の奥からエディットの声が聞こえてきた。
「アドルフ様、いらっしゃいますか?」
「うん!ここにいるよ!」
大きな声で返事をすると、パタパタと足音を響かせながらエディットが駆け寄ってきた。
「こんにちは、アドルフ様。お父様にお願いして遊びに連れてきてもらいました。私もここで一緒に本を読んでもいいですか?」
「うん、勿論いいよ。それじゃ一緒にここで本を読もうか?」
「はい」
嬉しそうに返事をするエディット。
そして僕達は向い合せで座ると、互いに静かに本を読み始めた。
初めてエディットと会ったあの日から、休みの日になると頻繁に僕の家に彼女は遊びに来るようになっていた。
小学校も同じクラスだし、席も隣同士。
僕とエディットは気づけば四六時中、一緒に過ごすようになっていた。
友人のブラッドリーと一緒に……。
2人で静かに本を読んでいると、エディットが不意に声を掛けてきた。
「そう言えば、ブラッドリー様はどうしたのですか?」
「うん、もうすぐ来ることになっているんだけど……どうしたのかな?」
顔を上げたその時……。
バリーンッ!!
突然、すぐ側の窓ガラスが派手に割れる音が部屋に響き渡った――。
「ほら、どうだ?この馬、優しい目をしている。きっとおとなしい馬に違いないぞ」
「そ、そうかな……?」
優しい目?
本当にそうなのだろうか?僕には全ての馬が同じ目つきに見えてしまう。
けれど、ブラッドリーは馬術が得意だと言っていた。
恐らく馬の気持ちも良く分かるのだろう。
「それじゃこの馬にするよ」
きっとブラッドリーの見立ては信頼していいだろう。
ただ、少し気になる節があった。
「ところで、この馬………随分震えているけど大丈夫かい?」
先程から僕の目の前にいる馬は小刻みに震えているように見える。
「あぁ、馬は臆病な生き物だからな。馬に怯えている人間を前にすると、気持ちが伝わって馬も過敏になってしまうぞ?例えば今のお前みたいにな」
「え?そ、そうなのかい?」
やっぱり、大きな身体の馬に僕が尻込みしているのが馬に伝わってしまったのだろうか?
「ああ、そうだ。だからお前もドーンと構えてりゃいいのさ。それじゃ俺はもう行くが……一つ、お前にアドバイスしてやるよ」
「アドバイス?それは助かる。教えてくれるかな?」
やはり頼もしい友人だ。
ブラッドリーとエディットはお似合いのカップルになれるに違いない。
「ああ、いいぜ。馬はな、お腹の部分を撫でられるのが大好きなんだ。念入りに撫でてやれよ。きっと喜んでお前を信頼してくれるはずだぜ?」
「お腹周りを念入りに撫でればいいんだね?分かったよ。ありがとう」
なるほど、馬はお腹周り撫でられるのが好きなのか。知らなかった。
「それじゃあな。頑張れよ、アドルフ」
ブラッドリーは踵を返すと、手をヒラヒラ振ってグループの待機場所に戻っていった。
するとその時……。
「ほら!そこの学生っ!もう馬に乗っていないのは君だけだ!早くしたまえ!」
馬術教師が僕に近づきながら声を掛けてきた。
「あ、す、すみません!」
そして僕は先程教えてもらった馬のお腹部分に触れると撫でながら声を掛けた。
「それじゃ、宜しく頼むよ」
その時……。
「お、おい!君!何処を触っているんだ!!」
馬術教師の焦った声が聞こえたと思った瞬間……。
ヒヒーンッ!!
目の前の馬が大きく嘶き、気づけば僕の身体は後方に吹き飛んでいた――。
****
僕は夢を見ていた。
昔の子供の頃の夢を……。
いつものように綺麗な庭が見えるサンルームで本を呼んでいると、観葉植物の奥からエディットの声が聞こえてきた。
「アドルフ様、いらっしゃいますか?」
「うん!ここにいるよ!」
大きな声で返事をすると、パタパタと足音を響かせながらエディットが駆け寄ってきた。
「こんにちは、アドルフ様。お父様にお願いして遊びに連れてきてもらいました。私もここで一緒に本を読んでもいいですか?」
「うん、勿論いいよ。それじゃ一緒にここで本を読もうか?」
「はい」
嬉しそうに返事をするエディット。
そして僕達は向い合せで座ると、互いに静かに本を読み始めた。
初めてエディットと会ったあの日から、休みの日になると頻繁に僕の家に彼女は遊びに来るようになっていた。
小学校も同じクラスだし、席も隣同士。
僕とエディットは気づけば四六時中、一緒に過ごすようになっていた。
友人のブラッドリーと一緒に……。
2人で静かに本を読んでいると、エディットが不意に声を掛けてきた。
「そう言えば、ブラッドリー様はどうしたのですか?」
「うん、もうすぐ来ることになっているんだけど……どうしたのかな?」
顔を上げたその時……。
バリーンッ!!
突然、すぐ側の窓ガラスが派手に割れる音が部屋に響き渡った――。
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