108 / 221
第108話 馬術訓練 1
しおりを挟む
「馬術かぁ……」
ため息をつきながら更衣室で着替えをしていた。
制服とシャツを脱いでユニフォームに着替えようとした時、背後からエミリオが声を掛けてきた。
「それにしても相変わらずお前の背中の傷目立つよな。痛くないのかよ」
え?背中の傷?
一瞬何のことか分からなかったけれど、気づけば勝手に言葉が口をついて出ていた。
「うん、もう平気だよ。第一子供の頃の傷だしね」
「そうだよな、以前も聞いたしな」
ラモンが頷く。
「あ……」
そこで初めて僕は我に返った。
僕の背中には傷があったのか?しかもそんな記憶がないのに、何で言葉が勝手に口をついて出てしまったのだろう?
その時強い視線を感じて振り向くと、何故かブラッドリーがじっと僕を見つめていた。その視線はいつものブラッドリーとは違っている。
どこか刺すような視線に感じた。
「な、何?」
すると、すぐにいつもの表情に戻るブラッドリー。
「いや、お前が馬術の授業を受けるのは久しぶりだけど大丈夫かと思ってね」
大丈夫?何が大丈夫なんだろう?
「うん、大丈夫だよ」
ブラッドリーの言葉の意味が少し気になったけれども、僕は無難な返事をした――。
****
着替えを終えた僕達は青空のもと、馬術訓練を行うフィールドに集まっていた。
「はい!それではグループごとに前半と後半に分けてこれから馬術訓練を行います!各自自分で馬を選ぶように!」
馬術の男性講師が僕達に声を掛けた。
僕達の前には厩舎があり、そこには20頭ほどの馬が並んでいる。
どうしよう、馬になんて乗ったこと無いのに……。
アドルフだった記憶が無い元社畜の僕にとっては、馬に乗るのはまさに初めてと言っても良かった過言ではなかった。
だから出来れば後半グループになれれば、他の学生たちが馬に乗る様子を見て参考にしようと思っていたのに……。
「まさか前半グループになってしまうなんて……」
思わずため息をついてしまった。
「何だ。やっぱり馬術の授業が不安だったんだな?」
すると後半グループのブラッドリーが突然声を掛けてきた。
「う、うん……まあね。何しろ一度は馬に蹴られているし……そのせいで記憶喪失になっているから馬に乗れる自信が無いんだよ」
「安心しろよ、なら俺が扱いやすそうな馬を一緒に選んでやるからそれに乗ればいいだろう。何、記憶がなくても身体が乗り方を覚えているはずだろうからな」
既に同じ前半グループのラモンとエミリオは既に自分の馬を選んで側に並んで立っている。
「ほらアドルフ、早く選ばないと良い馬が選べないぞ」
ブラッドリーが急かしてきた。
「うん、そうだね。それじゃ頼むよ。一緒に選んでくれるかな?」
ブラッドリーは更衣室に向かいながら馬術が得意な話をしていたから、彼に任せておけば大丈夫だろう。
「ああ、任せておけ。それじゃ行こうぜ」
「そうだね」
そして僕はブラッドリーと一緒に自分が乗る馬を探す為に厩舎へ近付いた。
既に大半の馬は他の学生たちが乗ってしまい、出払っていた。
今厩舎に残っている馬は6頭だった。
「う~ん……中々いい馬が残っていないな……」
ブラッドリーは馬をじっと見つめながら考え込んでいる。
「……」
馬の事を何一つ知らない僕はブラッドリーに任せることにした。
やがて……。
「お、アドルフ。この馬が良さそうだぞ」
ブラッドリーが選んだ馬は栗毛色の毛並みが美しい馬だった――。
ため息をつきながら更衣室で着替えをしていた。
制服とシャツを脱いでユニフォームに着替えようとした時、背後からエミリオが声を掛けてきた。
「それにしても相変わらずお前の背中の傷目立つよな。痛くないのかよ」
え?背中の傷?
一瞬何のことか分からなかったけれど、気づけば勝手に言葉が口をついて出ていた。
「うん、もう平気だよ。第一子供の頃の傷だしね」
「そうだよな、以前も聞いたしな」
ラモンが頷く。
「あ……」
そこで初めて僕は我に返った。
僕の背中には傷があったのか?しかもそんな記憶がないのに、何で言葉が勝手に口をついて出てしまったのだろう?
その時強い視線を感じて振り向くと、何故かブラッドリーがじっと僕を見つめていた。その視線はいつものブラッドリーとは違っている。
どこか刺すような視線に感じた。
「な、何?」
すると、すぐにいつもの表情に戻るブラッドリー。
「いや、お前が馬術の授業を受けるのは久しぶりだけど大丈夫かと思ってね」
大丈夫?何が大丈夫なんだろう?
「うん、大丈夫だよ」
ブラッドリーの言葉の意味が少し気になったけれども、僕は無難な返事をした――。
****
着替えを終えた僕達は青空のもと、馬術訓練を行うフィールドに集まっていた。
「はい!それではグループごとに前半と後半に分けてこれから馬術訓練を行います!各自自分で馬を選ぶように!」
馬術の男性講師が僕達に声を掛けた。
僕達の前には厩舎があり、そこには20頭ほどの馬が並んでいる。
どうしよう、馬になんて乗ったこと無いのに……。
アドルフだった記憶が無い元社畜の僕にとっては、馬に乗るのはまさに初めてと言っても良かった過言ではなかった。
だから出来れば後半グループになれれば、他の学生たちが馬に乗る様子を見て参考にしようと思っていたのに……。
「まさか前半グループになってしまうなんて……」
思わずため息をついてしまった。
「何だ。やっぱり馬術の授業が不安だったんだな?」
すると後半グループのブラッドリーが突然声を掛けてきた。
「う、うん……まあね。何しろ一度は馬に蹴られているし……そのせいで記憶喪失になっているから馬に乗れる自信が無いんだよ」
「安心しろよ、なら俺が扱いやすそうな馬を一緒に選んでやるからそれに乗ればいいだろう。何、記憶がなくても身体が乗り方を覚えているはずだろうからな」
既に同じ前半グループのラモンとエミリオは既に自分の馬を選んで側に並んで立っている。
「ほらアドルフ、早く選ばないと良い馬が選べないぞ」
ブラッドリーが急かしてきた。
「うん、そうだね。それじゃ頼むよ。一緒に選んでくれるかな?」
ブラッドリーは更衣室に向かいながら馬術が得意な話をしていたから、彼に任せておけば大丈夫だろう。
「ああ、任せておけ。それじゃ行こうぜ」
「そうだね」
そして僕はブラッドリーと一緒に自分が乗る馬を探す為に厩舎へ近付いた。
既に大半の馬は他の学生たちが乗ってしまい、出払っていた。
今厩舎に残っている馬は6頭だった。
「う~ん……中々いい馬が残っていないな……」
ブラッドリーは馬をじっと見つめながら考え込んでいる。
「……」
馬の事を何一つ知らない僕はブラッドリーに任せることにした。
やがて……。
「お、アドルフ。この馬が良さそうだぞ」
ブラッドリーが選んだ馬は栗毛色の毛並みが美しい馬だった――。
13
お気に入りに追加
500
あなたにおすすめの小説
逃げて、追われて、捕まって
あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。
この世界で王妃として生きてきた記憶。
過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。
人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。
だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。
2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ
2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。
**********お知らせ***********
2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。
それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。
ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。
成り上がり令嬢暴走日記!
笹乃笹世
恋愛
異世界転生キタコレー!
と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎
えっあの『ギフト』⁉︎
えっ物語のスタートは来年⁉︎
……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎
これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!
ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……
これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー
果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?
周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎
生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~
こひな
恋愛
市川みのり 31歳。
成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。
彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。
貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。
※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。
破滅ルートを全力で回避したら、攻略対象に溺愛されました
平山和人
恋愛
転生したと気付いた時から、乙女ゲームの世界で破滅ルートを回避するために、攻略対象者との接点を全力で避けていた。
王太子の求婚を全力で辞退し、宰相の息子の売り込みを全力で拒否し、騎士団長の威圧を全力で受け流し、攻略対象に顔さえ見せず、隣国に留学した。
ヒロインと王太子が婚約したと聞いた私はすぐさま帰国し、隠居生活を送ろうと心に決めていた。
しかし、そんな私に転生者だったヒロインが接触してくる。逆ハールートを送るためには私が悪役令嬢である必要があるらしい。
ヒロインはあの手この手で私を陥れようとしてくるが、私はそのたびに回避し続ける。私は無事平穏な生活を送れるのだろうか?
推しの幸せをお願いしたら異世界に飛ばされた件について
あかね
恋愛
いつも推しは不遇で、現在の推しの死亡フラグを年末の雑誌で立てられたので、新年に神社で推しの幸せをお願いしたら、翌日異世界に飛ばされた話。無事、推しとは会えましたが、同居とか無理じゃないですか。
悪役令嬢、第四王子と結婚します!
水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします!
小説家になろう様にも、書き起こしております。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる