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第21話 悪役令息、ヒロインを見失う
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歩き始めて数分で辻馬車乗り場は見つかった。
う~ん。
しかし、背が高いというのは本当に便利だ。
町の中はものすごい人混みで溢れかえっていたけれども、ほんの100m程先に乗り場があるのが目に入ったからだ。
アドルフの身長は恐らく平均成人男性よりも高いはずだ。ブラッドリーだって背は高い方なのかもしれないけれど、それでも目線の高さは僕よりも下だ。
今だって町行く人達の中で、皆の頭1個分位は背が高い。それで前方にある辻馬車乗り場を見つけることが出来たのだから。
「エディット、この先に馬車乗り場が見つかったよ」
すぐ右隣を歩くエディットの方を笑顔で振り向き……思わずギョッとした。
何と僕は見知らぬおばあさんに話しかけていたのだ。
「おやまぁ。こんな若い方に微笑み掛けられるなんて……長生きはするものだねぇ」
おばあさんは何故か頬を赤らめて?僕を見る。
「す、す、すみませんっ!人違いでした!」
慌てておばあさんに頭を下げると、おばあさんは「ホホホ」と笑って去っていった。
あ~…焦った……てっきりエディットだとばかり思っていた。
でもそうなるとエディットは一体どこに…?
立ち止まって辺りを見渡すと、人混みでうまく前に進めない困り顔のエディットを後方で見つけた。
しまった!僕はまたしても無自覚にエディットの好感度?を下げる行動を取ってしまっていたようだ。
「すみません、ちょっと通して下さい」と言いながら、人混みをかき分けてなんとかエディットの元へ辿り着くことが出来た。
「エディットッ!」
「あ!アドルフ様!」
エディットは僕の姿を見るとパァッと花が咲いたように笑った。
うん、やはり流石はヒロイン。
その可愛らしい笑顔は世の男性のハートを打ち抜くに決まっている。
「ごめんよ、てっきり隣を歩いているものだとばかり思っていたから…」
頭を掻きながら謝罪した。
「いえ、私の方がいけなかったのです。私…少しぼんやりしているところがあるので」
顔を赤らめるエディット。
う~ん…そうなるとこれは…やはりアレだな。
「ごめん、エディット。はぐれないように手を繋いでもいいかな?」
いくら婚約者だと言っても僕とエディットは親しい間柄ではないので勝手に手をつなぐわけにはいかない。
「え?あ、は、はいっ!ど…どうぞ」
真っ赤な顔で小さな右手を僕に差し出す彼女。
その姿が実に可愛らしかった。
差し出された手を握りしめるとエディットに声を掛けた。
「うん、それじゃ行こうか?」
「は、はい!」
真っ赤な顔で返事をするエディットの小さな右手に…少しだけ力が込められた。
それを感じた僕は思った。
ひょっとすると、少しはエディットと信頼関係が築けたのかもしれない――と。
う~ん。
しかし、背が高いというのは本当に便利だ。
町の中はものすごい人混みで溢れかえっていたけれども、ほんの100m程先に乗り場があるのが目に入ったからだ。
アドルフの身長は恐らく平均成人男性よりも高いはずだ。ブラッドリーだって背は高い方なのかもしれないけれど、それでも目線の高さは僕よりも下だ。
今だって町行く人達の中で、皆の頭1個分位は背が高い。それで前方にある辻馬車乗り場を見つけることが出来たのだから。
「エディット、この先に馬車乗り場が見つかったよ」
すぐ右隣を歩くエディットの方を笑顔で振り向き……思わずギョッとした。
何と僕は見知らぬおばあさんに話しかけていたのだ。
「おやまぁ。こんな若い方に微笑み掛けられるなんて……長生きはするものだねぇ」
おばあさんは何故か頬を赤らめて?僕を見る。
「す、す、すみませんっ!人違いでした!」
慌てておばあさんに頭を下げると、おばあさんは「ホホホ」と笑って去っていった。
あ~…焦った……てっきりエディットだとばかり思っていた。
でもそうなるとエディットは一体どこに…?
立ち止まって辺りを見渡すと、人混みでうまく前に進めない困り顔のエディットを後方で見つけた。
しまった!僕はまたしても無自覚にエディットの好感度?を下げる行動を取ってしまっていたようだ。
「すみません、ちょっと通して下さい」と言いながら、人混みをかき分けてなんとかエディットの元へ辿り着くことが出来た。
「エディットッ!」
「あ!アドルフ様!」
エディットは僕の姿を見るとパァッと花が咲いたように笑った。
うん、やはり流石はヒロイン。
その可愛らしい笑顔は世の男性のハートを打ち抜くに決まっている。
「ごめんよ、てっきり隣を歩いているものだとばかり思っていたから…」
頭を掻きながら謝罪した。
「いえ、私の方がいけなかったのです。私…少しぼんやりしているところがあるので」
顔を赤らめるエディット。
う~ん…そうなるとこれは…やはりアレだな。
「ごめん、エディット。はぐれないように手を繋いでもいいかな?」
いくら婚約者だと言っても僕とエディットは親しい間柄ではないので勝手に手をつなぐわけにはいかない。
「え?あ、は、はいっ!ど…どうぞ」
真っ赤な顔で小さな右手を僕に差し出す彼女。
その姿が実に可愛らしかった。
差し出された手を握りしめるとエディットに声を掛けた。
「うん、それじゃ行こうか?」
「は、はい!」
真っ赤な顔で返事をするエディットの小さな右手に…少しだけ力が込められた。
それを感じた僕は思った。
ひょっとすると、少しはエディットと信頼関係が築けたのかもしれない――と。
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