残念ですが、その婚約破棄宣言は失敗です

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売

文字の大きさ
上 下
3 / 4

3話

しおりを挟む
 その声に、一斉に野次馬が振り向く。そしてキャサリン、ブライアンにネリーも振り向く。

すると野次馬を掻き分けて登場したのは2人の若い女性だった。
1人は赤毛の女性に、もう1人はダークブロンドの女性だ。

「一体、あなた方は誰ですか? 今、取込み中なのですけど」

キャサリンは現れた女性に尋ねる。

「ええ、そんな事は分かっています!」
「ですからここに現れたのですから!」

そして赤毛の女性がブライアンを振り向いた。

「ブライアン様、酷いじゃありませんか! 私と婚約してくださるという話は嘘だったのですか!?」

「いいえ! 言われたのは私です! それなのに一体どういうことですか!? そちらの女性は何なのです!?」

ダークブロンドの女性がビシッとネリーを指差す。

「ええっ!! 何だって!!」

これに驚くのは勿論ブライアンだ。

「どういうことですか!! ブライアン様!!」

「し、知らない!! 俺は何にも知らないぞ! 誰だ! お前たちは!」

真っ赤な顔でブライアンは2人の女性を交互に見る。

「誰だとはあんまりです!」

「あんなに愛しているよと言ってくれたじゃありませんか!」

「そうなのですか!? ブライアン様!」

2人の女性の言葉に、ネリーはブライアンの胸ぐらを掴んで揺さぶった。

「だから、知らないって言ってるだろう! お前たちを見るのは初めてだぞ!」

「あらあら。ブライアン様はネリー様だけに飽き足らず、他の女性にも手を出していたのですね?」

「うるさい! キャサリン、お前は黙ってろ!」

肩を竦めるキャサリンにブライアンは真っ赤な顔で怒鳴りつけると、野次馬たちが次々と文句を言い始めた。

「浮気しておいてその言い草は何だ!」
「同時に3人と浮気なんて最低ね」
「クズだな、クズ」

「お、おい!! 誰だ!? 今、俺のことをクズだと言ったのは! 名乗り出ろ!」

ブライアンは野次馬たちを見渡すが、当然手名乗り出る者はいない。

「そんなことより、私を捨てるつもりですか!」

「君だけだよって言ったのは嘘だったのですか!?」

2人の女性はさらにブライアンに迫る。

「だから、お前たちなんか知らないってさっきから言ってるだろうが!!」

さらに野次馬たちが口々に批判を始めた。

「どうだか、何しろ嘘つきだからな」
「そうよ、毒殺未遂なんて酷い嘘ね」
「誰が信じられるものか」

「黙れ黙れ! 見世物じゃ無いんだぞ! どっか行けよ!」

突如、ブライアンは上着を脱ぐと振り回して野次馬たちを追い払おうとした。

「うわっ! ついにおかしくなったぞ!」
「なんて奴だ!」
「失礼にも程があるわ!」

すると……。

「もう知らない!! ブライアン様なんか大嫌い!! さよなら!」

ついに我慢できなくなったのか、ネリーが泣きながら走り去って行く。

「あ! お、おい! ネリーッ!!」

「ブライアン様、どうやらネリー様に捨てられてしまったようですね?」

置いていかれたブライアンに、キャサリンは口元に笑みを浮かべた。

「う、うるさい! 笑うな! 馬鹿にするな! くそっ! お前らのせいだからな!」

すると野次馬たちが反論する。

「人のせいにするな!」
「そうよ! 全て自分のせいでしょう!」
「本当に最低な男だな!」

「う……ち、畜生~ぉっ!!」

思わず反論にあったブライアンは脱兎のごとくその場を逃げ出してしまった。

「全く、何だったんだ? あれは」
「良かったわ、あなたがあんな男じゃなくて」
「……あれ? あの3人は何処に行ったんだ……?」

野次馬たちが気付いてみると、キャサリンも2人の女性も、その場から姿を消して去っていた――
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

今、目の前で娘が婚約破棄されていますが、夫が盛大にブチ切れているようです

シアノ
恋愛
「アンナレーナ・エリアルト公爵令嬢、僕は君との婚約を破棄する!」  卒業パーティーで王太子ソルタンからそう告げられたのは──わたくしの娘!?  娘のアンナレーナはとてもいい子で、婚約破棄されるような非などないはずだ。  しかし、ソルタンの意味ありげな視線が、何故かわたくしに向けられていて……。  婚約破棄されている令嬢のお母様視点。  サクッと読める短編です。細かいことは気にしない人向け。  過激なざまぁ描写はありません。因果応報レベルです。

《完結》愛する人と結婚するだけが愛じゃない

ぜらいす黒糖
恋愛
オリビアはジェームズとこのまま結婚するだろうと思っていた。 ある日、可愛がっていた後輩のマリアから「先輩と別れて下さい」とオリビアは言われた。 ジェームズに確かめようと部屋に行くと、そこにはジェームズとマリアがベッドで抱き合っていた。 ショックのあまり部屋を飛び出したオリビアだったが、気がつくと走る馬車の前を歩いていた。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

『白い結婚』が好条件だったから即断即決するしかないよね!

三谷朱花
恋愛
私、エヴァはずっともう親がいないものだと思っていた。亡くなった母方の祖父母に育てられていたからだ。だけど、年頃になった私を迎えに来たのは、ピョルリング伯爵だった。どうやら私はピョルリング伯爵の庶子らしい。そしてどうやら、政治の道具になるために、王都に連れていかれるらしい。そして、連れていかれた先には、年若いタッペル公爵がいた。どうやら、タッペル公爵は結婚したい理由があるらしい。タッペル公爵の出した条件に、私はすぐに飛びついた。だって、とてもいい条件だったから!

お飾り王妃の愛と献身

石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。 けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。 ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。 国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

この国では魔力を譲渡できる

ととせ
恋愛
「シエラお姉様、わたしに魔力をくださいな」  無邪気な笑顔でそうおねだりするのは、腹違いの妹シャーリだ。  五歳で母を亡くしたシエラ・グラッド公爵令嬢は、義理の妹であるシャーリにねだられ魔力を譲渡してしまう。魔力を失ったシエラは周囲から「シエラの方が庶子では?」と疑いの目を向けられ、学園だけでなく社交会からも遠ざけられていた。婚約者のロルフ第二王子からも蔑まれる日々だが、公爵令嬢らしく堂々と生きていた。

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

【完結】裏切ったあなたを許さない

紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。 そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。 それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。 そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

処理中です...