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8-11 前後不覚
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その頃―
二次会に参加した若い3人組の女性たちがテーブルの上に突っ伏して眠ってしまった九条を見つめ、コソコソと囁いていた。
「ねえねえ、あそこに座っていた男の人・・・1人いなくなったわよ。」
「あ~ん・・・残念。2人共身なりはいいし、イケメンだったから目の保養になっていたのに・・。」
「あれで険悪な雰囲気じゃなかったら声を掛けにいけたのにね~・・。」
すると、中でも一番派手な化粧にワンピースを着た髪の長い女が言った。
「私・・・あの眠ってる男性の処へ声を掛けに行ってくるわ。」
すると栗毛色の天然パーマの女性が言った。
「出たっ!肉食女、美和!」
「ま~た、男をあさりに行くのね・・・。」
真っ赤なルージュにボブヘアの女性が言った。
「あら、別にいいでしょう?だってあそこで2人きりで飲んでいたって事は・・恋人がいない可能性だってあるわけじゃない?」
美和は長い髪を手ですくいながら言った。
「でも、完全に眠ってるようだけど?」
天然パーマの女が言う。
「でも・・・声をかければ目を覚ますかもよ?」
ボブヘアの女がクイッとシャンパンを飲みながら言った。
「まあ、とりあえず行って来るわ。うまくいけば・・今夜は楽しめるかもしれないし。」
ガタンと席を立ちながら美和が言った。
「はいはい、行ってらっしゃい。それじゃ私たちは適当なところで帰るからね~。」
天然パーマの女は手をひらひらさせながら言った。
「頑張ってね~。」
ボブヘアの女はクスクス笑いながら美和を見送った―。
それから約1時間後―
翔は二階堂と共に琢磨がいるテーブルに戻って来た。
「あれ・・・?いないな・・?」
翔はキョロキョロ辺りを見渡した。
「妙だな・・・。九条の奴・・・あんな状態で1人で先に帰ったのか?」
二階堂も不思議そうに周辺を見渡すも琢磨の姿は何所にも見当たらない。
「全く・・・先に帰るなら帰るって声を掛けて行けばいいものを・・・。」
翔はブツブツ言いながら琢磨の飲み残したグラスを片付けた。
「その通りだ。・・・半年ぶりにあったから俺の部屋で3人で飲みなおそうかと思っていたのに・・・あてが外れたな。どうする?翔。」
「先輩・・・明日はハネムーンですよね?3人で飲みなおすつもりだったなんて話・・静香さんが聞いたら怒りそうですよ?」
すると二階堂は言った。
「ああ・・・それなんだがな、静香の奴・・・女友達と一緒にカラオケをしに行ってしまったんだよ。明日の朝ホテルに帰るわね・・・って言い残してな。」
フッと寂しげな笑みを浮かべながら二階堂は言った。そんな二階堂を見て翔は言った。
「先輩・・・早速しりに敷かれているようですね・・。」
「うん・・・そういうところが実にいいんだけどな?やっぱり静香は最高の女だよ。」
二階堂は嬉しそうに言う。
「はい、良かったですね。どうぞお幸せに。俺はもう帰りますよ。もう0時を過ぎてるし。」
「どうやって帰るんだ?」
「タクシーを拾って帰りますよ。明日は朱莉さんがお母さんの面会に行く日なので俺が蓮の世話をする事になってるので。」
翔は上着を着ながら言った。
「ああ、分ったよ。今日は本当に有難な。」
「いいえ、それじゃまた落ち着いたら会いましょう。」
翔は店を出ると呟いた。
「全く・・・琢磨の奴め・・・勝手に一人で帰るなんて随分薄情になったものだ・・。」
そして翔はタクシーを拾う為に、繁華街へと足を向けた―。
翌朝―
目が覚めた琢磨はすっかり頭の中がパニック状態になっていた。そこは見知らぬ部屋で、自分は何も服を着ていない状態でベッドの中にいた。そして隣には見知らぬ髪の長い女がこれまた裸で隣で眠っている。
(こ、これは・・・この状況は・・・どう考えても・・・。)
琢磨は頭を抱えてしまった。
昨夜、二次会の会場で翔と2人でウィスキーを飲んでいた処までは覚えている。問題なのはその後だ。
(何だ?一体・・あの後・・俺の身に何が起こった?大体・・・何だ?隣で眠っているこの派手な女は・・・?)
思い出そうとしても何一つ記憶が無い。ただ、分かることは今非常に自分がまずい立場にあると言う事だ。
(昨夜・・・何があったかなんて・・もう一目瞭然だ。くそっ・・・!)
琢磨はそっと相手の女の様子を伺った。派手な化粧にきつい香水の匂い・・・。何から何まで普段の自分なら絶対に相手にしないタイプの女だ。
(起きる気配はなさそうだな・・・。)
こうなると琢磨の取る行動は一つしかない。身体には女の香水の匂いが染みついて不快でしょうがないが、仮にシャワーを浴びている時に目を覚まされたら厄介なのは火を見るより明らかだ。
(逃げるしかない・・・っ!)
琢磨はそっとベッドから抜け出すと、床に落ちていた自分の服をかき集め、部屋の隅で音を立てないように着替え始めた。途中何度か女が寝返りを打つたびに、琢磨の心臓は止まりそうなほど跳ね上がったが、何とか服を着る事が出来た。
そして素早く辺りを見渡し、自分の持ち物が残されていないか見渡すと・・念の為にホテル代として2万円をテーブルの上に置いた。
(これではまるで金で女を買ったように思われるかもしれないが・・・断じてそんなつもりはないからなっ!これは・・あくまでホテル代だっ!)
誰に言い訳するでもなく1人納得すると、逃げるように部屋を飛び出した。
そしてホテルの外に出たところで、ようやく安堵のため息をついて、自分がいたホテルを確認して、驚いた。
「な、何て事だ・・・。お、俺が宿泊してるホテルじゃないか・・・。」
しかし、あの部屋は琢磨が宿泊していた部屋では無い。だが・・・。
(じょ、冗談じゃないっ!さっさとチェックアウトしないと・・あの女と鉢合わせしてしまうかもしれない!)
そこで慌てて琢磨はホテルに引き返し、自分の部屋へ戻って荷物を持つと急いでフロントへ行き、チェックアウトを済ませて再び逃げるようにホテルを飛び出した。
ようやく人心地着いたのはカフェでコーヒーを口にしてからだった。
(ふう~・・・・全く・・・俺はいくら酔っていたとはいえ・・・何であんな真似を・・しかも全く好みのタイプじゃないし・・。だが、本当に関係を持ってしまったのか?・・・くそっ!何一つ思い出せないなんて・・・。)
髪を掻き毟りながら琢磨は思った。これからどうしようと―。
朝10時―
昨夜は帰宅する時間が遅かった翔は、今日が日曜日と言う事もあり朝9時に起床し、洗濯を回しながら遅めの朝食を取っていると、突然スマホに着信が入って来た。
「誰だ?日曜の朝から・・。」
そして着信相手を見て驚いた。相手は琢磨からだったからである。
「あ!琢磨・・・!何だよ、今頃になって・・・。」
翔はスマホをタップした。
「もしもし。」
『翔かっ?!おい、今すぐお前の住んでるマンションに行かせてくれっ!』
「はあ・・?お前、突然何言ってるんだよ・・・。大体昨夜、お前・・・。」
『話ならお前のマンションへ行ってから聞くからっ!さっさと住所を教えろっ!』
電話越しから切羽詰まった琢磨の声が響いてくる。
「わ、分かった。今、お前どこにいるんだよ。」
『六本木の駅前だ。』
「そうか、そこからなら俺の住むマンションまで10分もあればつくな。いいか?住所は・・・・。」
「ふう・・・全く一体何だって言うんだ?琢磨の奴め・・・。」
翔は電話を切ると呟いた。
「まあいい。とりあえず・・・コーヒーでも来たらいれてやるか・・。」
そして翔はキッチンに向かった―。
二次会に参加した若い3人組の女性たちがテーブルの上に突っ伏して眠ってしまった九条を見つめ、コソコソと囁いていた。
「ねえねえ、あそこに座っていた男の人・・・1人いなくなったわよ。」
「あ~ん・・・残念。2人共身なりはいいし、イケメンだったから目の保養になっていたのに・・。」
「あれで険悪な雰囲気じゃなかったら声を掛けにいけたのにね~・・。」
すると、中でも一番派手な化粧にワンピースを着た髪の長い女が言った。
「私・・・あの眠ってる男性の処へ声を掛けに行ってくるわ。」
すると栗毛色の天然パーマの女性が言った。
「出たっ!肉食女、美和!」
「ま~た、男をあさりに行くのね・・・。」
真っ赤なルージュにボブヘアの女性が言った。
「あら、別にいいでしょう?だってあそこで2人きりで飲んでいたって事は・・恋人がいない可能性だってあるわけじゃない?」
美和は長い髪を手ですくいながら言った。
「でも、完全に眠ってるようだけど?」
天然パーマの女が言う。
「でも・・・声をかければ目を覚ますかもよ?」
ボブヘアの女がクイッとシャンパンを飲みながら言った。
「まあ、とりあえず行って来るわ。うまくいけば・・今夜は楽しめるかもしれないし。」
ガタンと席を立ちながら美和が言った。
「はいはい、行ってらっしゃい。それじゃ私たちは適当なところで帰るからね~。」
天然パーマの女は手をひらひらさせながら言った。
「頑張ってね~。」
ボブヘアの女はクスクス笑いながら美和を見送った―。
それから約1時間後―
翔は二階堂と共に琢磨がいるテーブルに戻って来た。
「あれ・・・?いないな・・?」
翔はキョロキョロ辺りを見渡した。
「妙だな・・・。九条の奴・・・あんな状態で1人で先に帰ったのか?」
二階堂も不思議そうに周辺を見渡すも琢磨の姿は何所にも見当たらない。
「全く・・・先に帰るなら帰るって声を掛けて行けばいいものを・・・。」
翔はブツブツ言いながら琢磨の飲み残したグラスを片付けた。
「その通りだ。・・・半年ぶりにあったから俺の部屋で3人で飲みなおそうかと思っていたのに・・・あてが外れたな。どうする?翔。」
「先輩・・・明日はハネムーンですよね?3人で飲みなおすつもりだったなんて話・・静香さんが聞いたら怒りそうですよ?」
すると二階堂は言った。
「ああ・・・それなんだがな、静香の奴・・・女友達と一緒にカラオケをしに行ってしまったんだよ。明日の朝ホテルに帰るわね・・・って言い残してな。」
フッと寂しげな笑みを浮かべながら二階堂は言った。そんな二階堂を見て翔は言った。
「先輩・・・早速しりに敷かれているようですね・・。」
「うん・・・そういうところが実にいいんだけどな?やっぱり静香は最高の女だよ。」
二階堂は嬉しそうに言う。
「はい、良かったですね。どうぞお幸せに。俺はもう帰りますよ。もう0時を過ぎてるし。」
「どうやって帰るんだ?」
「タクシーを拾って帰りますよ。明日は朱莉さんがお母さんの面会に行く日なので俺が蓮の世話をする事になってるので。」
翔は上着を着ながら言った。
「ああ、分ったよ。今日は本当に有難な。」
「いいえ、それじゃまた落ち着いたら会いましょう。」
翔は店を出ると呟いた。
「全く・・・琢磨の奴め・・・勝手に一人で帰るなんて随分薄情になったものだ・・。」
そして翔はタクシーを拾う為に、繁華街へと足を向けた―。
翌朝―
目が覚めた琢磨はすっかり頭の中がパニック状態になっていた。そこは見知らぬ部屋で、自分は何も服を着ていない状態でベッドの中にいた。そして隣には見知らぬ髪の長い女がこれまた裸で隣で眠っている。
(こ、これは・・・この状況は・・・どう考えても・・・。)
琢磨は頭を抱えてしまった。
昨夜、二次会の会場で翔と2人でウィスキーを飲んでいた処までは覚えている。問題なのはその後だ。
(何だ?一体・・あの後・・俺の身に何が起こった?大体・・・何だ?隣で眠っているこの派手な女は・・・?)
思い出そうとしても何一つ記憶が無い。ただ、分かることは今非常に自分がまずい立場にあると言う事だ。
(昨夜・・・何があったかなんて・・もう一目瞭然だ。くそっ・・・!)
琢磨はそっと相手の女の様子を伺った。派手な化粧にきつい香水の匂い・・・。何から何まで普段の自分なら絶対に相手にしないタイプの女だ。
(起きる気配はなさそうだな・・・。)
こうなると琢磨の取る行動は一つしかない。身体には女の香水の匂いが染みついて不快でしょうがないが、仮にシャワーを浴びている時に目を覚まされたら厄介なのは火を見るより明らかだ。
(逃げるしかない・・・っ!)
琢磨はそっとベッドから抜け出すと、床に落ちていた自分の服をかき集め、部屋の隅で音を立てないように着替え始めた。途中何度か女が寝返りを打つたびに、琢磨の心臓は止まりそうなほど跳ね上がったが、何とか服を着る事が出来た。
そして素早く辺りを見渡し、自分の持ち物が残されていないか見渡すと・・念の為にホテル代として2万円をテーブルの上に置いた。
(これではまるで金で女を買ったように思われるかもしれないが・・・断じてそんなつもりはないからなっ!これは・・あくまでホテル代だっ!)
誰に言い訳するでもなく1人納得すると、逃げるように部屋を飛び出した。
そしてホテルの外に出たところで、ようやく安堵のため息をついて、自分がいたホテルを確認して、驚いた。
「な、何て事だ・・・。お、俺が宿泊してるホテルじゃないか・・・。」
しかし、あの部屋は琢磨が宿泊していた部屋では無い。だが・・・。
(じょ、冗談じゃないっ!さっさとチェックアウトしないと・・あの女と鉢合わせしてしまうかもしれない!)
そこで慌てて琢磨はホテルに引き返し、自分の部屋へ戻って荷物を持つと急いでフロントへ行き、チェックアウトを済ませて再び逃げるようにホテルを飛び出した。
ようやく人心地着いたのはカフェでコーヒーを口にしてからだった。
(ふう~・・・・全く・・・俺はいくら酔っていたとはいえ・・・何であんな真似を・・しかも全く好みのタイプじゃないし・・。だが、本当に関係を持ってしまったのか?・・・くそっ!何一つ思い出せないなんて・・・。)
髪を掻き毟りながら琢磨は思った。これからどうしようと―。
朝10時―
昨夜は帰宅する時間が遅かった翔は、今日が日曜日と言う事もあり朝9時に起床し、洗濯を回しながら遅めの朝食を取っていると、突然スマホに着信が入って来た。
「誰だ?日曜の朝から・・。」
そして着信相手を見て驚いた。相手は琢磨からだったからである。
「あ!琢磨・・・!何だよ、今頃になって・・・。」
翔はスマホをタップした。
「もしもし。」
『翔かっ?!おい、今すぐお前の住んでるマンションに行かせてくれっ!』
「はあ・・?お前、突然何言ってるんだよ・・・。大体昨夜、お前・・・。」
『話ならお前のマンションへ行ってから聞くからっ!さっさと住所を教えろっ!』
電話越しから切羽詰まった琢磨の声が響いてくる。
「わ、分かった。今、お前どこにいるんだよ。」
『六本木の駅前だ。』
「そうか、そこからなら俺の住むマンションまで10分もあればつくな。いいか?住所は・・・・。」
「ふう・・・全く一体何だって言うんだ?琢磨の奴め・・・。」
翔は電話を切ると呟いた。
「まあいい。とりあえず・・・コーヒーでも来たらいれてやるか・・。」
そして翔はキッチンに向かった―。
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