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1-8 雨の中の再会
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午後2時―
朱莉がエントランス前に行くと、すでに琢磨が億ションの前に車を停めて待っていた。
「九条さん、もういらしてたんですか?すみません。お待たせして。」
朱莉は慌てて頭を下げると琢磨は言った。
「いや、そんな事は無いよ。だってまだ約束時間の5分以上前だからね。」
琢磨は笑顔で答えた。本当はまた今日も朱莉に会えるのが嬉しくて、今から15分以上も前にここに到着していた事は朱莉には内緒である。
「それじゃ、乗って。朱莉さん。」
琢磨は助手席のドアを開けると言った。
「はい、ありがとうございます。」
朱莉が助手席に座ると、琢磨はドアを閉めて自分も運転席に回ってドアを閉めた。
シートベルトを締めてハンドルを握ると琢磨は尋ねた。
「朱莉さんは何処へ行こうとしていたんだっけ?」
「はい。赤ちゃんの為に何か素敵なCDでも買おうかと思ってCDショップへ行こうと思っていたんです。それとまだ買い足したいベビー用品もあるんです。」
「よし、それじゃ大型店舗のある店へ行ってみよう。」
「はい、お願いします。」
そして琢磨はアクセルを踏んだ―。
それから約3時間後―
朱莉の買い物全てが終了し、車に荷物を積み込んだ2人は今カフェでコーヒーを飲みに来ていた。
「思った以上に買い物に時間がかかってしまったね。」
琢磨が朱莉に言った。
「すみません。九条さん・・・私のせいで。」
朱莉が申し訳なさそうに頭を下げた。
「い、いや。そう意味で言ったんじゃないんだ。まさか粉ミルクだけでもあんなに色々な種類があるとは思わなかったんだよ。」
「本当ですね・・・。取りあえず、どんなのが良いか分からなくて何種類も買ってしまいましたけど・・口に合う、合わないってあるんでしょうかね?」
「う~ん・・・どうなんだろう。俺にはさっぱり分からないなあ・・・。」
琢磨は腕組みしながら言った。
その時、朱莉が何かを思い出したかのように言った。
「そう言えば、すっかり忘れていましたけど・・九条さんの会社はインターネット通販会社でしたね?」
「い、いや。俺の会社と言われると少し御幣を感じるけど・・・まあそうだね。」
「当然ベビー用品も扱っていますよね?」
「うん、そうだね。」
「それでは今度からはベビー用品は九条さんの会社で利用させて頂きます。」
朱莉は嬉しそうに言った。
「う、うん・・・。有難う。確かに新生児がいると母親は買い物も中々自由に行く事が難しいかもね。・・・よし、今度の企画会議でベビー用品のコンテンツをもっと広げるように提案してみるか・・・。」
琢磨は仕事モードの顔で言った。
「ついでに赤ちゃん用の音楽CDもあるといいですね。出来れば視聴も試せると・・・って、す、すみません!自分の願望ばかり話してしまって・・・。見の程もしらずに。」
朱莉は顔を真っ赤にさせると言った。すると琢磨は朱莉に声を掛けた。
「何言ってるんだい?朱莉さん。消費者の意見を聞く事は市場リサーチとしてすごく重要な事なんだよ。逆に意見を出して貰って感謝したい位だよ。有難う朱莉さん。」
そして笑みを浮かべた。
「い、いえ。お礼を言われるほどの事はしていませんから。」
その時、店内に17時を知らせる時報が鳴り響いた。それを聞いた琢磨が言った。
「朱莉さん、折角だから夜食事でもして帰らないかい?」
「あ、それなら・・もし九条さんさえ宜しければ、うちに来ませんか?あまり大した食事はご用意出来ないかもしれませんが、なにか作りますよ?」
朱莉の提案に琢磨は目を輝かせた。
「え?いいのかい?」
「はい、勿論です。あ・・でもそれだと九条さんの相手の女性の方に悪いかも・・。」
(え・・・?い、今・・朱莉さん何て言ったんだ・・?)
「朱莉さん・・・・ひょっとして・・俺に彼女でもいると思ってるのかい?」
琢磨はコーヒーカップを置くと尋ねた。
「え・・?いらっしゃらないんですか?」
朱莉は不思議そうに首を傾げた。
「い、いや・・・普通に考えてみれば・・彼女がいる男が別の女性を食事に誘ったり、こうして買い物について来るような真似はしないと思わないかい?」
琢磨は苦笑いしながら言う。
「そうですね・・。言われてみれば確かに・・変な事を言ってすみませんでした。」
朱莉が照れたように謝るので琢磨は真剣な顔で尋ねた。
「朱莉さん・・何故俺に彼女がいると思ったの?」
「え・・・それは九条さんが素敵な男性だからです。誰でも素敵な恋人がいると思うのでは無いですか?」
「あ、朱莉さん・・・。」
(そんな風に行ってくれるって事は・・朱莉さんも俺の事をそう言う目で見てくれているって事なんだよな・・?だが・・これは喜ぶべき事なのだろうか・・?)
琢磨は複雑な心境でカフェ・ラテを飲む朱莉を見つめた。すると琢磨の視線に気づいたのか、朱莉が言った。
「九条さんは何か好き嫌いとかはありますか?」
「いや、俺は好き嫌いは無いよ。何でも食べるから大丈夫だよ。」
それを聞いた朱莉は嬉しそうに言った。
「九条さんも好き嫌い無いんですね。航君みたい・・。」
その名前を琢磨は聞き逃さなかった。
「航君?」
「あ、いけない!すみません九条さん、変な事を言って・・。そ、それじゃもう行きませんか?」
朱莉は慌てて、まるで胡麻化すように席を立ちあがると言った。
「あ、ああ・・・。そうだね。行こうか?」
琢磨も何事も無かったかの様に立ち上がったが、心は穏やかでは無かった。
(航君・・?一体誰の事なんだろう・・・?まさかその人物が・・・朱莉さんと沖縄で同居していた男なのか?それにしても君付けで呼ぶなんて・・・随分親しくしていたんだな・・。)
悶々とした頭を抱えながら、それでも琢磨は何事も無かったかのように振舞い、車を走らせて朱莉の住む億ションへと向かった―。
車の中で明日の件で色々話をしながら走らせていると、やがて朱莉の住む億ションが見えて来た。そこで琢磨は言った。
「朱莉さん。エントランスの前で降ろすから先に部屋へ行ってていいよ。駐車場に車を停めたらすぐに俺も行くから。荷物も運ぶから朱莉さんは気にしなくていいからね。」
「はい、分かりました。有難うございます。」
そして、エントランスの前に車を停めた時・・朱莉はそこに信じられない光景を目にした。
何とそこには、沖縄で別れた以来の航の懐かしい姿がそこにあったからだ。
「え?!う、嘘・・・。航・・君・・・・?」
朱莉の言葉を琢磨は聞き逃さなかった。
「え・・?航・・・?」
見ると朱莉の視線の先には茶髪の若い男性の姿がそこにあったのだ。
「す、すみません、九条さん。私、すぐに降りますっ!」
「え?朱莉さん?!」
琢磨の呼びかけにも朱莉は返事もせずにシートベルトを外すと、車から飛び出すと航の方へ向かって駆けていく。
「航君っ!!」
すると、エントランスの前のベンチに座っていた航が顔を上げ、パッと笑い・・次の瞬間顔を歪めた。
「朱莉っ!」
航は半分泣きそうな顔で朱莉の名を呼ぶと、朱莉の方へ駆け寄り・・・そのまま強く朱莉の事を抱きしめた。
「朱莉・・・、会いたかっ・・た・・・。」
航は朱莉を抱きしめたまま肩を震わせている。そしてその声は涙声だった。
そんな航の背中を優しく撫でながら朱莉は言った。
「航君・・私も会いたかったよ?」
(だって・・・貴方は弟の様に大切な人だから・・・。)
そしてそんな2人の様子を車から降りた琢磨は雨に打たれながら呆然と立ちすくんで見つめていた—。
朱莉がエントランス前に行くと、すでに琢磨が億ションの前に車を停めて待っていた。
「九条さん、もういらしてたんですか?すみません。お待たせして。」
朱莉は慌てて頭を下げると琢磨は言った。
「いや、そんな事は無いよ。だってまだ約束時間の5分以上前だからね。」
琢磨は笑顔で答えた。本当はまた今日も朱莉に会えるのが嬉しくて、今から15分以上も前にここに到着していた事は朱莉には内緒である。
「それじゃ、乗って。朱莉さん。」
琢磨は助手席のドアを開けると言った。
「はい、ありがとうございます。」
朱莉が助手席に座ると、琢磨はドアを閉めて自分も運転席に回ってドアを閉めた。
シートベルトを締めてハンドルを握ると琢磨は尋ねた。
「朱莉さんは何処へ行こうとしていたんだっけ?」
「はい。赤ちゃんの為に何か素敵なCDでも買おうかと思ってCDショップへ行こうと思っていたんです。それとまだ買い足したいベビー用品もあるんです。」
「よし、それじゃ大型店舗のある店へ行ってみよう。」
「はい、お願いします。」
そして琢磨はアクセルを踏んだ―。
それから約3時間後―
朱莉の買い物全てが終了し、車に荷物を積み込んだ2人は今カフェでコーヒーを飲みに来ていた。
「思った以上に買い物に時間がかかってしまったね。」
琢磨が朱莉に言った。
「すみません。九条さん・・・私のせいで。」
朱莉が申し訳なさそうに頭を下げた。
「い、いや。そう意味で言ったんじゃないんだ。まさか粉ミルクだけでもあんなに色々な種類があるとは思わなかったんだよ。」
「本当ですね・・・。取りあえず、どんなのが良いか分からなくて何種類も買ってしまいましたけど・・口に合う、合わないってあるんでしょうかね?」
「う~ん・・・どうなんだろう。俺にはさっぱり分からないなあ・・・。」
琢磨は腕組みしながら言った。
その時、朱莉が何かを思い出したかのように言った。
「そう言えば、すっかり忘れていましたけど・・九条さんの会社はインターネット通販会社でしたね?」
「い、いや。俺の会社と言われると少し御幣を感じるけど・・・まあそうだね。」
「当然ベビー用品も扱っていますよね?」
「うん、そうだね。」
「それでは今度からはベビー用品は九条さんの会社で利用させて頂きます。」
朱莉は嬉しそうに言った。
「う、うん・・・。有難う。確かに新生児がいると母親は買い物も中々自由に行く事が難しいかもね。・・・よし、今度の企画会議でベビー用品のコンテンツをもっと広げるように提案してみるか・・・。」
琢磨は仕事モードの顔で言った。
「ついでに赤ちゃん用の音楽CDもあるといいですね。出来れば視聴も試せると・・・って、す、すみません!自分の願望ばかり話してしまって・・・。見の程もしらずに。」
朱莉は顔を真っ赤にさせると言った。すると琢磨は朱莉に声を掛けた。
「何言ってるんだい?朱莉さん。消費者の意見を聞く事は市場リサーチとしてすごく重要な事なんだよ。逆に意見を出して貰って感謝したい位だよ。有難う朱莉さん。」
そして笑みを浮かべた。
「い、いえ。お礼を言われるほどの事はしていませんから。」
その時、店内に17時を知らせる時報が鳴り響いた。それを聞いた琢磨が言った。
「朱莉さん、折角だから夜食事でもして帰らないかい?」
「あ、それなら・・もし九条さんさえ宜しければ、うちに来ませんか?あまり大した食事はご用意出来ないかもしれませんが、なにか作りますよ?」
朱莉の提案に琢磨は目を輝かせた。
「え?いいのかい?」
「はい、勿論です。あ・・でもそれだと九条さんの相手の女性の方に悪いかも・・。」
(え・・・?い、今・・朱莉さん何て言ったんだ・・?)
「朱莉さん・・・・ひょっとして・・俺に彼女でもいると思ってるのかい?」
琢磨はコーヒーカップを置くと尋ねた。
「え・・?いらっしゃらないんですか?」
朱莉は不思議そうに首を傾げた。
「い、いや・・・普通に考えてみれば・・彼女がいる男が別の女性を食事に誘ったり、こうして買い物について来るような真似はしないと思わないかい?」
琢磨は苦笑いしながら言う。
「そうですね・・。言われてみれば確かに・・変な事を言ってすみませんでした。」
朱莉が照れたように謝るので琢磨は真剣な顔で尋ねた。
「朱莉さん・・何故俺に彼女がいると思ったの?」
「え・・・それは九条さんが素敵な男性だからです。誰でも素敵な恋人がいると思うのでは無いですか?」
「あ、朱莉さん・・・。」
(そんな風に行ってくれるって事は・・朱莉さんも俺の事をそう言う目で見てくれているって事なんだよな・・?だが・・これは喜ぶべき事なのだろうか・・?)
琢磨は複雑な心境でカフェ・ラテを飲む朱莉を見つめた。すると琢磨の視線に気づいたのか、朱莉が言った。
「九条さんは何か好き嫌いとかはありますか?」
「いや、俺は好き嫌いは無いよ。何でも食べるから大丈夫だよ。」
それを聞いた朱莉は嬉しそうに言った。
「九条さんも好き嫌い無いんですね。航君みたい・・。」
その名前を琢磨は聞き逃さなかった。
「航君?」
「あ、いけない!すみません九条さん、変な事を言って・・。そ、それじゃもう行きませんか?」
朱莉は慌てて、まるで胡麻化すように席を立ちあがると言った。
「あ、ああ・・・。そうだね。行こうか?」
琢磨も何事も無かったかの様に立ち上がったが、心は穏やかでは無かった。
(航君・・?一体誰の事なんだろう・・・?まさかその人物が・・・朱莉さんと沖縄で同居していた男なのか?それにしても君付けで呼ぶなんて・・・随分親しくしていたんだな・・。)
悶々とした頭を抱えながら、それでも琢磨は何事も無かったかのように振舞い、車を走らせて朱莉の住む億ションへと向かった―。
車の中で明日の件で色々話をしながら走らせていると、やがて朱莉の住む億ションが見えて来た。そこで琢磨は言った。
「朱莉さん。エントランスの前で降ろすから先に部屋へ行ってていいよ。駐車場に車を停めたらすぐに俺も行くから。荷物も運ぶから朱莉さんは気にしなくていいからね。」
「はい、分かりました。有難うございます。」
そして、エントランスの前に車を停めた時・・朱莉はそこに信じられない光景を目にした。
何とそこには、沖縄で別れた以来の航の懐かしい姿がそこにあったからだ。
「え?!う、嘘・・・。航・・君・・・・?」
朱莉の言葉を琢磨は聞き逃さなかった。
「え・・?航・・・?」
見ると朱莉の視線の先には茶髪の若い男性の姿がそこにあったのだ。
「す、すみません、九条さん。私、すぐに降りますっ!」
「え?朱莉さん?!」
琢磨の呼びかけにも朱莉は返事もせずにシートベルトを外すと、車から飛び出すと航の方へ向かって駆けていく。
「航君っ!!」
すると、エントランスの前のベンチに座っていた航が顔を上げ、パッと笑い・・次の瞬間顔を歪めた。
「朱莉っ!」
航は半分泣きそうな顔で朱莉の名を呼ぶと、朱莉の方へ駆け寄り・・・そのまま強く朱莉の事を抱きしめた。
「朱莉・・・、会いたかっ・・た・・・。」
航は朱莉を抱きしめたまま肩を震わせている。そしてその声は涙声だった。
そんな航の背中を優しく撫でながら朱莉は言った。
「航君・・私も会いたかったよ?」
(だって・・・貴方は弟の様に大切な人だから・・・。)
そしてそんな2人の様子を車から降りた琢磨は雨に打たれながら呆然と立ちすくんで見つめていた—。
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